#4 北海道に行きたいか?

「わあ、なんというか…いろいろついてるバイクですね。重そう」

「──念願の純正ケースを落札し、このVストもいよいよフルパニア。今年の夏はこれで勝負だ!」

こいつに荷物積んだら確実に200kg超えるよな。250ccなのに…

フェリーに限らず、予約は大変です

「ジン先輩は夏にどこか行くんですか?」

「北海道だ。去年はバーディー90を持ち込んだんだが、パワー不足を痛感してな。今年は新しい相棒でリベンジというわけだ」

一般道でも流れが速いし、海岸沿いには勾配がきつい所もあるからね。「50ccのカブだと一日200kmが限界だわ〜つらいわ〜」って言ってたじいちゃんもいたから、走り方や日程にもよると思うけど。

「へー。でも夏休みまで2か月以上もあるし、気が早いような…」

あまーい!

「甘いぞ、本田妹よ!戦いはもう始まっているのだ!」

長距離フェリーの予約は2か月前から始まるところが多いんだけど、夏の北海道はそりゃあ人気だからね。早期予約割引がある航路なら尚更、予約開始日の0時以前からパソコンに張りついていてもいいぐらいだ。

「2か月先の予定ってはっきり分かるのかな…何日くらい行くんですか?」

「7月21日の小樽行きに乗るつもりだ。帰りの予約はまだ取れないから…ま、8月中に帰ってくるつもりだ」

当たり前だよ!盆休み中はハイシーズンで割高だからって夏休み全部北海道で過ごす気かよ!そのまま向こうで就職してきそうで怖いよ!

「単発のバイトでもこなしながら行こうかと思っていたんだが…そういうのもいいかもな。さすが、せんせいだ」

ああもう、君もこの馬鹿に何か言ってやれ…

「──素敵です!いいなあ、わたしも行ってみたいなあ」

野宿するなら十分な知識と装備が必要です。夏でも。

「そ、そうか?じゃあ、家族で行ってくるといい…」

「えー、うちのお父さんどこにも連れて行ってくれないから…お兄ちゃんもバイトとレース?ばっかりしてるし。そうだ、先輩連れてってくださいよ?」

「い、いやそれは…本田になんと言ったらいいか…ありなにも怒られそうだし…」

「わたし函館に行きたいんです!ほら、小樽からだと結構近いですよ?」

──地図だと近く見えるけど、これ200km以上あるよ?

「夜に到着する便だから、初日は野宿するつもりだったし…とにかくマズイから!せんせい、この子に何とか言ってくれよ!」

(馬鹿につける薬があったもんだ)学生の本分さえ果たせるのなら、何も言うことはないよ?よい夏休みを!

本日の結論:5月から準備を始めても早すぎるということはないのです。予定を煮詰めたり、道具を揃えたりするのも楽しいんですから。

べるの─本田さん家の妹。1年生。好きな小説は燃えよ剣。
ジン─鈴木さん家の兄。2年生。好きな漫画はキリン。
せんせい─自動車部の名誉顧問。好きなミュージシャンはさだまさし。

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