とある一人の男が占い師になるまで #29 ~信用金庫職員編~
直属の上司である渉外係長、M支店のトップである支店長、そして本部の人事部長から退職の承認をされて、晴れて退職する事が決まった男。
あとは引き継ぎを無事に済ませる事だが、果たして後任となる職員はどんな人物なのか?
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「今日から後任の職員が配属されるから、引き継ぎをしっかりするように」
私は出社後に、上長から指示された。
私の退職日は4月15日だ。
丁度4月の人事異動のタイミングを見計らって、その1か月前に退職の意思を伝えたので、後任の職員は比較的スムーズに決まったと思う。
以前、先輩の渉外職員が退職した時、7月という中途半端な時期だったので、人員が補充されず、M支店の渉外職員が4人から3人に減らされた。
私が退職する事で、さらに渉外職員の人数が減らされて2人になってしまっては、さすがに係長と先輩職員への負担が大きくなり過ぎてしまう。
私はできるだけ迷惑をかけない形で退職をしたかったので、4月の人事異動の時に必ず後任の職員が配属されるように、予め退職時期を4月にしようと決めていたのだ。
既に人事異動の通達は発表されていたが、どうやら私の後任となる職員は既に他店では係長の役職に就いていて、かなり経験豊富なベテランの職員との事らしい。
渉外業務には慣れているので、その点では安心と言えるが、問題は人間的にどうかという事である。
面倒くさい人じゃなければ良いけど…。
「おはようございます!!」
そしていよいよ後任の職員との対面だ。
一体どんな人なのだろう…。
「〇〇です!宜しくお願いします!!」
『山内です!宜しくお願い致します!』
係長クラスだけあって、貫禄のある人だと思ったが、それでも威圧的な感じはほとんどなく、明るくて気楽な印象を受けた。
本部の債権管理部の部長代理のような何となく嫌な感じは一切なく、安心して業務の引き継ぎができるように思えたのだ。
その後も係長とは色々な話をしたが、私より遥かにベテランであるにも関わらず、なぜか私は気楽に彼と会話をする事ができた。
そして、早速この日から係長とともに取引先を訪問し、お客様に引き継ぎの挨拶をして回っていく。
引き継ぎとして与えられた期間は1週間だ。
丁度1年前、私が先輩職員から引き継ぎを受けたのも1週間だったが、係長はベテランなので、事務的な引き継ぎで時間を割く事はほぼないため、取引先の情報や特徴などをしっかり伝える事に重点を置き、引き継ぎをするように心がけた。
「あら、辞められるんですか!?」
「残念ですね」
「辞められた後はどうするんですか!?」
「税理士目指すんですか!」
「頑張って下さいね!!」
取引先を訪問し、私はこれまでお世話になったお客様に御礼の挨拶をして回った。
それと同時に、後任となる係長を紹介し、引き継ぎの件も伝えていった。
「〇〇と申します!」
「よろしくお願いします!」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
やはり係長は慣れているだけあって、挨拶もスムーズに進み、お客様が不安に感じている様子はなかった。
引き継ぎは順調に進み、あっという間に1週間が経過して、私の退職日が刻々と近づいてきた。
そしていよいよ退職日、引き継ぎも無事に終了した後、夕礼として、私はM支店の職員たちの前で挨拶をする事になった。
そこで待ち受けていたものとは!?
➤To Be Continued
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