「アルビノを生きる」~を読んで
本書は、大阪の本屋さん(隆祥館書店)で開かれた武田砂鉄氏のトークイベントの際に、店主の推しがあって、ゲットしました。
読了して、まず驚いたことは、最初の登場人物の子供の頃のエピソードを読んでいると随分昔の話なのかと思ったのだけれども、ごく一部を除いて、全然、昔のことではない、どちらかといえば最近の出来事であることだ。
最初の登場人物(この本の主人公といってもいい)は’73年生まれなので、自分('68)より年下である。
それにしても思うのは、自分は高校生の頃にはアルビノのことは知っていたのに、「よくは知らなかった」ことである。というのも、中学に入るとすぐにギターにハマり、特にブルースギターに夢中になったので、アルビノのギタリストであるジョニー・ウィンターは当然聴いていたし、ジョニーがアルビノであるということも知っていたのだ(アルビノという言葉を知っていたかはわからない)。それでも、「白人の、それもアルビノの症状を持ったミュージシャンが、黒人のブルースの世界で評価されるなんて凄いな」と単に思っていただけで、アルビノについて、それ以上踏み込んで知ろうとはしなかった。ジョニーの視力にトラブルがあることは知っていたが、それがアルビノであるが故だということにすら思い至らなかった。
でも、そのようなことはアルビノに限らず、もっとあるのだろう。なんといっても、全てをよく知ることなんてできないのだし、今日、街ですれ違う人の中にも、人知れず悩みを抱えている人がいるかもしれない。というか、きっと、そういう人がいることは疑うべくもない。
この本では、タイトルにあるとおり、アルビノを生きている人たちがリレー形式で紹介されていくのだが、時に、エピソードの中で登場人物たちが出会い交流を持っていくというストーリになっている。そのストーリーをつないでいるのはインターネットである。日頃、SNSの悪い側面ばかり気になって、ネット文化に食傷気味になりがちだが、本書を読んでいると、インターネット時代の良い側面がわかる。本書の中でも同病相憐れむことを良しとしない人物も紹介されているが、なんといっても不安を解消するのに「よく知る」ということに勝る方法はないし、そのためにはインターネットは最も有効な手段であろう。
そして、ネットでは、もはやリアルとフェイクか(あるいは、人なのかAIなのか)にわかに見分けがつかない時代に入った今、結局、本当のことをよく知るためには、アナログ(リアル)に回帰する以外にないのだなということがわかる一冊であった。
そんなところか。
とにかく、一気に読める一冊。
お薦めです。
ということで、
ジョニーの弟・エドガーウィンターのごきげんな一曲をどうぞ。
The Edgar Winter Group / Free Ride