歩道橋(2)
あれから何ヶ月たったか、季節は夏になりバスケ部の午前中の活動が終わると必ず歩道橋の下で貴文が待っている様になった。
「おーい晃!彼女が待ってるぞ!」
「うるせー」
と言いながらも、貴文のそばに駆けていく。男子校だからかもしれないが、結構同性間恋愛にはおおらかに皆んな接して来る。何より貴文のたたずまいはそこら辺の女性に負けない位き、綺麗だった。
少し長い髪をかきあげると、切れ長の瞳はまるで引き寄せられるように妖しく夏だと言うのに真っ白な肌は陶磁器のように滑らかだ。タンクトップに半ズボンとシンプルな格好なのに痩せているせいか、もう少し髪が長かったら確実に女の子にしか見えない。
「あ、先輩!お疲れ様です♥」
そんな姿なのにまるで犬の様に駆けてくる。そうして、二人で俺の部屋の帰る。貴文はあの日が嘘の様に笑顔で俺に話しかける。
「先輩!今日のお昼ご飯は?」
「〜チャーハンかな?お前はそれでいいか?」
「はい!先輩お料理の腕いいから、ちょっと僕太ったんですよ」
そう言うとほっぺをぷぅーと膨らます、ちくしょー可愛いなおぃ。不意に後ろから
「晃?」
と声をかけられ、振り向いてギョッとした。声の主は俺の母親だった、
「良かったわ、元気にやっているのね」
俺の口から冷たい声で、
「何か用ですか?」
母親は戸惑った様子で、
「あ、あの……近くまで来たから、つい様子を見に来たんだけど……」
「俺は大丈夫だから、大丈夫じゃない義父と義弟見た方がいいんじゃないんですか?今日はツレが居るんで失礼します」
俺はそう言うと、貴文の腕をつかんで早歩きした。アパートに着く頃には冷や汗か普通の汗か分からない位顔から滴り落ちていた。
「……先輩?」
声をかけられてハッとして貴文の腕を離した、俺が無理矢理引っ張ったせいか赤く跡がついていた。貴文に、
「ごめんな!強く引っ張り続けたから赤くなっちゃったな」
「それはいいんですけど、先程の女性は先輩のお母さん……」
「あの女をそう呼ぶなっ!!」
ビクッっと貴文が不安そうな顔で見る、その顔を見てハッと素の自分に戻った俺は貴文に向き合って、
「俺が何で一人暮らしをしているか、言ってなかったよな。それは……」
続く……
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