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短期連載「Senriと良子のおしゃべり泥棒」2

大変だ。

ローレンからのメール。

「Hampton Bayへのドライブなんだけど、、、、かなり厳しい状況みたい。もしかしたら朝に連絡取り合ってキャンセル、Alternative (他の案)を考える、ってのも視野に入れましょう!」

ガーン。

せっかく短期のレッスンの今回のステイであの素晴らしいニューヨーク郊外のハンプトンベイへRyokoさんを連れてって差し上げようと思っていたのに。

なぜなぜなぜじゃ!

人間って不思議なもので一つのアイデアに縛られる傾向がある。これ!って決めたらそこに「こだわり」が生じる。「こだわる」とはいい意味じゃない。一つのことに「執着」することだ。わかっていてもやめられない。

〜洪水?そんなわけない。きっと奇跡的に天気は回復するはず。スイスイ「案ずるより産むが易しだねえ」って帰りの車で帰ってくる道中にRyokoさんとケラケラ笑い合ってるはず!〜(虚しい妄想)

ドキドキドキドキ、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

朝、4時に起きてピアノの練習を2時間やり、7時に家を出る。雨に加え強風がすごくて傘はひっくりかえる。ひえ〜、傘の向きを工夫しなんとか地下鉄へと乗り込む。

我らを照らしたまえ アーメン

「あたしだったらキャンセルします。洪水、強風により、途中の道の閉鎖が考えられるからです。」

「ああ、ニューヨークあるある、ですね。」

地下鉄からテキストを送ったらJunkoさんがそうアドバイスをくれる。

(ここでアメリカ国家が聴こえる、頭で)

悔しい!そう心で叫びながらAVISへ駆け込んで、「この天気でどうしようもないから当日で申し訳ないけれど、この予約をキャンセル+お金を返金してしてくれないかな?」と交渉を試みる。

さて、どうなるかじゃな!

「ええと〜、Senriね。わかるわ。ちょっと待って、確認するので〜、え〜〜〜、あ、発見した。じゃ、キャンセルをdoneするわね。以上!

え?返金って?

「まだお金は落ちてないから、これだけでAll Doneよ!Have a Good Day!

「おおおおおおお、よかった。ありがと、キャサリン!」

胸のネームプレートを読んで僕はそう答える。キャンセルはがっかりだが、きっとまたいいこともある。キャサリンは拍子抜けするくらい仕事スッキリ!で、にっこり僕に手を振った。

さ、

What is next????」(次は何!)

傘の花が咲く〜

壮大なドライブ、ランチ、ロングレッスン計画は洪水と強風と一緒にDrain(溝)へ濁水として流し、、気を入れ替えて僕はRyokoさんのホテルへ。

(ここでビルエバンスのワルツフォーデビーなど頭で奏でましょう!)

「とりあえず、朝ごはんを食べて先のことを考えましょうよ!」

にっこり笑ってRyokoさんはそう告げるといつも彼女がよく使うというカフェへと率先して移動する。

キョトン

雨は小降りになってきてたので頭じゃ「強行すれば行けたんじゃない?」とこの後に及んでまだ「こだわり」を捨てきれない僕の心は行ったり来たり。

でも、

いちごのフレンチトーストを頬張りながら大きなマグカップのコーヒーを飲んで一服すると、人間は不思議なものでアイデアが湧いて来る

そのアイデアってなんですか?

「ちょっと寒いわね、流石に雨が降ると。あたしね、ハットを今回持ってなくて、どうしよっかなって思って。」

すぐさま僕の頭が回転し始める。ハット、ハット、ハッとしてぐ〜!言うとる場合か!

そういえばチャイナタウンでも1個買いましたね

そういえば自分の話だけれども、ぴが亡くなって思い出に帽子を作ろうと1個オーダー中のものがあるのだけれど、それがそろそろ出来上がるはずだ。その店はブルックリンにあって男性用専門のオリジナルを作る店だけれど、女性も被れそうな素敵!ハットがいっぱい壁にぐ〜な感じでかかってる。あれを見学するだけでも楽しいはず。どうかしら?

「Senriと良子のおしゃべり泥棒」行ってミルク?

で、その後、、、、当初の予定だったローレンレッスンをZOOMに切り替えてやればいい!それまでの午前中の時間を、、、ハッとしてぐ〜!タイムに充てれば、、、我ながらいい案だと思った。おまけに近くには素敵!古着屋もあるし、Ryokoさんが大好きな可愛い服や靴がいっぱいありそうだし。

ど〜よ

「賛成賛成!」

ホッ。そうやって地下鉄に乗り込んで「Senriと良子のおしゃべり泥棒」隊は帽子屋へ。雨は相変わらず強い風と共に、二人を打ち続けるけど、

「あたし、傘は持たない人だから」

と気にせずズンズン進むRyokoさん。

「あ、僕もです」

とその背中を追っかける。

Ryoko さんのお土産マルタンマンジェラのコート!手に抱え「マンジェラでもない顔!」

「Senriと良子のおしゃべり泥棒」隊は帽子屋でマリンルックのくしゃっと被るハット鍔の広いちょっとエレガントカウボーイな紺色ハット、をゲット、その後の2軒の古着屋では大胆なプリントのデカシャツ薄紫のカウガールダンガリービーズの可愛い模様がフロントに描かれた薄手カーデイガン、そして大胆な花模様が全身にあしらわれたロングローブ、最後にファンキーイヤリングを手に入れて、「やったね」と頷き、近くのピザ屋の開店を待ち、一番乗りで極上ピザと宝石のよなレタスの芯を使うサラダを頬張る。

しゃりしゃり 音を立てて

「古着は1個のアイテムが20ドルとか15ドルとかですよね。」

「楽しいよね。自分でチクチクカスタムするしね!」

似合うものを瞬速で決断、大人買いのRyokoさん.com。冒険心が決断を早くさせるのだろう。

あたしも持って帰って〜!RYOKO! by マネキンの頭

「これね、楽屋で着るのがもうずっと何年も着続けてるものがあって別のが欲しいなって、あれの次にこれをって思うのよね」

と襟元はほつれてても、

「ソーイングセットある?チャチャチャって縫っちゃうから全然平気!

とくる。

雨の日の儲け物 神様のプレゼント

一緒にいるとどんどん先へ進む「おしゃべり泥棒」隊!もちろん隊長はRyokoさん!

午後2時からブルックリンの我が家でのローレンとのZOOMレッスンが始まると、僕が淹れたコーヒーもほどほどに、夢中で大好きなジャズにのめり込む!

なにがでるかな

隊長!明日からの3日間もよろしくお願いしますぜ。

災転じて福となった?

文・写真 大江千里 (c)Senri Oe , PND Records 2024




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