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ブルックリン物語 #83 「今日という日を愉快に冒険する旅」

ここのところバタバタと朝を過ごしていたせいで、久しぶりに2杯コーヒーを丁寧に淹れて飲んだ。曇り空が棚引いて低く街路樹の枯葉をすっぽり包み込む。今朝の曇天は暗く灰色でどこまでも希望らしき未来が見えない、暗示のような色だった。

しかし心は丁度いい濃さのコーヒーを飲めたので晴れ晴れとする。なかなかうまいコーヒーを淹れるのは難しい。ブラックを心ゆくまで味わえる朝の時間は貴重だと思う。

先週やった帽子の壁にかける作業は意外にも小1時間で出来てしまったけれど、その下のTシャツやらパンツやらを置いてあるのが無造作すぎて逆に目立ってしまった。それでようやく昨夜それらをすっきり整理整頓させると随分気が楽になった。それらを一個一個片していく。生活というのも楽じゃない。

なかなか機能的、見た目も悪くない。

どうもこのアパートは静かすぎて時々不安になる。基本コーポという所有のスタイルなので僕以外に賃貸はいない。郊外に家のある人が都心用の寝場所に借りている、もしくは投資目的だったりする。だからおそらく多くの人が何かの理由でブルックリンにいなくなる時、最後にアパートを去る人が地下のボイラー室のヒーターのチューブを止めるのだ。

右が華氏、左が摂氏。ベッドルームの室温。

感謝祭の時3日ほど全く暖房が入らなかったことがあり、コロナ以来初めて風邪を引いた。それが癖になって3、4回引いて治ってまた引いて。気をつけて手洗いやうがいをしていても、どこかで感染はするものだと今更のように納得する。温かいスープや火の通った料理を作って体に入れて早寝早起きを心がける。

ストリーミングクリスマスコンサートがクリスマス前に終わり、本当のクリスマスがおまけのようにやって来て、なんだか得をしたような気分でクリスマスツリーを愛でる。ずっとバクテリアに感染したぴの肌や耳や手足がかわいそうなことになっていたのが、パパの朝晩のケアで少しずつ良くなる。それが嬉しくて2人でツリーのそばにずっといた。コンサートが終わってから、つまり本物のクリスマスの直前に、ことあるごとにマンハッタンへ出かけては、自分へ、そしてぴへのクリスマスギフトをあちこち徘徊して探した。

自分たちのためにわざわざ包装したものを25日に開ける。

簡単な氷を作るゴム製の容器+保存できるプラステイックだったり、一人分のワッフルを作れるミニ鉄板、アイスキャンデイを作るキットなどがパパ用のギフトである。ぴにはおやつがメイン。箱に入れて1個ずつラッピングしてリボンをかけてツリーの下に並べる。ポロポロ緑の葉が落ちては、もみの木アロマが部屋全体に充満した。これほど表情豊かだった木は今までいなかった。最高の木と一緒に過ごせた年末年始だった。

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