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プチDAYS「東京の朝は2時間マシ?」

夕方見覚えのある顔のホテルウーマンの方が

「おかえりなさいませ」

と玄関で出迎えてくれた。

僕たちトリオとマネージャーKayの4人は空港に迎えにきてくれたBlue Noteの馴染みのドライバーの方の運転するバンで、ずっとしゃべり続けながらホテルへ着いた。ある種の高揚感で会話がとまらなかった。

みんな大好きな日本へ帰ってこれて興奮してる

「ほら、東京タワーがクリスマス仕様になっているよ」

「本当だ。うわ、すごいね」

ベースのマットとドラムのロスが窓から近づいてくる華やかなイルミネーションに彩られたタワーを見上げてる。

渋滞の右車線の先にチラチラ見えるタワー

「この先に絶景ポイントが来ますんでちょっとお待ちくださいね」

ドライバーの方の声は自分も待ちきれないと言った感じで、みんなそれを聞いて膝に肘を乗せてワクワク待つ。

東京の声が聞こえてくる

遮るビルをいくつか過ぎると、東京タワーの全身が見える場所を通過した。全身クリスマスツリーの東京タワーの姿に口々に歓声の声が上がる。

「すごい!」

「見事だ!」

「東京だよね」

「こんな街他にないね」

うん、と素直に言えばいいのに、

「ルイヴィトンがお金出してるね」

と減らず口な僕に、Kayがはははと笑う。

クリスマスが聞こえてきた?

スーツケースを下ろして、ホテルウーマンの方から鍵をもらい、明日のリハのロビーコール時間を確認、ドライバーさんと分かれる。

「じゃあ、今夜はばらけてもうそれぞれでゆっくりしよう」

「そうだね、いい時間を」

「そっちこそね」

長旅を終えてそれぞれの世界へ

宿泊する定宿に着いた安心感からか眠気がどっと押し寄せた僕はフラフラしながらエレベーターに乗った。

自分の階のボタンを押して到着するまでに夢を見そう

部屋のドアを開けると毎回東京ステイで泊まる馴染みの部屋が目の前に待ち受けていた。いつものように荷物を解き、衣装をハンガーに掛けキーボードを出しアメニテイをバスルームに置く。ホテルを自分の家みたいにしないと気が済まないタチの僕は、どんなに眠くても全ての荷物をあちこちに収納し真新しいシーツの上にごろんとなる。快感。

ハワイのウクレレ奏者ハーブオータJr. から届いたマスクで

もう朝かな、N Yでずっとぴのおしっこうんこ時間が3時過ぎだったからその頃かもしれないと思い眼を開けてみると夜中の12時だ。よくよく考えると14時間の時差だからN Yは今、朝10時。全くもって頭で変換できてない。暗い真夜中=N Yと一緒の時間。こりゃダメだ。ゆっくりお湯を溜めて日本式の深いバスに浸かると、実家みたいで心も体もほぐれていく。そのまま湯上りの温まったままゴロン、シーツの上へ。

いまきみはどこにいますか???

随分よく眠れたかなと思って時計を見ると3時。再び起きてコンビニでおにぎりとなめこの味噌汁を買う。せっかくなので小さなプロセコを追加した。無事に日本に着いたので密かにソロ乾杯しよう。

あたちも夢見てるよ、、⇦だからN Yは正午!

そのまま寝るのもなんだかなと思い色々考え事をして過ごしたのち眠くなり朝5時にシーツの上へバタンキュー。今度は深い深い眠りに入った。随分熟睡できたなと思って起きると7時半。靴を履いてコートを羽織り神社へお参りに行く。朝のピリッとした空気の境内に入ると日本円の小銭を持ち合わせてないことに気付く。何人かの参拝客が賽銭をしポンポンと手を合わせでお辞儀していた。神殿には袴をはいた若い衆たちが朝のお祓い中だ。

切霧がかった未来が見えてきた

張り詰めた気の流れる場所で不意に、

「カードで決済できないかな」

なんて考える自分を「ダメダメ」と振るい落とす。お金もないのに願い事は気がひけるので、少し離れた場所で被ってた帽子を取り、一礼して眼をつぶり、

「滞在中のみんなの無事をどうか見守りください。」

と心で唱え再び一礼しそのまま鳥居を出た。

ホテルのカフェの朝コーヒーを部屋へ

通勤の人たちが皆マスクをして先を急ぐ中、僕はホテルへと急ぐ。今日は長いリハーサルが待っているのでそれまでヨガでもやって過ごそう。見様見真似のストレッチだけど(笑)P Cの時計は7:50。随分時間があるなと呟いてはたとまた気付く。

もうじき出発だ

iPHONEと違いPCは東海岸時間のままなのだ。携帯を見ると9:49。出発まであと1時間。凪のような時間だ。いざ船のオールを漕ぎだす前に、大海原に向かって大きく空気を吸い込んでみた。

文・写真 大江千里 (C) Senri Oe, PND Records 2022



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