緊急寄稿 「あ、アトランタって南だった。ニューオーリンズに近い。」
ブルックリンへサンノゼから帰ってくる。
行きも帰りも去年と同じアトランタ経由。いつも、
「あ、アトランタって南だった。ニューオーリンズに近い。」
南下して、西海岸や東海岸へもう1本乗るのか、と去年と同じことをここで思う。でも飛行機好きは 、いろんな街の空港で考えごとするのが堪らなく楽しい。
帰ってきて部屋に入ると白檀の香りがした。
出かける前のパッキングの気持ちを思い出す。ほんの数日だったけれど濃い時間が流れて、初志貫徹、やり終えて帰ってきたのだなと思うと誇らしい。
帰ってきたのが朝の11時、12時過ぎから1本zoomの打ち合わせ、そしてもう1本、電話打ち合わせ、合間を縫って眠る、眠る、眠るだ。
夜中に目がぱちっと開き、空腹に気がつきヨーグルトを食べる。unpackingを少しやり、バタッとベッドに再び倒れ込む。
サンノゼはいつもの温かい人たちに助けられて、それに乗っかって集中してパフォーマンスしてって感じだったので、いつにも増して楽しく達成感も大きかった。ぴも一緒だったのかな。彼女も大好きな場所だったから。
大きなものをいっぱいもらいながら「次へ」動き始める。溜まりに溜まったデスクワークを行い、次へ想いを馳せる。
ここ数年ぴや周りについててくれる人に助けられて世間がすっかり進化しちゃってるのに気づかず浦島太郎だった自分が、1人でよっこいしょとまた動き始める。転がらない石は苔むす。動いて喘いでいると風が吹く。あ、こっちかとその風が方向を指し示してくれる。
忙しくて面倒が嫌いな僕は、2024年3台のエアコンを窓につけるのをやめ、その代わりに業務用のでかい扇風機を買った。森山さんたちがレコの時期に一回うちにいらしたのでその時に役立った。毎日自分が朝晩のストレッチをやる時、サニサイを録音するとき、顔に向けたり、少しずらして音が入らないようにしたり、重宝しながら夏を乗り切る。
そして活躍のシーンがだんだんなくなって僕を神妙に見つめる扇風機。そうだよ、去年ぴと過ごしたハロウィンや早めのクリスマスツリーがまたやってくる。その繰り返しで今年も毎日が進む。進化の尻尾を掴まないと何も起こらない。僕は「あ」と感じたらその場で尻尾を掴むのが好きだったはずだ。
久しぶりにいれるコーヒーがおいしい。きっとこの苦味が人生だ。ジャズにも通じる。「Boys Mature Slow(男子、成熟するに時間を要す)」を「全くその通り」と思う64歳になって数日のわ、た、し。
文・写真 大江千里 (c) Senri Oe, PND Records 2024