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American Songbookの雄、Cole PoterをHarry Connick Jr.が歌う、しかもメトロポリタンオペラ劇場で。
この企画を考えた人はすごいなと思う。
American Songbookの雄、Cole Poterを現代のアイコンHarry Connick Jr.が歌う、しかもメトロポリタンオペラ劇場で。
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僕は初日のチケット、Family Circle席 $25を持っていた。考えたらこれだけのショーを25ドルで鑑賞できるってNYって街は懐が深い。こういうのって芸術に造詣の深い誰かの寄附で成立している。久しぶりにNYは相変わらずスメリーで、寒波の影響か犬のう◯こがカチカチになって転がってる。悪質なホームレスも増え危険、アジアンヘイトらしき嫌がらせを地下鉄で既に2回受けた。でも色々起こってもNYは面白い。
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ニューオーリンズ出身の国民的歌手&ピアニストのハリーコニックジュニアが20世紀の大作曲家コールポーターの語り部として歌いピアノを弾き、ほんのちょっとだけだけどタップを踊る。
文化は歴史だ。そこを外すといきなり薄くなる。コールポーターとはいったい何者だったのか? 時代背景は?知らない人にもわかりやすく明確にハリーがト書きを喋る。ポーター氏に尊敬を込め放つ。
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アメリカ人であれば知らない人はいないコールポーターの音楽。だけど彼の生い立ちをゼロから教えてもらえることはない。目からウロコ。いったいどんな背景があって彼の音楽が誕生したのか? "様々な角度"で人間ポーターを掘り下げる。セリフの中にはLGBTQ的ラインもあった。これをMETがやる?^_^板の上、舞台でだ。立脚する場所をハッキリとさせてるのが心地良い。
オペラを担う大きな劇場でミュージカルや映画音楽の分野でスタンダードナンバーを残したコールポーターをやる。まずハリーコニックJr.に白羽の矢を立てた発案者に乾杯だ。
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ハリーの素の喋りが随所に盛り込まれ(もちろんセリフとセリフの合間)、「コールポーターを慕い歌うコンサート」というていで進行するが、ジャズ特有の遊びが散りばり心地よい。ハリー側から持ちかけた企画ではなさそうなことをハリー自らmcで暴露してしまうのも愉快。オペラの劇場で自分の崇拝するコールポーターを僕が? びっくりしたし震えたよ! って語る姿こそがMETが求めてたものだと思う。
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僕のような「コールポーターは素晴らしいと口づさみつつ背景まで知らない」観客にとってありがたい初級編企画。My Seatは舞台に向かって左側の一番上だったので、大きなスピーカーで目の前を塞がれて舞台の左側は見えない。
それを目の当たりにしがっかりしてた僕だが、すぐにこのショーはどの席からでも楽しめる演出が施されていることに唸る。ホーンセクション13人ほど(一応数えたのだが老眼なので、、、)ストリングスも10人ほどだった。そこにベースとドラムと指揮者(はピアノも弾く)。
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ハリーはそのビッグバンドスタイルの動く舞台の上をまるで"映画に迷い込んだミッキーマウス"といったキャラで行く。驚いたり不思議がったりしながら、素直ないい人キャラでコールポーターを誠実に解説。
興味深かったのは「コールポーターの歌詞の明快さ」。心の発露である歌詞があってこそのメロディができるくだり。そのメロディが練られるとアレンジが生まれてくるくだり。まるでハリー自身が段取りして料理番組をやってるみたいに演じるのだ。ここで大きなスクリーンにコールポーターの直筆の譜面が登場。その場で彼が書いているように浮かびあがり、、、、大写しになって、、、、王道の演出にとても臨場感がある。
作曲家が楽曲作りのドキュメンタリーで時代を超えて2025年の観客と一緒に呼吸をする。
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