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Life Is Beautiful物語 #1「人生は始まったばかり。」
朝コーヒーを淹れてストレッチをやる。そしてコーヒーができたらそれを飲む。窓側のブラインドを薄く開け街路樹を眺めながら。
まだ薄暗い外は朝なのにどこか時間を忘れたような色をしている。乳白色で薄くベールをかけたようなどこか現実離れした色。
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「毎日ラジオのプロモーションでで萩原健太さんや田家秀樹さんにお会いしています。語り合い、皆さんに『面白いアルバムが出来上がりましたね!』と褒めて頂きましたよ。Brooklynもきっとどんどん冷たい風になっていることと思います。少し痩せたSenriさん、体には気をつけてあたたか〜くお過ごしください。やはり1人でいても寂しいのでスタジオで何回か練習してお正月を迎えることに!」
そんなラインがRyokoさんから来る。
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僕はちょうどスタッフから送ってもらったRyokoさんがゲストの「ナイツの土曜日の番組」を聞かせてもらったばかりで、そりゃあもう大笑いの連続で、流石に話がお上手だなあと改めて感心していたところだった。
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「こちらもRossとMattと3人で『やっぱり予習しよう』ということになりマンハッタンのいつものスタジオを暮れの午後に3時間とったんですよ。」
と返す。
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ナイツの番組でも話されていたけれどRyokoさんは何度もNYへ通われてジャズのレッスンを受けられた。随分この言い方もざっくりだが、この「ジャズ留学」の目的は具体的に一緒に作るアルバムの中身、何をどう歌うか、歌わないか、の方向性を定める時間だったように思う。
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エラ・フェッツジェラルドじゃなくてダイアナ・クラール。スキャットよりも本歌の正確性。しかめっつらよりコールアンドレスポンス。
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これらの目的を朧げながら掲げつつ徐々に方向を少しずつ定めていった。ほぼ1年の時間、ジャズが大好きな2人が続ける挑戦だったなと思う。ジャズスタンダードを歌う方向だってあっただろうに、、、でもそれだとこの2人がやる挑戦にはならない。ユーミンや中島みゆきさんを聴くように森山良子ジャズを聴いて笑ったり泣いたりしてほしい、元気になってほしい、そんな願いが僕たちの中にはあった。
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Ryokoさんが小さな頃から口づさんでずっとやりたかったジャズ、その情熱を注ぎ込めるような世界観。僕の微力でそれが果たしてできるのか。悩むよりも作れ、そう思ってまずは2曲の概略を作る。歌詞を日本語できちんと載せたものだ。
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不思議なもので譜面に出だしのメロディを書き留めてその下に「あなたってそういうとこあるの」と歌詞を書くといきなりそこに空間が生まれる。人混みの音やバスやタクシーの行き交う様子が浮かび上がる。そんな中で別れ際に手を振る2人の姿が僕の目には映る。2人にしかわからない些細な仕草や癖が別れるときにもあって。
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そうやって物語が少しずつ動くのを時間をかけて育てていく。「ルート66」というドラマが昔あった。そのテーマ曲に出てくる地名をそのまま辿る旅。Ryokoさんが昔幼馴染とやった西海岸ドライブ。確かラスベガスがスタート地点だった。その話を思い出しスタート地点をシカゴに置き換える。「ルート66」と同じ場所からする旅に変えたのだ。
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「それはいいかもしれないわね。ちょっと歌ってみる。シカゴに着いたらレンタカーを借りるの。」
「あ、いいですね、いけるかもしれない。」
そうしてぺちゃくちゃぺちゃくちゃ幼馴染のおしゃべりが続いているうちに人生の旅もずいぶん遠くまで続いて来ちゃった。そんな主人公たちの横顔の誇らしげなシワが見えてくる。ぺろっと2人で舌をだす。
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一つ一つの単語には音の響きがあり抑揚がある。それがメロデイと結びつき、景色を作る。そんな瞬間を一個一個行きつ戻りつ描く楽しさ。本当に恐る恐るの提案をブルックリンやマンハッタンに通い続けるRyokoさんにぶつけて現場でどんどんフレーズを育てていく。
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2024年は僕の人生にとっても”喪失”の年だった。心の中にぽっかり空いた空間を埋めるのはやはり「作る」ことだった。Ryokoさんを通して描く物語、メッセージ、聴いて欲しい人の顔がくっきりある音楽。
人生は今、始まったばかり。