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新新 *SenriとRyokoのおしゃべり泥棒* 7
ノーランとJunkoさん、僕の3人での音の見直し日、思ったよりも時間を要することがわかったので夜に予定してたdinnerをドタキャンした。なんかドタキャン多い。
間が悪くエアコンの直し作業が入ってしまいスタジオの温度がうまく下がらない。僕は汗がポタポタ床に落ち、水溜りを作る寸前だったが、細かい作業のJunko さんやノーランはもっとかわいそうだった。痺れを切らしたノーランが「もう我慢ができない」と頼み込み、ボスのアーロンが本来ミックスで使う部屋へ移動させてもらうことに。
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アーロンはエアコンのことを気にして、りんごを齧りながら、
「大丈夫?」
と様子を見にやってきた。
いくら気温の低いニューヨークと言えど、こもった湿気と温度じゃ作業が捗らない。移動してからは見違えるように仕事の精度が上がった。
いよいよ8月終わりのアーロンによるミックスダウン用に音が仕上がった。細かいリップノイズやペダルを叩く足の音などの削れるところは削った。
「アクシデントもチャーミングで、トリオはやはり同じスタジオで『Class of '88』を1年以上前にやって、そのあとは日本へツアーに行き、苦難を乗り越えてきてますからね、すごいいい演奏になりましたね。」
Junkoさんは改めて大きな音で聴いて満足そうに頷いた。
実際これには totally 頷ける。まずマット(ベース)が僕のやる予定だったソロを奪って弾いた。これはジャズではしょっちゅうあっていいはずなのに、マットはいつだって、
「ごめん、ごめんよ」
って気遣ってくれてたんだけど、今回は余計な気遣い一切なくて、気持ち良さげにただただ弾いていた。それが嬉しかった。
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ロスはタムタムドラムとスネアドラムの位置関係などを細やかにアーロンと打ち合わせして、1ミリの高さの違いにもこだわってセットしてた。なので「歌うようなソロ」が心地よい。
僕はといえば、本人比較、力量の20%でやってるのが素晴らしい。自分の持ってる技術をひけらかさず別のことしながら弾いてるくらいの余裕感。この塩梅が非常に良い。
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