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ブルックリン物語 #68 "Tequila Mockingbird"

アリホーニグに初めて会ったのは今から12年ほど前になる。

当時ニュースクール(NYの音楽大学)の3年生だった僕は、同じ学校の卒業生であり先輩のトロンボーン奏者ジョーが中心になって組んだビッグバンドのメンバーになった。ジョーは僕が入学した時はすでに卒業していて、ちょうど学年で言えば4−5年先輩にあたる。年齢は20以上若い彼らが僕の先輩になる。この感覚慣れると悪くない。彼らの世代の音楽家たちは賑やかな顔ぶれで、アメリカのブルーノートレーベルからアルバムをリリースしたトランペットの Takuya Kurodaもいた。音だけじゃなく雰囲気も賑やかな期で、僕は彼らよりうんと年上だけれど背伸びしてその中に混ざることで随分いろんな経験ができた。

ちょうど1本、短めの1セットのギグが僕に入り、どういうメンバーでやろうかと仲間でウチに集まってセロニアスモンクを聴いていたら、ジョーがいきなり「ドラムはアリホーニグがいい」と膝を叩いたのだ。

ニュースクールの売りのシステムの一つにプライベートレッスンというのがある。自分が習いたい先生と自分とを学校側が代わりにマッチングしてくれるのだ。これは自分に直接コネのない有名ミュージシャンからレッスンを受けられるというありがたいシステムであると同時に+その先の未来のコネクションが一気に拡がる可能性があるというもう一つのメリットがあった。

トロンボーン奏者であるジョーは普段楽器のあれこれをトロンボーンショーテイ(https://www.universal-music.co.jp/trombone-shorty/)などの授業をとっていたが、ドラマーであるアリの圧倒的なポリフォニック感覚に魅せられて、1セメスターに1回とかアリのカリキュラムを混ぜて受講していた。そのうち愛らしい素直な性格のジョーは、先生であるアリと敷居を超えて仲良くなった。根っから若い音楽家にシンパシーのあるアリは、ジョーバンドで一度共演もした。ギャラだって安くはない有名ミュージシャンが頑張る若手に「志」で胸を貸す。その関係性が生まれやすいのがニュースクールのこのシステムだった。

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