大江千里のジャズ案内「ジャズって素敵!」vol.3が公開になりました。(ぴ)
こんにちは、ぴーすです。
"sen denwa"、お楽しみいただけましたか?
さて、集英社新書プラスで始まった「大江千里のジャズ案内 ジャズって素敵! 」のvol.3 が本日アップになりました。88888888888!
今回のタイトルは、「NYのジャズシーンってどんな感じ?」。今、NYでは「ソーシャルミュージック」っていうワードがよく耳に入ってきます。ソーシャルミュージックって? 耳をダンボにすると聴こえてくる? (あたしはこれ特技よ)
・・・・・・・・・・・・
大江千里のジャズ案内 「ジャズって素敵!」 Vol.3
NYのジャズシーンってどんな感じ?
NYでは「ソーシャルミュージック」ということばがよく聞こえてくる
ここのところ、ニューヨークでは「ソーシャルミュージック」という言葉をよく聞きます。2022年にニューヨークを拠点とするシオ・クローカーというトランペッター、作曲、編曲家が『JAZZ IS DEAD』という作品をリリースしました。Rolling Stone誌のインタビューにおいて、シオはアメリカの今のジャズシーンに向けて警鐘を鳴らしています。
「ジャズは死んだ(JAZZ IS DEAD)」に込められた真意は「ジャズという包装紙」すなわち「ジャズを取り巻く状況」への疑問符、現在のアメリカのコミュニティにおいてジャズが人々のつながりに直結していない現実を憂い、ジャズの本来のあり方へ回帰しようとする想いを強調しています。
因みにこの作品には、大御所であるサックス奏者のゲイリー・バーツやシオの盟友であるカッサ・オーバーオールが参加しています。
デューク・エリントンやディジー・ガレスピーなどのレジェンドが醸す真髄のジャズの音に最新のテクノやDJを加える手法は、シオが先人たちの切り開いたジャズに深い敬意と力を持っているからこそできる芸当だと言えます。
そもそもはマイルスが発した言葉
この「JAZZ IS DEAD」ですが、そもそもはモダン・ジャズの帝王、マイルス・デイヴィスが発した言葉です。「俺の音楽をジャズと呼ぶな! ソーシャルミュージックなんだ」とインタビューの最中に記者を戒めるように発言したのです。優れた音楽家には共通してあらゆる音楽に精通している面があり、ひとつのジャンルだけにとどまらないところがあります。マイルスの言葉を言い変えれば、音楽にジャンルやスタイルを要求してそこへ押し込めるよりも、その作品の「品質や文化的共鳴」をむしろ重視しろ、ということだったのだと思います。
マイルス・デイヴィスは18歳のころ、セントルイスにビリー・エクスタイン楽団がやってきた時、病欠のトランペッターの代役を務め、ジャズの神様、チャーリー”ヤードバード”パーカー(サックス奏者、作曲家、ジャズのビバップスタイルを確立した音楽家)とディジー・ガレスピーとの共演を果たし、キャリアがスタートします。彼はその後すぐにニューヨークのジュリアード音楽院に入り、チャーリー”ヤードバード”パーカーと演奏を共にし、同じ部屋で暮らします。
トランペッターであるディジー・ガレスピーの明らかなフォロワーとしてその演奏には影響が聴き取れますが、マイルスを語る上で重要なのは、ディジーの明らかなフォロワーだったのに、コピーというよりも「自身のカタチ」を早い段階で作り出した点です。あの簡単なフレーズを吹いているような独特なオリジナリティ。
多くの名手たちは、演奏において高速スピードを好み、急降下するような跳躍や下から上までの感覚を跨ぐ音程の動きをよくします。しかしマイルスにはそれがほとんどありません。ピカソの絵のように一見シンプル、ともすれば「真似できるかも?」とこっちに思わせるくらい身近だったりするわけです。ところがどっこい唯一無二で奥が深い。
演奏家の中でもそれを実現できるアーティストは限られています。早弾きをする人はとにかくたくさんいますけれど。
彼がバラードを演奏するときはまるで歌手が歌っているようです。エディット・ピアフやレイ・チャールズ、ニーナ・シモンといったボーカリストさながらの雄弁さでとにかく歌います。シオにも共通して言えることですが、演奏が終わると出し切って放心状態に僕には見える時があります。どこか痛いのではと思うほどの苦悩の表情を読み取れる時もあります。
シオの最新作の中の『JAZZ IS DEAD』はマイルスに起因するものであることは明らかです。そして、何よりもシオはマイルスの持っていた大きな耳、つまりジミ・ヘンドリックスやスライ・ストーン、ボブ・ディラン、クラシック音楽に至るまでジャンルレスに音楽を聞き取れる巧みな力こそが今のジャズシーンには大事だと暗示しているように僕には思えてなりません。
NYにあるジャズべニュー
少し俯瞰でニューヨークのジャズシーンを見回してみましょう。
・・・・・・・・・・
この続きはこちらで↑(ぴ)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?