3 More Nights! (特別寄稿)
3話連続「納涼夢話」いかがでしたか?
さて納涼ジャズですが、不思議に思われるかもしれませんが、実は納涼千里天国とジャズはとても親和性が高いのです。リズムの縦のラインをしっかり作ってあるポップ時代の僕の楽曲は納涼ではよりグルーヴーにストレッチイン&アウトされて見事なうねりを起こしていたのを覚えている方も多いはず。
ジャズを学び直してみて今気づくのはこのグルーヴはとてもジャズと仲良しなのです。僕はまだ新米ジャズピアニストですがインプロビゼーションの中で時々起こるこの人の力を超えた予知できない人のグルーヴが大好きです。そしてこうやって納涼とジャズを組み合わせたイベントができることは、僕にとってその二つが融合し合う貴重な瞬間であり喜び以外の何物でもありません。
久々にドレミ出版の大江千里「Sloopy Joe」の楽譜を出してきて、アンチョコにして練習しているのですが、一番見たい部分のコード進行のページの裾を犬にかじられています。これは「ぴ」ではなく「もも」ですね。懐かしく愛らしい。こうやってパパが何年も経ってから「あそこが見たいんだよな」って思ってページをめくるとももがしっかりがっちりページごと食べていてもうその部分は見れないわけです。あ〜あと思いつつもなんか懐かしくて嬉しくて。ももが近くで尻尾を振ってるようで。
リクエストとメッセージがエクセルに入れられて僕の手元に昨夜届きました。このコンサートは今までにないくらいポップ時代を好きで今も聴き続けてくれている人たちが大集合してくださるのではないでしょうか。あの曲この曲の大切なエピソードを読みながらその中の熱い思いを受け取っています。今はまだ続けて続々と届いている最中なのでどうなるかそれこそ本番の5分前までわからない。いやもしかしたら本番中に変化するのが面白い、納涼になるかもしれません!
実は今回の納涼の場所はエンパイアステートビルとワールドトレードセンタービルが見えるルーフトップにしました。ガゼボもあって花壇もあり開放的なNYの空に向かって演奏できます。当日の天気予報は降水確率30%ですが夢で起こった色々な出来事を考えると何があっても進むのみと言い聞かせています。心は納涼。それさえ忘れなければきっとライブの神様はゴールを迷うことなく照らしてくれるだろうと本番へ向けてウオーミングアップを始めています。
しかし今更ながら大江千里のポップ時代の楽曲は難しい。でも楽しいです。コード進行がやはり今のジャズに通じる部分があってジャズにも変換しやすくversatile(どっちでもいける)体幹を感じます。散々歌ってきたメロデイは細胞が覚えているので何度も涙がこぼれそうになります。音楽ってそういう力がある、今回のリハで再認識しています。
もちろん「Letter to N.Y.」のハイライトシーンもモリコーネしてますよ。(盛り込んでいますよ、です。はい。)この最新アルバムは譜面がありませんからどうやって演奏しようと考えた時最初途方にくれたのですが、ゼロからパンデミックの冬に創り上げたものだからこそまたその時の原石の気持ちに戻れば何か面白い形が見つかるのかなと思っています。サンプリングを使った曲とかもあるので難易度は高いですが徐々にブラッシュアップしてますので楽しみにしていてください。
小さい頃から慣れ親しんだ日本の曲を大江千里流にピアノアレンジしたものもやりますし、大江千里の曲はまともに並べると時間が足りなくなるので美味しいところどりのメドレー?もあるかもしれません。もうあれもこれもで大変な騒ぎです。でも楽しいですよ。
コロナでステイホームを経験してから経済が開きつつあるNYですが、基本は変わらないような気がします。つまり一旦経験したコロナ渦はもう僕たちを前のように心からオープンには生きることを許さなくなったというか。難儀なことになったなあと思う反面、そうなったらなったでそれを楽しもう、反転させて面白いことを考えようというのが僕の生き方で、今回の納涼も世界中で同時に生でご覧になれますし、予め届けられた納涼グッズで共に離れた時間をDistancelessにすることはいくらだってできると思います。実際にやってみないとですが、全部が特等席です。皆さんにしか見えないView(眺め)をNYから発信する僕の音楽で感じてもらえたらとても嬉しいです。
世界は激動ですが僕はこの「納涼Jazz千里天国」で変わらないものが見えるような演奏を心がけたいと思います。すべてのものは変わり続ける。だけど変わり続けるのは、実は変わらないものを大切に抱えているからこそ変われるのだということを、音楽で感じていただけたらと思っています。
浴衣の準備はオッケーですか? センスは手元にありますか? Tシャルでもいいでしょうし頭や首に手ぬぐいってのも乙ですね。着崩れも汗染みもオッケー、だけどしょっちゅう日常だと人生も疲れますから、たまにも休暇をあげて、いっぱい作戦練って、この時間を最高に楽しみましょう。
N Yはハリケーンアンリによる巣篭もりがここ二日ほど続いていましたが、今日は晴れ間が見えて快適な夏が戻ってきました。これからプールへ行きます。皆さんの地域は大丈夫ですか? どうか安全に笑顔を忘れずに健康にいてください。もうすぐ会えますね。
文・写真 大江千里 (C) Senri Oe, PND Records 2021