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新新 *SenriとRyokoのおしゃべり泥棒* 3
リズム(ピアノ、ベース、ドラムス)のバッキングドラックが仕上がり、そのミックスされた音源に載せていよいよボーカルレコが始まった。
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ミックスボイスという呼び方の声で今回のRyokoさんは歌っている。ヘッドボイス(裏声)でもチェストボイス(地声)でもないその両方を併せ持ったミックスされた声なのだ。
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おでこあたりのパレットを開く。そこに声を当ててリズムに乗って歌っていく。音域が地声の範囲に降りても実声を落とさずヘッドに響かせたままに。左足のダウンビートと右手のアップビートのカウントを絶やさず、その中で音符の宇宙を作っていく。普段の裏声とは違い新たな音域だ。
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近くで見ていると、RYOKO MORIYAMAはジャズ好きな少女良子に映る。僕の作る1オクターブ飛ぶメロディや2拍の長さを3連符で勘定したり、それこそ3連の連打が続いたり、それらはちょっと語尾を伸ばすだけでニュアンスが変わる。クールで淡々と新たな挑戦の声で静かな命を曲に吹き込んでいく。
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外で鳥の鳴き声が聞こえる。まるで「そんなの気にしないで自由に歌いなよ」と言ってるようにも聞こえる。どこか違うの? 何に拘ってるの? そう言われると言葉に窮してしまうけど、Ryokoさんがおでこのパレットに響かせる声が少しずつ増えていくのにドキドキが止まらない。
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