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プチDAYS「キャッシュを呼ぶ男の大冒険」
「お兄ちゃん、今回はマジでもう帰ってけえへんの?」
妹に突っ込まれ返す言葉がなかった。1月7日に芦屋ルナホールでソロピアノコンサートを終えて1月16日のチャリティコンサートまで日本に滞在するので、実家にいっぱい帰って父が亡くなった後の色々をやろうねと妹と相談していたのだ。
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それが「Senriさん、取材を2本ほどこの日に頂けますか?」「京都へ一泊旅行しませんか?」「急ですがラジオ収録をよろしくお願いします」などありがたいお誘いを次々いただき、スケジュールに余裕で「はいよ!」と書き込んでいるうち、デトロイトの乗り継ぎのラウンジではたと気が付いたのだ。
実家に帰る日が1日もないではないか。
これは正直にマンリーに謝るしかない。そう思いメールする。電子の世界でもため息は伝わるようだ。
「は〜、そうなん? それで今回は一回も帰ってけえへんの?」
「いや、そうじゃない。なんとか午前中とかどっかで時間を作る」
「わかったわ。もしそうならば早めに教えて。こっちも都合があるから」
「うん、ごめんね」
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京都へ一泊、芦屋一泊、そして東京一泊、あちこちへ移動の日々だけど、東海岸から東京までのフライト時間に比べれば屁の河童だ。出会いや再会がありそうで物事が動き出すのを感じるのでワクワク。妹にも2回(1回は兄妹のサイゼリア打ち合わせ、2回は父の墓参。)と会える時間を捻出できた。Yay!
1泊の東京旅行から関西へ帰る新幹線のプラットフォームで崎陽軒の売店を見つけた。頭に電球が光る。崎陽軒の有名なお弁当。キョロキョロ陳列棚を探していたら店員さんがキャッシャーから出てきて、
「何かお探しですか? よかったらおっしゃってください」
と声をかけてきた。僕は待ってましたとばかりに、
「あの有名な崎陽軒のお弁当って置いてますか?」
と尋ねた。
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「あ、それなら、、、」
と彼女は僕の後ろの棚を指差す。そこには見覚えのある黄色のパッケージが積んであった。涙が出るほど嬉しい。早速手に取る。
「一つ頂きます。そしてキリン一番絞り、キンキンに冷えてるやつも」
新大阪までの小旅行で弁当を広げる楽しみができた。自然と僕の頬が緩む。レジへ差し出すまでのわずかな間、ホカホカのご飯の暖かさが手のひらに伝わる幸せよ。一番搾りもキンキンに冷えてる。
「それじゃクレジットカードで」
そうぼくが言うと店員さんはキョトンとした顔で、
「え?」
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