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特別寄稿「紅白歌合戦を観ながら」
「紅白歌合戦、私のPCで観れますよ!ご覧になります?」
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今回の年末年始我が家に来てるKayがYou Tubeで「ユーミンがAIと一緒に歌ったってる動画が見たい」と探す僕にそう誘い水をかける。
人の出入りの多いお正月は楽しいものだ。何年ぶりだろう。 始まりはブルーノートを終えてN Yに戻った時だ。いろいろあった一年だからこそ、感謝を込めオープンで「短いライブ配信」をやろうと思い立つ。
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暮れの忙しいカウントダウンなので観てくれる人も少ないかもしれないし、コッソリでいいやと直前にモゴモゴ発表する。ピアノを弾きながら家でリハをする僕を見てスタッフであるアーティストのロレンやKayが、
「Senriがピアノを弾きながらmcをするとこっちからよく聞き取れない。簡易マイクをつけてきちんと聞こえるようにすればいいのでは?」
と助言をくれた。
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「そうなの? 今まで、『SPINマガジン』や『サワコの朝』なんかで演奏してきたのは全部"出音"だよ。(ラインの音をかまさない、単なる出音のこと)ラインの音を通してやったのは録画のものだけでライブでやるときは生音のみ(出音のみ)でやってたんだよ。だからもし、これからマイクをつけるとなるとピアノの音も全部一度”ライン”を通さないといけなくなる。てことは、、、ミキサーを間にかまさないと」
僕はツバキを飛ばしながら狼狽える。
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大晦日から元旦まで、我が家に入れ替わり立ち代り仲間が集まる。久保純子さん、ロレン、ジャズシンガーまみちゃん、隣のステイーブ、上の階のジョーのアシストのロビン、、、、。今まで自分1人でやってたライブ配信のレベルから1段も2段もバージョンアップして、、、若いアイデアや経験値のある人に助けてもらい、初めてだけど冒険してやってみる???
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ユダヤ人のスタッフ、本人自身アーティストでもあるロレンが言う。
「ブルーノート東京と組んでネットワークを広げてやってみるのはどう? カメラワークをテレビみたいに切り替えるのはeCOMをダウンロードするのが先決。でもそれは今回には間に合わないかなあ。Senriが日本から帰ってきた1月の終わりに僕がSenriにレクチャーするよ!」
何やら大変なことになってきた。若い人のスピードはすごい。インスタライブのボタンを押してただ垂れ流してやるだけじゃ済まなくなってきている。おじいちゃん千はキュッと気持ちが引き締まる。
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ジャズシンガー平麻美子は自分でセットアップを工夫しながらpod castやtwitchをやってるチャレンジャーだ。
「私は素人だけど、やりたいなって思うことをあーだこーだやりながらブラッシュアップしるのが楽しいだけ。Senriさん宅にあるマイクの種類と機材のリストを即送って。30分もらえれば私が自宅でシュミレーションして足りないものだけ持ってそっちへ行くよ!」
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おおおお、助っ人現る。僕はurgentでpianoとmcを両方ラインに通すための間にかますaudio Interfaceの「iRig2」だけを14丁目ギターセンターへ買いに行く。
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NY時間(EST)の朝9時45分から始める日本へのNew Year's Eve COunt DOwnのライブ配信は、こうしてノリに弾みをつけ始まった。ブルックリンは摂氏マイナス14度の厳寒を抜け一気に半袖の暖かさになった。そんな中、我が家に1人また1人と、機材やiRig2や頼んでいたおせち料理や餅や人々が次々に集まり始めた。
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「なぜ音が出ない? 一回インスタで仮でリハやってみる? でもそうするとインスタはpublicになっちゃうよ」
ロレンは首をひねる。
「それはダメだよ。サプライズがなくなる」
と僕。
「おかしいなあ。アンビエントかなあ。録音したやつを聞くとラインの音かアンビエント込みの音かの判別がつきにくいなあ」
まみ(平麻美子)ちゃんが首をひねる。
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次第に焦り始める現場のメンバーたちは、取り急ぎシャンパンを開けて乾杯して息をつくことにする。
「きっとうまくいく」
「じゃあさ、細かいことは後にして」
「取り急ぎは、、」
「Happy New Year!」
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喉を潤して乾杯して。再び作業を進めるとなんと僕の携帯のカメラへつなぐジャッグがloose(ゆるく)になってたことが判明した。
「なんだ! そうだったのか? 音はちゃんときてるね? 大丈夫だね。じゃあ、これでブラボーだ」
みんな心から胸をなでおろす。
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一旦、pod castの生放送の準備のために自宅へ帰ったまみちゃんを除いて我が家に集まった有志たちは31日の朝(EST)9時起きを約束して眠りにつく。
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翌朝、誰からともなく起床しコーヒーを淹れる。日本のニューイヤーズ・イブのカウントダウンはNY朝の9時45分スタートだ。Kayは昨日まみちゃんから聞いたことをちゃんとやれるかどうか緊張でガクガク震えている。ロレンはロレンでポーカーフェイスが少し固まってぎこちない。
「これから始めるよって文言で拡散するんだけど、どんな文章がいいかな?」
「わかり良いのがいいね」
僕の話す英語をロレンが咀嚼して試し書きをしいざ画額を決め、始める。階下のビルのオーナーも「そろそろね」とテキストをくれる。お隣のステーブン、又隣のマーレー夫婦、半分ドアはオープンで民が耳をそばだてて、、、日本のニューイヤーズ・イブのカウントダウンがいよいよ始まった。
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防音用のパッドを何重にも敷いて最小限の振動で済むようにして、、僕はこの前手に入れたお気に入りのエプロンを身に付け、5、4、3、2、1
0。。。。。。
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夢のように時間が過ぎ、ぴは本番中ずっと毛布にくるまって寝てた。ロレンは思ったより100倍ほど緊張してたし、Kayはほとんど固まってたけれどまみちゃんから教えてもらったことをきっちりこなせたのでGood Jobだった。各部屋から拍手が起こる。「ありがとう」それぞれに会釈をしドアを閉める。
「本番生放送見たよ。よかったよ」
まみちゃんからもメールが入る。よし! まみちゃんにはお返しで今夜pod castにお邪魔して生放送に乱入するからね。よっしゃ。そんな会話をし、N Yはいざ、31日の午後、そしてニューイヤーズ・イブのカウントダウンへと突入した。
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ホッと一息、年越しそばを食べて、7日の芦屋の曲を少しだけ鍵盤に触れて練習し、掃除をし、ぴにご飯をあげ、ドアを開けてご近所さんたちとシャンパングラスをかわし続ける。
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ロレンは一旦ユダヤ人アーティストの集まりのパーテイへ。僕とKayもそちらへ追っかけるように続く。そしてまみちゃんの生が始まったのでそのまま流れてsit inへ。
後から我が家へjoinするロレンやまみちゃんをそれぞれの場所へ残しつつ、Kayと帰宅してパーティの準備を始める。そしていざN Yのカウントダウン。みんなが再び集まる。
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近所のキッズたちが我が家の窓の下で大きな花火を何発もあげる。見上げると窓越しに大きな花火が上がる。まさに僕の真上で盛大にだ。キッズたちは嬌声をあげて飛び跳ねているけれど、きちんと花火の筒を片して小走りに去っていく。僕の部屋にはやがて1人また1人増えてSenri Partyが始まった。
「そうだ、私のPCに日本のチャンネルと契約しているので紅白歌合戦が観れるのでどうでしょう? 観ますか?」
というKayのアイデアで日米混合で紅白をみんなで鑑賞することにする。僕が紅白をフルで鑑賞するのはそれこそ随分久しぶりだ。演歌が少なすぎるとか高年齢層を置いてきぼりで知らないような若いバンドばかりというような前評判をいくつか読んだけれど全尺を観て正直な感想だ。
よかった!
アメリカで15年、時代はどんどん変わって、9割知らないアーティストだったのだけれど、よかった! 先入観が全くない分、ぐんぐん入ってくるものも大きかった。
オープニングのSixSTONEの楽曲の素晴らしさ、会場が一体となるパフォーマンス、それを受けての登場が天童よしみさん、頭から盛り上がりまくった。
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