楽しいムーミン一家4
感想13話「地球最後の龍」
1、2を争う好きな回です。
これでスナフキン好きに拍車が掛かった気がする。
この話は、好き過ぎて10回くらい観ました。
台詞が脳にこびりついて、そろそろ台本なしでアフレコできます。
目立つキャラクターなので登場時間が多く感じるが、何気に初めてスナフキンに多くスポットライトが当たる回だ。
ムーミンがスナフキンの事を大好きなのは今までの12話でよくわかったが、対して、スナフキンはムーミンの事をどう思っているのか、というのがわかる回。
全話中でもトップクラスで長台詞が多い回ではないだろうか。「楽しいムーミン一家」のスナフキンの人柄の良さが凝縮された回だと思う。
物語の終盤、スナフキンがムーミンを悲しませないために嘘をつくのだが、その嘘のつき方が本当に素敵で、1話完結の物語として非常に美しいところも、後味が良くて好きだ。
必要以上に人と関わろうとはしないが、関わる人に対しては、とても気を遣う人だと感じます。相手の立場に立った言葉を選ぶ天才だと思う。
無理して気を遣おうとしている訳ではなく、それが彼にとっての自然なんだろうな、という感じなので、彼の良さは真似できません…。
それでは感想。
・スナフキンの事ばかり書いてしまったが、ムーミンとムーミンママとのやり取りなど、好きな場面がたくさんある回です。
「これも借りていい?」
「いいわ、でも何に使うの?」
「秘密だよ」
「秘密?」
「そう」
「じゃあ聞かないわ。瓶はあげるけど、ザルは返してね」
この「じゃあ聞かないわ」が凄く良いんだよね…。
「秘密にしたい」の気持ちを真っ直ぐに尊重してくれる。
ムーミンが悪い事に使わない信頼がある前提だから、ムーミンの普段の行いの良さもよく出ている。
・「一番にスナフキンに見せるんだ。それまでは誰にも見せないぞ」
近所にいる大好きなお兄さん、という感じがいい。
・隠す食べ物の賞味期限が早過ぎる
・ムーミン家、いつも、遊びに来た人の分のご飯まで作る懐の広さが凄い。暖かい…。
・「誰だって秘密の1つくらい持つ権利はあるわ」
「いいわ。お前の部屋のドアは誰にも開けさせないわよ」
詮索せず、人が秘密を持つ事を尊重する考え方がとても好き。
・「ちょっと、ガッカリだな」
あまりにもマジトーンで私まで悲しくなってしまった(?)
・浮きを赤く塗るスナフキン。塗料を所持している事自体に驚いた。
釣りは、カスタムも含めてとても好きな趣味なんだな。
・トランプ占いをしているから、トランプも所持している。
・「僕はゲンを担ぐ方だからねぇ」
そうなの?!(ビュティの顔)
初めは少し意外ではあったものの、多分、本気で信じる訳ではないが、風の向くまま気の向くまま、を楽しむタチなんだろうな。
例えば彼は、天気で一喜一憂するのではなく、嵐の雨風を受けて自然を感じるのが好きだし、物事は思い通りに運ばない時もある事をわかっているから、自分でコントロールできない事に対しては身を任せたりしている。
そして、自分の好奇心に従って日々行動している。だから、
「身を任せる」+「好奇心」の要素のある占いに従ってみる事で、不確定な日常を楽しんでいるのかな。
そんで実際、旅に出たい欲は少し湧いてはきていて、その「いつもより早めに旅に出るのも良いな」という欲と「もう少しムーミン谷で過ごしたい気もするな」という欲が同じくらい天秤にかかっていて、どちらも面白そうだな~、でも今の自分には決定打がないな~、よし、じゃあトランプ占いで出た方にしよう!という感じかな。
だから、占い自体を楽しんでいるんじゃなくて、占いは「決定打の道具」として使っているんじゃないかな?と思う。意思がユラユラしたまま過ごすのは好きじゃなさそうだし。決まった方にスパッと舵を切りそう。
・「だって、冬にはまだ間があるじゃないか」
「いつもより早く旅に出るのも、悪くない気分がしてるのさ」
1話が春初日だったのに、もうそんなに月日が経っているんですか?!
これが週一放送だとしても3ヶ月ぐらいしか経ってないから、まだ7月の気分ですよこちとら?!
ムーミンが冬眠するのは 11月だから、秋口前後とか?
・「僕スナフキンがいなくなったら寂しくて……色々と相談したい時、一体誰に…」
スナフキンを引き止めるための口実ではあるが、パパェ……。
・それに対して無言なのは、ムーミンの自立を促している面もありそう。
・「今?」の嫌そう感がメッチャ怖い
・「仕方ない…釣りはあとにするか」
「だって、ウグイを釣らないと、僕は…」
「占いに従わなければいけない」のではなくて「実際に5割くらい湧いている『旅に出たい欲』を確かなものにしたい」ので、ムーミンに阻害されているのは「占いに対する行動」ではなく「旅に出たい本能」であると考える。
だから「今?」でちょっとムッとしているのかなと思う。行動を阻害されているのではなく、本能を阻害されているから。
・「龍はもう地球上からとうの昔に、いなくなったんだぜ」
この回は「だぜ」が多いんだよね。
・「ほっといたらいいさ」「降りたければ一人で降りるさ。仮にも龍だぜ。人の力なんて借りる必要はないさ」
本人がやりたいと思った時にやればいい、何の強要もしない思想がすげ~好きです。
・「僕には肩がないからなぁ」に笑った
・「それはミィ、お前のことだぜ」スニフwww
「だぜ」がじわじわくる。
・龍は自分について来るだろうから、それを阻止するためにカップを被せて帰るスナフキン。先読み力とスマートさと優しい嘘の三重構造。
・チラッ(龍がついて来ていないか確認)
・龍を放したあと、スナフキンが釣りをしているシーンからBGMはなくなり、ここから環境音のみで進行される。静かな夜の入りそのままの空気感で緊張感があり、好きです。
・「お前を旅に連れて行くのは 悪くないと思うよ」
そうなの?!(2回目)(ビュティの顔)
ムーミンはダメだけど、ペットはいいんですか!?
・「しかし、僕の友達を、悲しませたくないんだ」
スナフキン、ムーミンの優先順位がとても高い事が発覚。
・うおおおおおぉ帽子脱いだあああああぁぁぁ!!!!!
(と、初見の時興奮した)
いや、ちょいちょい一瞬映るんだけどね…いつも一瞬だったから、ここまでちゃんと見えるのは初めてだった気がして…。
初見時の感想は「重力に逆らう系なんだ…?!」だった。
前髪が長いってのがもう…駄目ですよ…俺に効く…。
原作だと髪の毛が見えないから、そもそも前髪がある事にすら驚きなのに、実は前髪が長いっていうギャップが…。
身なりを気にしないくせに、天然イケメン髪型なのが悔しくて仕方がありません。(?)
・「5匹目だ。これでよしと」
そう言い龍を見たあと、何かを考えている。
ここで、旅に出る事をやめる決心をしているんじゃないか。
龍を失った事、スナフキンが旅に出る事、ムーミンに2つも大きな悲しみを残すだけでなく、自分が旅立ったあと龍がスナフキンを追って、一緒に旅をする可能性がある、という不安を、ずっとムーミンに抱かせる事になる、という部分も、ポイントだろうかとも考える。
・旅人同士の物々交換。2人とも慣れてる感じがいいなぁ~。
・龍をポットに入れる手つきが超優しい。
・龍の子と聞いて「噛みつくんじゃないか?」という反応、子供のムーミンとは正反対で、大人の空間である感じがする。
・旅人同士の暗黙の了解みたいなものか、船を蹴り進ませるスナフキン。
「ウグイ5匹とは割りに合わない仕事だ」と皮肉を吐いて手を振る船乗り。
スナフキンは旅に出ている間は、いつもこんな風に、交渉したり、自分に必要な物を手に入れたりして生きているのだろう。
旅人は大人が多いと推測するので、物心がついた頃から一人で旅を続けてきたスナフキンは、こうして自立心や解決能力、知識、コミュニケーション能力を身に着けてきたのだと納得する。
ムーミン谷にいる時には見られない、スナフキンが達観している理由だろうな。
・こっから、大好きなシーンです。
ムーミン「あいつは?」
スナフキン「あいつって?」
(↑「龍の事かい?」と言うのではなく「あいつって?」と言う事によって、自分のの元へは来ていない感と、龍の事なんか覚えていないくらいだ、という無関心さを演出(?)している。)
「龍の子だよ。君のところへ飛んできたろう?」
「いや、見ないぜ。君の部屋へ戻って眠っているんじゃないか?」
(↑嘘その①。そして「いや、見ないぜ」に続けて「君の部屋へ戻って眠っているんじゃないか?」と付け加える事で、本当に来ていないよ感を後押ししている。)
「僕は放してやったんだよ」
「そいつはマズいことをしたなぁ。それじゃあひょっとして、天へ戻ったんじゃないか?昔から龍は天へ昇るものなんだから」
(↑ウィットを加える事で、大した事ではない、とムーミンに思ってもらおうとするニュアンスを出す。)
「……ウグイ5匹釣っちゃったんだね」
「いいや、君の言う通り、1匹もかからないんだ」
(↑嘘その②)
「本当?」
「冬まで旅に出るなって事さ」
「じゃ居るんだねずっと?!」
「あぁ。僕はゲンを担ぐって言ったろ。占いには逆らわないんだ」
(↑嘘その③。占いに逆らっている。ゲンを担ぐのは本当だろうが、それ以上にムーミンをとった。)
「よかったあ!嬉しい!とっても嬉しいよスナフキン!やったやったあ!」
「浮きを赤く塗ったのがいけなかったのかもしれないなぁ。でも、塗り替えるつもりはないんだ。さ、帰ろう」「うん!」
(↑嘘その④。浮きを赤く塗ったのは正解だった)
「龍って気まぐれなヤツだね」
「なにしろ、子供だからな。あの龍はなにもわかっちゃいないのさ。とても付き合えるもんじゃない」
(↑嘘その⑤。実際は龍の気持ちもわかってはいるが、ムーミンの龍への執着心を取っ払ってあげようとしている。)
「そうだね」
「まったくおかしなヤツだったなぁ。ハエが好物だったなんてさ。自慢にならない話だぜ」
「あははは!」
(↑ムーミンに笑ってほしくて、珍しく自ら冗談を言った。)
そして最後に、2人で走り出して終わるのが大好きです。
ここまでずっと大人っぽい内面を見せ続けていたスナフキンが、最後の最後で無邪気にムーミンと走り出して「子供の世界に戻って行く」感じがして好きです。
その後ろ姿がすごく活き活きしていて楽しそうで、大人の世界の中で旅をする彼も、ムーミンたちと無邪気に遊ぶ彼も、どちらも本当の彼なんだと思わせられます。
精神的にも年齢的(多分)にもムーミンより上のスナフキンであるが、そこにあるのは「対等な友だち」である事が、2人の関係の大好きなところです。(ムーミンはスナフキンの事を尊敬していて相談したりもするが、上下関係は無く、互いに同じだけ友だちだと思っている)
細かく数えたら、スナフキンは5つも嘘をついている。
全部ムーミンのためだけについた嘘であり、この嘘をついた事は、この先もずっとスナフキンしか知らない。
「自分しか知らなくていい」とかよりも、もっと先の極地にあるから、強烈にスナフキンの精神性に胸打たれるんだよね…。
あまり自分から笑わせようとしないスナフキンが「自慢にならない話だぜ」と言って笑わせるのが、男の子っぽくて大好きだ。
「あぁ。僕はゲンを担ぐって言ったろ。占いには逆らわないんだ」で「スナフキンが旅に出ない事が確定した」という、ムーミンにとって何よりも大事な言葉を言うところが無音パートのピークで、「よかったあ!嬉しい!とっても嬉しいよスナフキン!」で音楽がかかり始めるのが、画面の見せ方もアングルも音楽も全部効いていて最高です。
ムーミンがスナフキンの両手を握って回りながら喜びを爆発させ、スナフキンはされるがままに一緒に回りながら笑顔になっていくのが好き。
ムーミンのこの顔が見たかったんだろうなぁ。
スナフキンに「さ、帰ろう」と言われて「うん!」と言ったあと、スナフキンが持つ釣竿をムーミンが持っていくのも良い。
「嬉しくて堪らなくて持ってあげる」という心理からのこういう行動って、特に子供にはあるよなと気付かされて、この画を作った人の観察力に感動した。
楽しいムーミン一家はこういう、人の心の機敏さの表現が超絶上手くて、登場人物が喋って進行するだけではない、人が本当に生きている空気の流れをつくる手腕に感動する。
そしてスナフキンが「さ、帰ろう」と言うのも好き。
故郷を定めない彼だけど、今だけは帰る場所があって、それはムーミンの家のすぐ側にあるから「一緒に帰る」事になるのが良い。
多分、スナフキンはいつかムーミン谷を離れる事になると思うけど、2人の人生の中に「彼と一緒に帰る時期があった」と思い出す1つに、この夕暮れを2人で駆けて行く景色もあるんだろうなと思います。(マジで、勝手に)
楽しいムーミン一家のスナフキンは、人あたりの良さや気遣い力まで完璧という隙の無い人物で「こんな人になりたい」をすっ飛ばして「こんな人になれる訳ねぇだろ (ー完ー) 」って感じなので憧れの対象にすらならないんだけど、自分の言動を顧みようという気持ちはめちゃくちゃ湧きますね…。
ちなみに1話~12話は同じ脚本家の方が担当しているが、この13話で初めて別の脚本家の方が担当している。
それもあって、それまでとは別の際立ち方がある回なのかなと思う。
14話以降も、引き続き感想を書いていきたい。
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