居間の儘 その①
昨年の春、京都は西陣のど真中にある自宅の居間にてギター弾き語りの録音をした。
自分からやりたいということもあったが、半分はまわりの心ある仲間のみんなからの進言があったからに他ならない。
その録音よりさかのぼることまた1年くらい前、僕は山梨・甲府にあるキャメルハウススタジオにて弾き語りではなく"ひとりバンド録音"をしていた。
ギターを弾き、仮歌を入れ、ドラムを叩き、それを複数曲骨組みを組んだ段階で、その続きを触ることなく棚上げたまま、僕は他のバンドやサポートでのドラム活動に終始していた。
続きのことを気にしながらもスケジュールを立てることが出来ず、生活は荒れ、身も心も消耗していった。けど、回りの心ある人たちの支えによってとても充実した日々を送らせてもらっていた。
が、やはり自分のことを最優先に出来ない、この何とも言えないどうしようもなさが心の壁にへばりついたままで、自分の中途半端さを呪いながらしかしやるべき眼前の事柄に明け暮れる毎日。
自分でも気がついてはいたが、回りの近しい人たちはもっと早くに気がついていた。
「こいつはどうしようもないやつだ」と。
思いついたことはすぐに言うがその言ったことは守れない。
何にでも手を出したがる癖が祟って収拾がつかなくなることはざら。
そうこうしてまた時が過ぎたある日、この自宅での録音話がふっと出た。
録音の全てを託しているのはWATERWATERCAMELの田辺玄。
彼は僕が以前やっていた"シスターテイル"というバンド時代からずっと世話になっていて、他のサポートでも録音やライブで都度顔を合わす数少ない気のおける音楽仲間。
僕のことも良く良く知っている。
「山梨での録音の続きはとりあえず置いておいて、今のまま、あるがままの自分の歌を1番自分がリラックス出来る環境で、自分の生活丸ごと染み付いた場所で、その匂いめいたものも丸ごとパッケージしてみる方向にシフトしていくのはどうだろう」
という、彼らしくもあり、また自分のこの些細な事にも影響されやすい性格のことも理解した上での提案に乗らないワケはなかった。
田辺玄は甲府から機材とともにやってきた。
いつもの生活スペースにマイクが立っていく。
そしていつも何するでもなく寝そべったりスマホいじったりギター爪弾いたりしてる居間のソファーにいつものように腰をかけ、いつものラフな頃合で自分の歌を歌った。
12,3曲1日で録り、翌日もちょっと録ったっけか、どうだっただろ、とにかく、あまり構えず気取らず、コーヒー啜ったりしながらなんとか録り終えた。
今回の録音はDSDレコーディングの為にその場でプレイバックすることが出来なかったので、そこも新鮮だった。
なので、その日の記録、日記、ログ、何でもいいけど、今のままをそのまま切り取ったもので、綿密に練られた"アルバム"というものとはまた趣きが違うものが今回の作品のテーマになってます。
このままじゃいけない、今のままでは本当にダメになる、なんとかしなきゃ、なんとかしなきゃ!
みたいな無駄に焦る気持ちを抱えたままここ何年か過ごしてきて、
そんなある日の今を"今のまま"音にに残す、という、どないやねんと自分でも思わなくもないけど、
そうした自分の不甲斐ないある種破綻した性格の人間の在るが儘を自宅の居間で鳴らして封じ込めた音源です。
だから、居間の儘。
創作物だけどドキュメンタリーの方がニュアンスとしては正しい。
居間の儘 senoo ricky
SNRC-001 ¥2,000-
1. Ten Years
2. 暇珈琲
3. 猥談
4. オヤスミタイ
5. Snipe
6. しこみ
7. Park
8. メロディ
Lyrics & Music by senoo ricky
(except track 4 : Lyrics & Music by YeYe)
Recording and mixing by Gen Tanabe
Recorded at Ricky's house (Nishi-Jin , Kyoto)
Artwork by Miki Iwasato
次回は、アートワークを全て担ってくれたもう1人の大切な仲間"イワサトミキ"について書きます。
senoo ricky
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