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逞しく悲しき犬たち
動物の物語に弱い。
人間の物語では冷酷なほど涙腺は緩まないのだが。
動物、特に犬が出てくるともういけない。
いつものように図書室で借りた本だ。
「アラシ」
大正半ばから昭和十年ごろまでの北海道の原生林。
炭焼きに携わった親のもとで移動しながら過ごした少年時代。
クロ、アラシ、タキ、ノンコの獣猟犬とともに。
当時は列車には犬は乗せられない。
山を移る際に残されていくことを知り、絶食して命を絶ったクロ。
次は野生に戻っていく葛藤が辛い、山犬の血が混ざったアラシ。
タキはアイヌ犬、これだけは飼い犬ではない。
ノンコは最後まで一緒にいた、人の言葉がわかる犬。
ジャック•ロンドンの原作を映画化した「野生の呼び声」を彷彿とさせた。
アラスカで野生に帰っていくバックと、アラシが重なる。
言葉を喋らなくて、仕草と表情ですべてをあらわす、あくまで人間に忠実な犬たち。
悲しくてたまらない。
犬だけではなく、手付かずの原生林での生活が細部にわたり描写されている。
古希を過ぎての執筆にかかわらず記憶が鮮明である。
解説には、現代の語り部だと記されてて、犬好きの人におすすめの本だ。
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