見出し画像

整形外科専門医試験2023年第35回問1(復元)

整形外科専門医のひろひろです。
突然ですが,このnoteをクリックしてくださった先生方,専門医試験の勉強本当にお疲れ様です、、、
「整形外科卒後研修Q&A」
をひたすら解いて、標準整形外科で該当箇所をチェック。
そしてまたQ&Aを解いて標準整形外科を見る。
この繰り返しが一般的な整形外科専門医試験の勉強法だったと思います。

しかし!
Q&Aの解説がわかりやすければ良いのですが、正直解説も言葉が難しく全然頭に入りませんし、問題と答えが別冊子にになっておりすごく勉強しづらいです。
そこでできるだけ言葉を簡単にして、文献、画像を引用しながら、わかりやすい参考noteを後輩と一緒に作ることにしました。(整形外科専門医試験は結局は暗記であり、かなりの知識量が必要ですので解説がボリューミーになってしまうのはご了承ください汗)

また本noteを作成している2023年5月現在,Q&Aは最新版のものでも第31回の解説までしか含まれておらず、現状第32回以降32,33,34,35回の解説がありません。
この解説noteアカウントではQ&Aがカバーしていない32,33,34,35回の全ての問題を解説していく予定です。
他年度の問題とも比較検討しながら解説をしており、傾向もつかむことができます。

すでに第34回は完全版も完成しております。
いくつかリンクを貼っておきますので,ご参照ください😄

2022年第34回全問セット←完全版が欲しい方はここをクリック👆
2022年度 第34回 問1無料で読んでみる✏️

上記の第34回の問1は無料で見ることができますので、
「これはいいぞ!」
と思ってくださった方は問2以降もチェックしていただけますと幸いです。

本noteは2023年 第35回 問1についての解説です。
こちらも無料公開です!
問2以降も専門医試験勉強の助けとなれるようわかりやすく説明しております!
よければご愛好ください😊

整形外科専門医試験2023年第35回
問 1 骨の形成について正しいのはどれか.2 つ選べ.
a 骨細胞は骨基質産生能がない.
b 骨芽細胞はHowship 窩に存在する.
c 長管骨は膜性骨化によって形成される.
d オステオカルシンは破骨細胞において産生される.
e 骨基質蛋白の中で最も多いのはⅠ型コラーゲンである.

解答

ae
a 骨細胞は骨基質産生能がない.◯
b 骨芽細胞はHowship 窩に存在する.×
c 長管骨は膜性骨化によって形成される.×
d オステオカルシンは破骨細胞において産生される.×
e 骨基質蛋白の中で最も多いのはⅠ型コラーゲンである.◯

a骨細胞は骨基質産生能がない.◯
について

病気がみえるvol.11より引用

骨芽細胞:骨基質の産生,骨形成
骨細胞:破骨細胞の誘導,骨の維持
破骨細胞:骨基質の分解,骨吸収

画像の通り,骨細胞は骨基質産生能はありません!
骨はこの3つの細胞があり,骨芽細胞と骨細胞はギャップ結合で連結しています。

b 骨芽細胞はHowship 窩に存在する.×
について

これは
骨芽細胞×→破骨細胞○
の典型的な選択肢です。

2021年第33回問2で破骨細胞について出題されていますので,持ってきました!
問2 破骨細胞について正しいのはどれか.3 つ選べ.
a 巨大な多核細胞である.◯
b 単球・マクロファージ系の前駆細胞に由来する.◯
c 副甲状腺ホルモン(PTH)により活性が抑制される.×
d 酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)活性が低い.×
e RANKL(receptor activator of NF-κB ligand)によって活性化される.◯

・破骨細胞は骨吸収を中心に担う細胞で,巨大な多核細胞です.
単球・マクロファージから分化します.
・骨組織において,骨表面の吸収窩(Howship窩)に存在します.明帯(clear zone)で骨と接地し,波状縁(ruffled border)という膜構造を形成して,そこから酸や酵素を分泌して骨基質を分解します.
酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)活性が強いです.TRACP5bは骨吸収マーカーとして臨床でも使われてますよね.
・骨粗鬆症治療薬にPTH製剤と抗RANKL抗体がありますが,
PTH製剤は骨形成促進
抗RANKL抗体は骨吸収抑制
に働きますよね.

c 長管骨は膜性骨化によって形成される.×
について

骨は
●結合織内(膜性)骨化
●軟骨内骨化
の2つの様式で形成されます.

病気がみえるvol.11より引用

●膜性骨化(頭蓋骨と鎖骨の一部)

骨形成部位にはまず間葉系幹細胞が集積し,膜性骨化が開始されます.(軟骨内骨化も同様のスタート)

集積した間葉系幹細胞は直接骨芽細胞に分化し,Ⅰ型コラーゲンや非コラーゲンを分泌して類骨を形成します.
✅太さに寄与
✅障害されたら骨形成不全症
✅類骨は膜性骨化

●軟骨内骨化(大部分の骨)
間葉系細胞の集積

FGFや骨形成蛋白(BMP)の作用で,Ⅱ型コラーゲンを産生する軟骨芽細胞に分化

軟骨原基を形成

これを取り囲むように軟骨膜が形成され,この軟骨形成層から軟骨細胞が分化し長径成長に寄与します.
✅長さに寄与
✅障害されたら,軟骨無形成症
✅頭蓋骨と鎖骨以外は軟骨内骨化

選択肢は,長管骨は膜性骨化なので,×

d オステオカルシンは破骨細胞において産生される.×
e 骨基質蛋白の中で最も多いのはⅠ型コラーゲンである.◯
について

●骨基質とは?

病気がみえるvol.11より引用

骨基質:骨の細胞成分以外のことです.
その中に有機成分であるコラーゲンや非コラーゲン蛋白,無機成分が存在します.

割合は
90%:Ⅰ型コラーゲンで最も多い
Ⅰ型コラーゲンはα(Ⅰ)鎖2本とα(Ⅱ)鎖1本の3本鎖からなるtriple helix構造をもちます.Ⅰ型コラーゲンの遺伝子変異にて骨形成不全症が生じます.

残りの10%がそれ以外のコラーゲンや非コラーゲン蛋白,無機成分です.

病気がみえるvol.11より引用

●オステオカルシン
・骨基質に存在する非コラーゲン蛋白のことです.そのなかで最も豊富に存在するのがオステオカルシンです.
・骨芽細胞・象牙芽細胞から特異的に産生されます.そのため,骨形成マーカーとしても有用性が高いです.(産生するのは骨芽細胞くらいで,骨細胞や破骨細胞は産生しないと覚えてOK)
・非コラーゲン蛋白の中には,オステオポンチンというものもあり,骨芽細胞だけでなく破骨細胞でも強く発現しています.
・オステオポンチンは骨組織への接着に関与しており,細胞の走化性が起こり骨量減量につながる可能性が示唆されています.

前もって伝えておきますが,骨の構造と軟骨の構造が違うため,ごっちゃになりがちです.気をつけてください!
解説のボリュームの関係で,関節軟骨については割愛いたします.
2022年度の問4で関節軟骨について出題されており,よければこちらをご参照ください!

整形外科専門医試験2023年第35回
問 1 骨の形成について正しいのはどれか.2 つ選べ.
a 骨細胞は骨基質産生能がない.
b 骨芽細胞はHowship 窩に存在する.
c 長管骨は膜性骨化によって形成される.
d オステオカルシンは破骨細胞において産生される.
e 骨基質蛋白の中で最も多いのはⅠ型コラーゲンである.

解答
ae
a 骨細胞は骨基質産生能がない.◯
骨基質産生能があるのは骨芽細胞です.

b 骨芽細胞はHowship 窩に存在する.×
→骨芽細胞ではなく破骨細胞の典型的な選択肢です.

c 長管骨は膜性骨化によって形成される.×
→長管骨は成長軟骨板で長径方向に成長するため,軟骨内骨化で形成されます.
膜性骨化は,頭蓋骨と一部の鎖骨だけです.

d オステオカルシンは破骨細胞において産生される.×
→オステオカルシンは骨基質非コラーゲン蛋白のことです.骨基質は,90%ぐらいがコラーゲンで最多はⅠ型コラーゲンです.残り10%の中に非コラーゲン蛋白が存在し,その中でも多いのがオステオカルシンです.この非コラーゲン蛋白の中には,オステオポンチンというものもあり,それは骨芽細胞だけでなく破骨細胞でも産生しています.

e 骨基質蛋白の中で最も多いのはⅠ型コラーゲンである.◯

【参考文献】
・標準整形外科学第14版
・病気がみえるvol.11

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?