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整形外科専門医試験2024年第36回問1

整形外科専門医のひろひろです.
突然ですが,このnoteをクリックしてくださった先生方,専門医試験の勉強本当にお疲れ様です、、、
「整形外科卒後研修Q&A」
をひたすら解いて、標準整形外科で該当箇所をチェック.そしてまたQ&Aを解いて標準整形外科を見る.この繰り返しが一般的な整形外科専門医試験の勉強法だったと思います.

しかし!
Q&Aの解説がわかりやすければ良いのですが,正直解説も言葉が難しく全然頭に入りませんし,問題と答えが別冊子にになっておりすごく勉強しづらいです.
そこでできるだけ言葉を簡単にして,文献,画像を引用しながら,わかりやすい参考noteを後輩と一緒に作ることにしました.(整形外科専門医試験は結局は暗記であり,かなりの知識量が必要ですので解説がボリューミーになってしまうのはご了承ください汗)

また本noteを作成している2024年5月現在,Q&Aは最新版のものでも第31回の解説までしか含まれておらず,現状第32回以降32,33,34,35,36回の解説がありません.
この解説noteアカウントではQ&Aがカバーしていない32,33,34,35回の全ての問題を解説していく予定です.
他年度の問題とも比較検討しながら解説をしており,傾向もつかむことができます.

すでに第34,35回は完全版も完成しております.
いくつかリンクを貼っておきますので,ご参照ください😄

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上記の第34,35回の問1は無料で見ることができますので,
「これはいいぞ!」
と思ってくださった方は問2以降もチェックしていただけますと幸いです.
本noteは2024年 第36回 問1についての解説です.
こちらも無料公開です!
問2以降も専門医試験勉強の助けとなれるようわかりやすく説明しております!
よければご愛好ください😊

整形外科専門医試験2024年第36回
問1 骨モデリングとリモデリングについて誤っているのはどれか.2つ選べ.

a 骨モデリングにおいて骨形成と骨吸収は互いに独立して生じる.
b 骨モデリングとは力学的負荷に合わせて骨形状を改変していく機構である.
c 骨リモデリングでは骨形成相を経て骨吸収相に至る.
d 骨リモデリングは破骨細胞と骨芽細胞の連携により行われる.
e 骨リモデリングにより皮質骨の微少骨折(マイクロクラック)は修復される.


解答

ac

a 骨モデリングにおいて骨形成と骨吸収は互いに独立して生じる.×
b 骨モデリングとは力学的負荷に合わせて骨形状を改変していく機構である.◯
c 骨リモデリングでは骨形成相を経て骨吸収相に至る.×
d 骨リモデリングは破骨細胞と骨芽細胞の連携により行われる.◯
e 骨リモデリングにより皮質骨の微少骨折(マイクロクラック)は修復される.◯

骨の修復についての設問ですね!

●骨モデリング(成長期の話)

成長過程において,部位によって骨吸収と骨形成が連携して行われ,骨が一定の形を保ちつつ成長します.肉眼的に骨の形状が変化する機構をモデリングと言います.
モデリングとは成長期に力学的負荷に合わせて骨の形状を改変させていく機構であるとも言われています.
これはドリフトによって生じる現象です.モデリングの際に生じるドリフトでは,骨形成と骨吸収の協調作用が必要であり,モデリングの過程においても何らかの骨吸収ー骨形成の連携が存在すると考えられます.簡単にいうと

「骨モデリングとは骨形成と骨吸収の協調作用で成長期に骨の形状を改変させる機構」となります.

病気がみえるvol.11より引用

●骨リモデリング(成長後の話)


骨は成長を終えた後も常に骨吸収と骨形成を繰り返して組織の更新を行っています.この新陳代謝機構を骨のリモデリングといいます.古い骨を新しい骨に置き換えることによってマイクロダメージの集積を回避するプロセスであるとも言われています.
定義は,「皮質骨のオステオンあるいは海綿骨のパケットなどのbasic multicellular unit(BMU)において,活性化相→吸収相→逆転相→形成相というサイクルを経て骨組織がバランスを保ちながら代謝改変されるという現象」というニュアンスで使用されています.
リモデリングには,骨が持つ支持器官としての機能の維持と生体内の電解質バランスの調節という2つの役割があります.

骨リモデリングイメージ
病気がみえるvol.11より引用

●骨の再生・修復


骨の再生・修復は
・骨誘導(骨がない場所に骨形成をすること)
・骨伝導(人工骨の表面に骨形成細胞がつきやすいこと)
この二つからなります.
伝導の「伝」は,つたい歩きなどと同じように何かを伝っていくと考えると,何かの対象にくっつくというイメージが湧くのではないでしょうか
そう考えられたら,誘導がそうではない方と覚えられますよね.

それぞれを詳しくみていきましょう!

病気がみえるvol.11より引用

骨誘導:
なんらかの誘導物質が局所に骨組織を分化誘導させる現象=BMP(骨形成蛋白)などの細胞分化因子を本来骨が存在しない場所に移植した場合,局所の未分化間葉系細胞が軟骨細胞や骨芽細胞に分化し,骨形成を生じます.

骨伝導:
母床に存在する骨形成細胞が骨移植や人工骨内に三次元的に侵入し,内部に骨形成を生じる現象=ハイドロキシアパタイトリン酸三カルシウムなどの多孔体セラミックスなどの人工骨は,それ自体は間葉系細胞を骨芽細胞に分化させないので,骨誘導能はありませんが,骨形成細胞が表面に付着しやすく骨伝導能を有しています.
そして,人工骨のβ-リン酸三カルシウムは骨に置換されます.
骨形成蛋白=BMPは,骨基質や骨肉腫内に存在しており,筋肉内に骨を誘導できます.これにより骨肉腫ではXpで新生骨が認められます.Ewing肉腫は溶骨性変化が主になります.

●骨折治癒


骨折治癒の流れは①炎症期→②修復期→③リモデリング期
①炎症期
骨折部は低酸素状態で,アシドーシス
・出血による血腫が形成され,炎症性サイトカインの作用により未分化間葉系細胞や前骨芽細胞の増殖が認められます.(つまり骨を作るよう一気にエンジンかけていく感じ)
・壊死組織の吸収と毛細血管新生が行われます.

②修復期
・骨折部やその周辺に新しく形成された修復組織内の未分化間葉系細胞が軟骨細胞や骨芽細胞に分化します.
・骨折部周辺の骨膜は膜性骨化軟骨は軟骨内骨化で修復
・骨が架橋され,仮骨となる
・仮骨は,軟性仮骨(弱い線維性骨)が作られます.

③リモデリング期
・形成された線維性骨が層板骨(硬性仮骨)に置換される時期.6〜8週間
・小児はWolffの法則で回旋変形以外の変形は自家矯正されます.

骨折の修復イメージ
病気がみえるvol.11より引用

●骨癒合の様式


骨癒合は
・一次骨癒合(仮骨あり)
・二次骨癒合(仮骨なし)
に分けられます
一次骨癒合は,骨幹部骨折などを正確に整復し仮骨を形成せず,接触したハバース管により生理的骨改変により骨形成が生じ癒合が完成します.
多くの骨折は,仮骨形成を伴う二次骨癒合の過程を経て修復されます.二次骨癒合は瘢痕形成ではなく新しい軟骨・骨組織再生による自己再生です.
もちろんですが,若年の方が再性能高く,加齢により低下します.

骨癒合の様式
病気がみえるvol.11より引用

過去問チェックです!

整形外科専門医試験2021年第33回


問 3 骨折の修復について正しいのはどれか.2 つ選べ.
a 骨折直後,骨折部位はアルカローシスに陥る.
b 骨折に伴う血腫は,局所での骨形成を阻害する.
c リモデリング期では,線維性骨が層板骨に置換される.
d 一次骨癒合とは,仮骨を形成せずに骨癒合することである.
e 二次骨癒合とは,瘢痕形成によって骨癒合することである.

解答
cd

a 骨折直後,骨折部位はアルカローシスに陥る.×
→アシドーシスです.

b 骨折に伴う血腫は,局所での骨形成を阻害する.×
→阻害せず,むしろ軟骨形成します.

c リモデリング期では,線維性骨が層板骨に置換される.◯

d 一次骨癒合とは,仮骨を形成せずに骨癒合することである.◯

e 二次骨癒合とは,瘢痕形成によって骨癒合することである.×
→瘢痕形成ではなく,新しい軟骨・骨組織再生による自己再生です.


整形外科専門医試験2022年第34回


問3 骨の修復について正しいのはどれか.2 つ選べ.
a 同種保存骨は骨再生作用が高い.
b β-リン酸三カルシウムは骨誘導能を有する.
c 骨折治癒過程の修復期では層板骨が形成される.
d 骨形成蛋白(BMP)は未分化間葉系細胞を分化させる.
e 一次骨癒合は仮骨を形成せずに骨癒合が完成する現象である

解答
d,e

a 同種保存骨は骨再生作用が高い.×
→同種より自家骨移植の方が再性能高い

b β-リン酸三カルシウムは骨誘導能を有する.×
→人工骨は伝い歩き=伝導!

c 骨折治癒過程の修復期では層板骨が形成される.×
→修復期は膜性骨化,軟骨内骨化が起こっています.層板骨が作られるのはリモデリング期です.

d 骨形成蛋白(BMP)は未分化間葉系細胞を分化させる.◯

e 一次骨癒合は仮骨を形成せずに骨癒合が完成する現象である◯

整形外科専門医試験2023年第35回


問2 骨の修復について誤っているのはどれか.
a ハイドロキシアパタイトは骨誘導能を有する.
b 骨折部周囲の骨膜は増殖,肥厚し膜性骨化が生じる.
c 骨折治癒過程は,炎症期,修復期,リモデリング(再造形)期にステージ分類される.
d 骨折治癒過程において,骨形成蛋白(BMP)は未分化間葉系細胞を軟骨細胞に分化させる.
e 直接骨折治癒(一次癒合)とは,仮骨を形成せず,生理的骨改変により骨形成が生じる現象である.

解答
a

a ハイドロキシアパタイトは骨誘導能を有する.×
ハイドロアパキシタイトは骨伝導です.

b 骨折部周囲の骨膜は増殖,肥厚し膜性骨化が生じる.◯

c 骨折治癒過程は,炎症期,修復期,リモデリング(再造形)期にステージ分類される.◯

d 骨折治癒過程において,骨形成蛋白(BMP)は未分化間葉系細胞を軟骨細胞に分化させる.◯

e 直接骨折治癒(一次癒合)とは,仮骨を形成せず,生理的骨改変により骨形成が生じる現象である.◯


それでは最後に設問をチェックしていきましょう!

整形外科専門医試験2024年第36回


問1 骨モデリングとリモデリングについて誤っているのはどれか.2つ選べ.

a 骨モデリングにおいて骨形成と骨吸収は互いに独立して生じる.
b 骨モデリングとは力学的負荷に合わせて骨形状を改変していく機構である.
c 骨リモデリングでは骨形成相を経て骨吸収相に至る.
d 骨リモデリングは破骨細胞と骨芽細胞の連携により行われる.
e 骨リモデリングにより皮質骨の微少骨折(マイクロクラック)は修復される.

解答
ac

a 骨モデリングにおいて骨形成と骨吸収は互いに独立して生じる.×
→これ諸説ありそうですが,協調して連携する方で覚えましょう.

b 骨モデリングとは力学的負荷に合わせて骨形状を改変していく機構である.◯

c 骨リモデリングでは骨形成相を経て骨吸収相に至る.×
→骨吸収されその後骨形成されます.

d 骨リモデリングは破骨細胞と骨芽細胞の連携により行われる.◯

e 骨リモデリングにより皮質骨の微少骨折(マイクロクラック)は修復される.◯

【参考文献】
標準整形外科学第14版
病気がみえるvol.11

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