【レポート】ブルボンヌ×一ノ瀬文香が絶賛!「同性愛が違法・ケニアにおいて存在そのものに価値がある映画」『ラフィキ:ふたりの夢』DVD発売記念イベント@シネマート新宿
「人を好きになるのに ボーダーはない」2018年カンヌ国際映画祭ある視点部門出品ケニアのカラフルな最新カルチャーにのせて、自由な恋愛と幸せな未来を夢見るふたりを描く感動作!少女たちに芽生えた小さな恋心に立ちはだかるのは法律と国家の壁——。
このたび、2019年11月9日(金)より渋谷イメージフォーラムほかにて全国公開された映画『ラフィキ:ふたりの夢』のDVDが10月2日(金)発売。その発売を記念し、シネマート新宿では特別上映&トークショーが開催されました!ゲストには、女装パフォーマー・ライターとして活躍中の #ブルボンヌ さん、LGBTに関する講演講師なども行っているタレントの #一ノ瀬文香 さんが登壇。
「いかにもケニアから来た!って感じの二人が来ました❤️」と開口一番、会場の笑いを誘うブルボンヌさん。「二人とも新宿二丁目でお店を経営している身でもあるので、ご近所で素敵な映画をやっているという事で、お呼ばれしてまいりました」と簡単な自己紹介のあと、お二人はお互いの本日のファッションについて言及。ブルボンヌさんは原色が眩しいケニア柄(?)を意識したオールインワン。一方、一ノ瀬さんはおばあさまから譲り受けたというお着物で日本色をアピール。映画で描かれる同性愛の問題について、ご自身の経験談を交えて熱いトークが繰り広げられました。
——以下、トークの一部をご紹介します——
一ノ瀬文香さん(以下、一ノ瀬):私は映画のいろんな部分に疑問を持っていて、何回も巻き戻したり停止したりして確認しているんですが。最後に出てくる手紙はケナが書いて出さなかったものなのか、あるいはジキからもらったものなのか気にかかっていたんですよ。でもよく見ると郵便のハンコが押してあった。だから、ちゃんとジキからもらったものなんだなって。
ブルボンヌさん(以下、ブルボンヌ):なるほどね、そこを疑うって発想がなかったけどね。アタシは『ブロークバック・マウンテン』でイニスがロッカーを開けると思い出の写真が出てくる、というシーンを思い出して、もしかしたら監督は少しだけ意識しているのかな?とは思いましたね。
一ノ瀬:あと、元々ジキは海外に住みたいと言っていたのに、イギリスに行きたくないと泣いていた。ひどい暴力で自尊心がボロボロになっているけれど、それでもケナを想う気持ちを感じているんだと思いました。そして、おそらく同性婚が法制化されたばかりのイギリスに行って自分自身を取り戻したジキは、ケナに対する気持ちも再確認して手紙を書いた。二人は再会してハッピーエンド。その後も一緒に暮らしていくんじゃないかと思ったんですが、ただ二人はケニアに移住したのかな?と気になるところもあって…‥。
ブルボンヌ:たしかにこれはフィクションだけど現代劇。あれだけ辛い思いはしたけれども、きっとジキちゃんもイギリスで「LGBTだっていいじゃない!」という気持ちを持って帰って来たという演出だよね。そこは本当に素敵よね。
ブルボンヌ:アタシはこういうお仕事をいただくと「上乗せしてお伝えしなきゃ!」と思っちゃうタイプなんですが(笑)この映画は本当に素直にいいなと思いました。映画という作りでいえば、少し気になるところはあったりするんですよ。たとえば、ロミオとジュリエット的な政敵の娘同士だったり、突然雨が降って秘密の花園で恋が始まったり。とくにどんでん返しがあるわけでもないし。でも、この作品が存在してくれること自体に価値があるなって思える映画じゃない?だって、ケニアだよ?
この映画のパンフレットにも書かせていただいたんですが、以前、オネエキャラがワールドカップバレーの応援をするというお仕事がありまして。アタシは気合を入れて、モリモリのカツラでド派手な格好で応援に行ったんですけど、そのときの日本女子チームの対戦相手がケニアだったんです。ただでさえ負けて苛立っているケニアのお姉さんたちがドラァグクイーン姿のアタシの前を通ったときに、全員が憎しみや侮蔑やいろんなものが入り混じった恐ろしい目で睨みつけてきた。映画でも描かれている通り、よくよく考えるとケニアは同性愛行為自体が違法なんですよね。違法とされる国で活動することだって勇気が必要だと思うんですが、ケニアのLGBTの活動家たちは法改正を求めて頑張って訴えていたんですね。それでも去年、最高裁でその訴えは却下されてしまった。それくらい根強く同性愛が認められない国なんです。だから、そのときの対戦相手だったケニアの人たちは、自分を極悪人を見るような目で見ていたんだなと思いました。二、三十人から一斉に憎しみの込もった視線を向けられるなんて、人生であんな体験はなかなかできない。人には恐ろしい差別感情があるということを身をもって知った。そんなケニアでこういう映画を作って世界に発信してくれて、さらに辛い経験も踏まえて最終的に前向きなメッセージを届けてくれるという、『ラフィキ』は存在の価値が素晴らしい映画だって思うんですよね。
一ノ瀬:そのバックボーンを考えると本当に奥深いなと思います。私は2009年に週刊誌でレズビアンをカミングアウトしているんですが、当時は芸能界でレズビアンをカミングアウトして活動している人がいなかったんですね。で、NHKの番組などに呼んでもらうと、必ず最初に「レズビアンで今まで辛かったこと・悲しかったことはなんですか」って聞かれるんです。それは映画でのイメージも同じで、差別やマイノリティを題材に扱っている物語は、だいたい暗い話の展開でバッドエンドで終わることが多い。それなのに『ラフィキ』は、日本よりも差別が激しいケニアの問題を明るくポップに描いて、ちゃんとハッピーエンドになっている。悲しいことをそのまま悲しく描くのは簡単だと思うんですが、明るくポップに描いているところに監督の強さを感じましたし、この映画の奥深さがあると思います。
ブルボンヌ:こういう問題は日本ですら何かにつけて苦労話や涙を誘うコンテンツとして消費されがちなのに、ケニアの環境であればなおさら悲劇的に描こうと思えば描くことができる。でも、リンチに遭うような辛いシーンは描かれるけども、あくまでポップで前向き。二人の幸せなシーンは本当に仲睦まじく、観ている側が微笑ましくなるくらいに描いている。その映画の力強さの分だけ、ものすごい前を向こうとしていることが伝わってくるよね。
ブルボンヌ:たとえば、欧米の映画では同性婚のその先の老後の話が描かれたりしていて、日本でいろんな映画を観ていると同性愛やトランスの事情は遅れているなと思いがちだったけれど、改めて世界はいろいろだなと実感します。こういう現実も知っておかなきゃいけないと思う。笑い事じゃなくて、アタシたちこのまま外に出たら殴り殺されるんだよ?日本だと以前はからかわれたりするようなことはあったけれど、自分たちは違法な存在ではない。ジキとケナみたいな可愛い女の子同士がキスしただけで、街中が正義の鉄槌を下すみたいな気持ちで追い回して暴力をふるうのはおかしいと思うけれど、彼らからすれば「同性愛は間違っている」という常識の中で生きているから「彼女たちを何とかしないと大変なことになってしまう!」くらいの使命感もあるんだと思う。そう考えると、世の中が法律や教育で与えている常識が、人間の憎しみや喜びや愛情を作り出していて、間違ったことを教わるって恐ろしいことだなと感じます。
先日、性教育の番組の司会をつとめていたとき、女子中学生から「お母さんから、キスをすると子供が出来ると聞きました」みたいなお便りが来たんです。でも、そんな子たちに同性愛の意味をどうやって分かってもらうのかという話で、性の知識が閉ざされている人は本当に閉ざされているから、こういう問題を理解をしてもらうためにはちゃんと真っ当な情報を行き渡らせないといけないなと思う。なるべく正しい知識をみんなが語ってほしいよね。子供のうちに教える方がスッと理解が早いと思います。子供はね、オネエのおじさんのことを自然に「おばさん」って呼んだりすんのよ。あれは魂を見てるのね(笑)
一ノ瀬:わかります。私も大学生のときに教育実習に行く機会があって、生徒たちに「先生、彼氏いるんですか?」と聞かれた。「いや彼氏はいないけど彼女だったらいるよ」と普通に答えたら「どんな人〜?」みたいな反応でした。言い方ってあると思うんですよ。よく「カミングアウトするときにどういう風に言ったらいいか」と相談されるんですが、なるべく自分が「ああもうだめだ」というタイミングじゃなくて「幸せハッピー!」なタイミングのときに言った方が、ポジティブな言葉が返ってきやすいよ、ということはいつもアドバイスしています。
ブルボンヌ:本当にそう。基本的に他人は鏡だから、罪の告白のように言ったら、相手も重いこと聞かされてしまったと思っちゃうし、自分が幸せだということと共に言いたいよね。
◆『ラフィキ:ふたりの夢』DVD発売記念イベント
日時:10月8日(木)
会場:シネマート新宿 スクリーン1
<ゲスト>
ブルボンヌ(女装パフォーマー/ライター)
一ノ瀬文香(タレント)
◆『ラフィキ:ふたりの夢』DVD絶賛発売中!
発売日:10月2日(金)
封入特典:オリジナルステッカー
定価:3,800円(税抜)
オンラインストア&全国DVD取り扱い店でお買い求めください。
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