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故郷とは?(日本の原風景)

最近、水上勉の「故郷」という小説を読んだ。
皆様にとって、故郷とは、実家があるところ、親が住んでいるところ、自分が育ったところなどいろいろな定義があることと 思う。

都会派?田舎暮らし派?
今でも日本では田舎で育ってもだいたいは東京や大阪など大都会に出る傾向が一定数あるかと思うが、逆に若い時からUターンして田舎で空き家を見つけてDIYやりながら農業で生計を立てるなどの新しい価値傾向も多くなってきたように思われるが、皆様にとっては、将来や老後は、都会派だろうか、田舎暮らし派だろうか?

故郷が原発の地
この小説は、長いアメリカ暮らしで、そろそろ50歳代を迎えた夫婦が日本の若狭の生まれ故郷に戻って終の棲家を見つけようと旅をするというあらすじだ。
その若狭地方では原発施設がいくつも作られ、もし大地震で津波など発生すればたちまち放射能に汚染される立ち入り困難区域となり、その恐怖感からとても老後の安住の地というにはほど遠い場所だ、というのがこの夫婦の旦那の 考えだが、夫人は故郷がいくら原発銀座になったとしても、この原発のおかげで間接的にでも日本の戦後から 高度経済成長までの復興も成り立ちえたのだし、そこは自然があふれた故郷に変わりないという考えを抱きながら 若狭地方の実家を目指して旅を続ける物語である。
日本の過疎の地域が原発建設により地元の人々の暮らしが 経済的に潤うことも事実だったと書かれていた。
はたして、故郷とは無条件に心の安息の場所なのだろうか?自分に引き合わせて自分の故郷の県にもし原発が 10基以上も作られて原発銀座となった場所を故郷と思い続けられるだろうか?と思う。

東日本大震災
12年前は誰でも知っている福島の原子力発電所の大事故もあった。
私は東日本大震災から4,5年後に実際に福島県の避難区域に行き、そこで暮らす人々と長い時間話したことがある。 ある農家の人はそこに住み続けていて、帰還困難区域に住んでいた多くの方々は、やはり放射能汚染が怖くて、他の地域や県に避難したそうだ。放射能汚染から守るために、先祖のお墓も他の地域や県に移し替えた方々もおられたと聞いた。
やはり故郷と言っても、原発施設がある場所はやはり地震大国の日本では、何か大事故が起こる可能性があり 恐ろしい場所と受け取られるのだろうと思った。

パリのとなりにも原発がある
そういえば、ここパリでも100キロ離れたところに原発施設がある。何か原発で大事故が起これば大都市パリは壊滅となる。 それでも我々は普段は原発のことを意識もせずに暮らしていて、その電力の恩恵を普通のこととして日々を暮らしているのである。
パリで長い間生きている私はこの都市を自分の故郷だと思ったことは一度もない。ここには自然がないのだ。

日本の原風景としての故郷とは?
私が思う故郷は、やはり山、海、野、田んぼ、川などがある海辺の風景か里山に近い自然に囲まれた地というイメージがある。 たぶん自分が子供の頃暮らした東北地方のある太平洋岸の田舎町の風景が、いわゆる故郷というイメージに近いということはおぼろながらも感じることであるが、そこも東日本大震災の津波で壊滅してしまった。町は新しく復興途上であるが、昔の町のたたずまいが根こそぎ無くなって、見知らぬ新しい小さな町ができるというのは、なんという喪失感だろうかと感じる。
しかし自分にとっての故郷は、やはり日本という国土だと思う。
老後になって日本に移住するとしら、日本であればどこも住めば都のような気がする。

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