何者かになりたくて
何者かになりたくて、小学校の将来の夢は職業をひねり出した。本当は一番なりたくなかった。
何者かになりたくて、中学校の部活は何があってもやめなかった。実際はやめることが怖かった。
何者かになりたくて、高校の進路は誉めてもらえそうな所を書いた。本当は失敗するのが嫌だった。
何者かになりたくて、大学で話すことを覚えた。自分自身を表現することを。
何者かになりたくて、大学を卒業した私は何者にもなれずさまよっている。
まるで変身して180度ガラッと世界が変わるような何者かに期待していた。特別なにか。そうなるしかないと信じていた。
何物かになりたい。ただそう願ってきたが、結局のところ叶えていない。これが世にいう自分探しといわれるかもしれないが、少し違う。
私が私をわからないのではない。何者かになりたいただそれだけなのだ。何者かになって、この終らないスパイラルを歩き続けたいだけなのだ。