第二章 三河の王、家康 〜松平のパートナーは……どっち?〜
みなさんには、これから「進路」というものを決めるときがきます。
どんな高校にいこうか、どんな大学に入ろうか。スポーツや芸じゅつの道を選ぶひともいるでしょう。
中には、自分のやりたいことを見つけ、高校や大学にはいかない人もいるでしょうし、日本を出る人もいるかもしれません。
自分の道を自分で決めていく。「選たく」していくことになります。
『桶狭間の戦い』のあとの元康も、これからのあなたと同じだったんですね(まったく同じじゃないけど)。
それは、どういうことかというと……。
今川義元という大きな”わく”が取りはずされ、岡崎にもどれちゃった元康。今川家には、義元の子どもで「今川氏真」というあとつぎがいますが、パパほどの力はありません。うん、前より自由だ。
ならば、元康は"選たく"しなければなりません。
いちおう自分たちを守ってくれていた今川に、今まで通りしたがって生きるのか。
それとも、あらたなる別の道をあゆむのか……。
元康は進路をまよいます。
そこへ、織田についていた元康ママのお兄ちゃん、水野信元(〇〇ページ)が、こんな話をもってきたんです。
水野信元「織田信長さまが、元康くんと仲なおりしたがっている」
やってきました、あらたな道。
おじいちゃんのときもパパのときも、てきだった織田家。自分もついさいきん、今川軍として織田と戦ったばかり。
そんな元康に、信長は「仲なおりしよう」と言ってきたんです(戦ってた相手と仲なおりすることを「和ぼく」とか「講和(こうわ)」っていいます)。
信長が元康に声をかけた理由は、
「信長が元康の力をかっていた」
とか
「自分がこれから西をせめて行くとき、東にある三河とは仲よくしておいたほうがいいと思った」
なんていわれてますが、いままでとーっても仲の悪かった織田さんからのさそいに、まよいまくる元康。
ここで信長と仲なおりすれば、とうぜん今川との仲は悪くなります。
どうするべきだ?
今川か?
織田か?
氏真か?
信長か?
今川、織田、氏真、信長、織田今川織田今川織田今川……。
どちらを選たくするかで、家臣の意見もわかれます。
元康の人質時代のおもり役だった「酒井忠次(さかいただつぐ)」という家臣は、
酒井忠次「同じ大名でも、氏真はネコで、信長はトラです。どちらについたほうがいいかなんて、子どもでもわかります!」
と言って、織田となかよくすることをすすめたといいます。
ほかにも、何人かの家臣が、織田と手をむすぶことにさんせいしますが、それには大きな問題がありました。
家臣「ちょっとまってください! わたしたちのつまと子どもは、今川に人質にとられています! 元康さまのおくがた(おくさん)と竹千代さまだって、駿河にいるんです! 今川と手をきり、織田についたことがわかれば、人質たちは全員殺されてしまいます!」
元康のおくさん(築山殿)と長男の竹千代(元康の子どものときと同じ名前)は、まだ駿河にいたし、家臣のなかには、つまと子どもを人質にとられてる人もいました。
織田と同盟をむすべば、人質たちは殺される。
人質たちのために今川との仲をつづければ、松平家はほろんでしまう。かもしれない。
とてもとても苦しい選たく……。だけど、元康は選ばなければなりません。
元康「決めた!!」
元康が選んだ道は、
元康「松平は……織田と和ぼくする!!!」
織田信長という、新しいパートナーの待つ未来でした。
なにかを手にいれるときは、なにかをすてることになる。
これは、昔も今もいっしょなんです。
しかし、勇気をふりしぼってつかんだその手が、天使のものか悪魔のものかはまだわかりませんよね。
ヒントになるかわかりませんが、信長のニックネームには『第六天魔王(だいろくてんまおう)』というものがある…ってことだけはお伝えしておきましょう。
どっちでしょうね?
つづく。
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