砂嵐
大晦日の夜。
尚決心がつかず、私はホームに立ち尽くしていた。
次来る電車に、どうしても乗らなければならない。どうしても乗らなければならない。
私は、あの孤独な家の空気に触れるや否や、サラサラと砂になって風に連れ去られる体を想像した。
いっそ、砂になれたらどんなに楽だろう。
「数年に一度、少しくらい」と人は言う。
ぞっとするほど帰りたくないと震える膝を
持て余しながら足を踏み出した。
全て断ち切りたかった。無かったことにしてしまいたかった。
なぜそこで育ったと言うだけで
そこを訪れる必要があるだろう。それが一体何になると言うのだろう。
なぜ何もなかったように微笑んで
あの人は、私の目を見ることができるのだろう。あの目の奥にあるものは、何だろう。