宣伝会議47期受講生インタビュー:手塚瞳さん

雑誌・Webメディアで競馬に関するエッセイを中心に執筆している手塚瞳さん。
文章を書くきっかけは競馬雑誌のエッセイ賞に応募したことに始まる。彼女の思い描く文章論について話を聞いた。

ー文章を書くきっかけを教えてください

文章を書くきっかけは競馬雑誌で公募していた『Gallopエッセー大賞』です。大賞を獲れたら、賞金20万だと。完全に賞金に釣られて応募を決めました。
競馬場で騎手を追っかける楽しみを描いたエッセイを応募し、大賞を獲得。そこから文章を書くようになりました。

ー大学時代の活動を教えてください。

映画監督になりたくて、大学のサークルで自主制作映画の監督をやっていました。

好きが高じて卒業後も映画制作会社に属していましたが、仕事としては茨の道で。
映画監督になる夢を一度諦め、「何者かになろう」というマインドを持つほど失敗した時に傷つくと感じました。

文章に興味があったというより、『Gallopエッセー大賞』の賞金につられたというのが元の発端です。そのままその面白さにのめり込んで、現在に至ります。

何かを表現することには興味があって、たまたま文章で何かを表現することに夢中になった、という感じです。なので、もしかしたら10年後には違うことをしているかもしれません。でも何かを伝えようという思いはおそらく変わっていないです。それはやっぱりスポーツに限らず、人生の面白い場面を保存して手に取れるようにしておきたいなという思いがあるように思います。映像もそういう思いでやってきたように思います。

ー現在も文章に対する思い入れが強いと感じました。ご自身にとって理想の文章はありますか?

文章はアーカイブ的に歴史を残せるという、素晴らしい力を持っていると思います。
文章を通じて、映像や写真とは異なる質量でその場の空気感や温度感、時代の雰囲気を後世に残せるのではないかと感じています。

憧れている文章は「三島由紀夫 スポーツ論集」という本です。
内容は、1964年に開催された第18回東京オリンピックなどについて記された本で、三島由紀夫本人の感性による状況描写が素晴らしい。到底辿り着けないのですが、「辿り着くべき終着点はここなんだな」と思っています。

無観客で開催された2020年東京オリンピック、報道の方々以外はほぼ参加できなかったことは大きな機会損失だったと捉えています。なのでこれから先、同じような状況に出会えた時には状況描写をリアルに書き残せるだけのスキルをつけておきたいと思っています。

オリパラの馬術会場

競馬でも同じようなことがあります。1999年、競馬のレース「凱旋門賞」で、競走馬エルコンドルパサーが2着になるという当時日本勢未踏の快挙を成し遂げました。
(編集注釈※ 凱旋門賞=世界最高峰のレース。近年では「オルフェーヴル」が2度の2着を記録。)

2023年現在においても、未だに1着になった競走馬はいません。それほど素晴らしい場面だったのに、その当時の熱量を記録するものが簡単にアクセスできるところに残っていません。とても惜しいことをしていたんだと感じます。

タイムスリップできるならば全てを記録したいほどです。だから同じような機会に出会った際には逃さないようにしたいと思っています。

ーご自身の経験論として、今後どのように進みたいなどありますか?
映画監督の挫折から生まれた座右の銘は「3日後の心配しかしない」です。

挫折の経験を味わって、将来的に何者かになりたいというのは明言できない、明言しなくてもいい、と感じたので、今やりたいことに丁寧に向き合っていきたいと思っています。

文責:重松雄太

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