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樂舎配給作品『時々、私は考える』公開への道のり

社長のSです。
映画業界を襲ったコロナ不況を脱し、洋画市場もようやく戻って参りました。
樂舎は年間20本近くの宣伝作品を担っております。コロナを経て邦画、アニメ作品の比率も増えてきましたが、やはり洋画好きの集団としてはうれしい状況です。

コロナで宣伝作品が激減しました。この状況が配給業務への後押しとなり、初めての配給作品はイタリア映画『靴ひものロンド』で毎年携わっている「イタリア映画祭」から選んだ作品でしたが、第2弾は海外映画祭で買い付けようと意気込み、カンヌ映画祭(2023)へ社員を派遣しました。買付担当・宣伝プロデューサー・オンライン宣伝担当(小さな会社なのでひとり3役です)の樂舎一の映画好きです。コンペなど企画ものではなく、マーケット用スクリーンで上映されていた「Sometimes I Think About Dying」 。静かな日常と心の内面をうまく描いた脚本、その主人公を演じ切ったデイジー・リドリー、素敵なロケ地と音楽。それらが彼女を虜にし、帰国後すぐに権利元と交渉に入りました。並行してメインで上映してくれる映画館を打診し、新宿シネマカリテさんでの上映が決定、権利元との交渉もうまく運びました。

「Sometimes I Think About Dying」海外版ビジュアル

地味な作品ですが、映画好きな人たちに確実に届けようという宣伝を展開しました。まずはネガティブな印象を与えてしまう可能性のあるタイトルについて、そのまま伝えるのではなく少し含みを持たせた「時々、私は考える」に決めました。ポスターのデザインを決めるにあたり、本国のメインビジュアルは素敵なデザインですが、デイジー・リドリーの顔が小さくてわかりません。これではデイジーで売りたい意図が伝わらないと私の主張は宣プロに一蹴され、本国のキービジュアルをアレンジしたもので決定しました。しかしこのビジュアルが評判となり、媒体やSNS上でも少しずつ注目を浴びるようになっていくのです。デザイン会社のshedさんのセンスの良さにも感謝です。デイジーの顔をアップにした第2弾ポスターも作成しました。ミニシアター作品でキービジュアルを2種作成するのは冒険でしたが、映画館でのチラシの履けもよい結果となりました。

日本版ティザービジュアル
海外版のデザインをもとにブラッシュアップ。おとぎ話のような映画の雰囲気に合わせ、可愛らしいフレームが加えられました。フレームには映画の冒頭で印象的に登場する鹿の姿も。
日本版メインビジュアル
主演デイジー・リドリーの姿を見せるデザイン。ティザーのフレームをそのままに、海や森いろいろなシチュエーションで繰り広げられるフランの妄想を描いています。フランのまわりに配置された植物との関連は映画のラストシーンで判明します。

いよいよ公開日。一日中シネマカリテさんでの入り状況が気になって仕方ありません。正直金曜日の初日は期待していたほどではなかったのですが、土曜、日曜とうなぎ上りで平日もたくさんのお客様の来場で好スタートとなりました。その後もSNS上で、ハマった、今年一押し、大好きな映画、などの書き込みで客足も途絶えることなく、最終的には全国26館の公開となりました。
すでにU-NEXTでの配信も始まり、2025年1月8日にはブルーレイも発売されます。
そしてananの「稲垣吾郎シネマナビ」では2024年のベストムービーの第1位に選ばれたのです。最高のプレゼントとなりました。

ミニシアター公開の洋画は苦戦する作品が多い中、作品力と好感度が掛け合わされると、ビジネスチャンスはあるものだと再認識できました。今後も良作を私たちのできる範囲で配給できたらと思っております。

来年も樂舎をよろしくお願い致します。


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