オンライン学会準備:その2
ようやくプログラムの大枠が固まり、大会HPに反映させることができました。
当初、リアルな学会開催としては参加者1,300名くらいを予定していましたが、オンラインだとそのあたりが読めないところです。8月7日が「参加(視聴)登録締め切り」となっており、これからさらに周知していかなければなりません。学生の皆さんには1,000円で200以上の講演やポスター(後述)がオンラインで見放題!なのですから、こんなにお得なことはありませんね。会期は8月21日〜23日ですが、オンデマンドで8月31日までは視聴できるようにします(でないと全部を3日間で見られません……)。
前回のメモから進んだ部分を記しておきます。
オンラインでのシンポジウム開催
今回わかったことは、「オンラインで何ができるか」についての意識というかリテラシーがそれぞれで大きく異るということでした。一番、皆さんが困ったのは、数名が集まって行う「シンポジウム」ではないでしょうか。私自身はこれから試すのですが、zoomに仮想ミーティングルームを設定して、なるべくリアルに近い(ただし無観衆)形が良いのではと思っています。仮想のミーティングルームにヴァーチャルにログオンし、その中で、順に座長からの挨拶、講演者の紹介、講演1(プレゼンテーションファイルを画面共有しながら話す)、質疑応答(シンポジウム関係者+αのみ)、講演2、質疑応答……のように進めて、全体をレコーディング、もしくは画面共有の間の時間はレコーディングを止めて、分割したmp4ファイルにするというものです。
このやり方であれば、一人ひとりが寂しく自分一人で講演した動画をアップするよりも、皆で集まって議論を深めることができます。さらに言えば、2時間枠を若干超過してもリアルで行うような制限がありません♫(とはいえ、オンデマンドで観る方がお付き合い下さるかどうかという点もあり……)
もちろんサーバにレコーディングできるようにするには、zoomのアカウントのアップグレード契約が必要です。
オンラインでのワークショップ
ワークショップはむしろ、普段のオンライン会議に近いものだと思います。リアルタイムの時間を設定して、登録した参加者がヴァーチャルミーティングルームにログオンして行うことになります。「グループに分かれてのディスカッションはどうしたらよいか?」という点については、zoomなら「ブレイクアウトルーム」を最初から設定することができるようです。このあたりは、参加者を振り分けたり時間管理をするオペレーターがいた方が楽ですね。そういう意味で新しいビジネスになると思いました。(注:zoomさんの回し者ではありません。今後、新たなサービスが生まれて使い勝手が変われば、いくらでも乗り換えます)
過日、Remoという別のオンラインサービスを利用してみましたが、グループの人数制限が6名という点で問題が無ければRemoもワークショップ用に使えます。こちらは別途後述。
思えば昔、製薬会社のプロパーさんとしての仕事として文献検索やスライド作成(←リアルな35 mmのもの)がありましたが、今なら忙しい先生のためのサービスとして「オンライン学会参加等対応」が成り立ちますね。
オンラインポスター発表は「紙芝居」
いろいろなオンライン系の活動に参加しつつ学ぶ毎日ですが、今のところ、いわゆる「ポスターセッション」をうまく取り回せるサービスは無いように思います。大きな紙に印刷する高解像度のファイルを、最終的にオンライン視聴者がどのようにうまく見られるか、拡大機能など付けても難しいのですね……。
そこで、本学会では「紙芝居方式」にしました。音声なしPPTファイルを提出頂く形式です。視聴者は自分でページをめくって発表(というか、掲載されている資料)を閲覧します。つまり、発表内容は数枚(枚数制限自体は設けていません)のPPTスライドになります。(詳しくは下記リンク先へ)
かつては「一般演題」も「口頭発表」が中心でした。大学院生でも「35 mmのスライド」を焼いて口頭発表を行いました。筆者が35年前に学会デビューしたのは、東大駒場の講義室での口頭発表です。直前に写真屋さんからスライドを受け取って駆けつけました(常にギリギリの生活スタイルは変わらない……)。
その後、10年くらいの間にとくに生命科学系ではポスター発表が多くなり、学会は巨大化する傾向に向かいました。今でも大学内で行われる学会もありますが、大きな会場を借り切って、機器展示なども行うゴージャスな学会のスタイルがどんどん多くなりました。
ある意味、COVID-19のために、無駄なものが削ぎ落とされていくような気もしています・・・
Remoは休憩室に良いかも?
先日、別の学会で懇親会用に800名参加できるRemoを契約したので練習会に参加しました。
このシステムの良いところは、6名までの会議をバーチャルな会議室で行うときの若干のリアル感です(当社比)。ちょっとしたことなのですが、画面にテーブルと椅子が置いてあり、出入りは自由。懇親会用に取り入れようと考えた理由はこの点にあります。ちょうど、宴会場のテーブルを回って知り合いとお話する感覚が確かにありますね。(画像はRemoサイトよりキャプチャ)
その練習会に参加しながら、このサービスはむしろ「休憩室」にまず使えるのでは? というものでした。学会ではポスター会場や展示会場の側に休憩用のテーブルが置いてありますが、研究打合せとして重要です。Remoならふらっと「ちょっと今、Remoに乗っているのだけど、#3テーブルでディスカッションしませんか?」というようなチャットを送って(あるいは予め時間をメールで連絡するなど)打合せを開始できます。Remoのシステムでも画面共有ができるので、unpublished dataなど示しながらリアルタイムにFace-to-faceで話ができます。他のテーブルに誰がいるのかも、丸いアイコンにマウスオーバーすれば名前がわかります。
さらに、企業の就職担当者とのマッチングの面接なども、学会という場を使って行うことができれば良いかもしれません。これはうちの学会では今の所想定していませんが、アドホックにポスドク候補者との面談などにも使えるでしょう。
もちろん、より多数が集まって懇親会的にも使えます。ステージなども設定できるようで、学会の若手の賞の授賞式などを行うなど想定できるかもしれません。
以前、「Remoでポスターやってみたけどあまり感触良くなかった」という話が聞こえてきていたのですが、たぶん画面共有の問題かと思いました。つまり、Remoで(他のオンラインシステムでも)シェアする画面は、印刷を想定して作った大きな(重たい)ポスターファイルには適していないのでしょう。なので、「紙芝居スタイル」のポスターで行うということであれば、ポスターセッション用にも使えるかもしれません。今回はちょっとそこまで前もって想定することが叶いませんでした。
「オンライン学会支援サービス」はビジネスになる!
「オンラインで何ができるか」について、私たちはまだまだ未開の地を手探りで歩いている段階です。また、どこまで慣れたかは人によって大きな違いがあることも感じています。
本学はCOVID-19の対応として「オンライン事務化宣言」を掲げて、授業だけでなく学内会議も徹底して「密」を避け、オンラインで行い、ペーパーレス化も進みましたが、回りを見渡すと必ずしもそうではないですね。とくに臨床系の先生などは時間も限られているので、まだ「動画を収録ってどうすればよいのか?」について戸惑っておられる人も多いように思われます。
つまり、これはビジネスチャンスですね。「学会講演用動画作成サービス」などの小さな会社ができそうです。もちろん、いわゆる学会請負い会社さんもノウハウを蓄積して頂く必要がありますが。さらに言えば、「オンライン審査会請負サービス」なども成り立つ気がします。
COVID-19のために今年は国際学会出席がゼロになり、国内出張もまだ再開できない状況ですが、その間に繭の中でいろいろ考えたいと思います。(下記リンク先Academic Grooveにコラム書きました♫) 画像はその冊子の表紙です。