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オンライン学会開催準備:その1

不肖ながら8月に第50回日本神経精神薬理学会という学会の年会をオーガナイズする大会長の役目を仰せつかっていました。もう3年前に遡りますが、「2020年の大会はオリンピックイヤーだから、東京では学会開催は無理。夏だし、東北の方が涼しい、なら大隅さんが良い」と考えられたのだと思いますが、第42回日本生物学的精神医学会年会 大会長の吉川武男先生および第4回日本精神薬学会総会・学術集会 大会長の吉尾 隆先生とともに、3学会合同年会を仙台で開催する計画でした。

……が、2020年はCOVID-19の影響で東京オリンピックが延期。種々のイベントも中止、延期を余儀なくされる中、この年会は初めてのウェブ開催を選択することになりました。

そもそも、学会(society)が開催する重要な催しである学術集会(大会と呼んだり、年会と呼んだり、名称は種々あります)は、英語なら"meeting"という言葉を使うことが多いことからわかるように「人と人が出会う」ことによって、議論し、情報を得たり、新しいアイディアを発想したりするための機会です。それを本当にヴァーチャルにできるのでしょうか?

ウェブ開催での口頭発表

現在、ウェブ(オンライン)開催について、多数のミーティングが模索中です。講演(口頭発表)については、ざっと以下のパターンがあるようです。

1)ライブ(生)配信開催
2)オンデマンド開催
3)ハイブリッド開催

1)はどこかの会場に講演者が集まり、無観客試合のように予定の時間に講演を行い、その動画をライブ(生)配信するというやり方。2)は事前に収録した動画ファイルをサーバにアップロードしておき、参加者は好きな講演を好きなときに視聴するもの。3)はリアルなミーティングと2)や3)の組み合わせです。さらに応用編としては、事前収録した動画をライブで配信したり、ライブ配信を見逃した参加者がオンデマンドで見られるようにという工夫もあります。

オンライン授業と同様ですが、講演の動画を簡便に作成するには、PowerPointに音声を記録させるか、zoomなどのオンライン会議システムを用いて、画面共有しながら講演を行い動画として記録するなどの方法があります。

どうしても一方向性になりがちというのが、オンライン学会開催の最大の難点ですね……。今回主催する学会では、当初、コメント欄での双方向性も考えましたが、費用対効果の面から諦めました。いちおう、コメントは残せるように仕組んでおり、追って学会事務局より講演者にメールで送ることを想定しています。

ウェブ開催でのポスター発表

さて、より難しいと感じたのが実はポスター発表です。リアルな学会ではポスターを大型プリンタで印刷して、発表日に掲示して、発表時間に訪れた方々と議論する、というのがポスター。とくに、生命科学系の学会で若手の最初の発表はポスターから、というのが定番になっています。

ところが、なにぜ基本、無観客なのでポスターを掲示するしかないのですが、ここで大きな問題が……。

オンラインの講演を見るのも、ポスターを見るのも、視聴者側のインフラに依存しています。PCでもタブレットでもスマホでも見られますが、これらの端末は本来の大型のポスターを見るのには適していません。

そこで、すでに行われた学会では、ポスターPDFファイルの閲覧の際に「ズーム(拡大)」ボタンを付けて拡大して見られるようにしたりという工夫も見かけたのですが、実際にはあまり使い勝手が良くなく、画質も駄目(モニタの解像度に依存)。

とある学会では、PPTファイルに3分までの音声を吹き込むか、3分までPPTのスライドを送っていく動画にしても良い、ということになり、うちの学生たちは気づくと後者を選択していました。最初、「先生、ポスター発表を確認してください」と言われたときは、何のことやらと思いました。

主催する学会では、基本的に「紙芝居」を想定しています。PPTで横長画面でPDF化して用意して頂き、視聴者は手元で見ながら、自分のペースでページを送る、というやり方です。おそらく、こちらの方が画質の問題とファイルサイズの問題の費用対効果が良いものになると考えます。

ですが、双方向性は良くないですね……。しかも、通常、学生さんのポスター発表は研究室で何度か「リハーサル」を行い、そのような経験が研究者育成の教育として重要なのですが、このやり方では、PPT作成部分は指導できても、発表部分は無いので困難です。

ギリギリまでの発表準備ができない……

さて、口頭発表にせよポスター発表にせよ、ウェブ開催の学会では事前に提出する必要があります。これがリアルな学会であれば直前までギリギリ間に合わせていたのですが、例えば8月21日からの学会の分を7月末に提出となります。なんと3週間前……。

生まれたときからPowerPointが存在していた世代の方には、そんな理不尽な……と思うでしょう。筆者もギリギリまで発表マテリアルをいじるタイプですが、初めて学会発表したときはリアルな「35 mmスライド」を使いました。普通は1週間以上前には現像(!)を終えて練習したものでした。

なので、まぁ、今回、提出が事前なのは仕方なく、締切りが前倒しなのだと思うしかありません。

オンライン開催のメリットは?

一方、オンライン開催、とくにオンデマンドならではのメリットもあります。それは、リアルな開催では「この講演が別の講演と同じ時間帯で見られない……」ということが起きがちですが、オンデマンドなら「すべての発表を見尽くす」ことだって可能といえます。ぼーっとしていて聞きそこねた発表を見返すこともできます。

リアルな学会では、その土地を訪れることも楽しみの1つになったりしますが、オンラインではそれは無理。ただし、移動にかかる時間と費用のコストはかからず、週末、寝そべりながら視聴することもできます。

未来の学会開催

「移動しなくて良い」ことや「オンデマンド」のメリットを覚えてしまうと、今後の学会は否応なく「ハイブリッド」に移行していくものと予測します。同時に、どのように「偶然の出会い」のようなことを起こすことが可能となるのか、その工夫については、もっと経験値が必要です。高校時代に文化祭委員をしていた身としては、これからの学会イベントについて模索したいと思います。

懇親会の替わりにミニコンサートを行います♫

さて、上記の年会では2日目の夜、懇親会を地下鉄国際センター駅の2階、「青葉の風テラス」で行う予定でした。

そして、余興として、地元のシンガーソングライター、幹mikiさんのミニコンサートを行うつもりでした。

オンライン開催となった学会ですが、懇親会のミニコンサートはYouTube配信を予定しています♫ 追って詳細をお届けしますが、楽しみにしていて下さい!

最後に、学会で発表する方以外にも視聴のための登録は可能です。心のレジリエンスのために薬がどのように貢献できるか、興味のある方はぜひ覗いて下さい。



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