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レジリエンスについて考える
本日は朝8時からのオンラインイベント。環太平洋エリアの参加者に合わせた時間として設定。つまり、西海岸は前日の午後4時、チリのサンティアゴは夜7時、メルボルンは朝9時で、北京やシンガポールは朝7時なのだ。4時間のイベントなので、終了時間はチリでは夜中の11時になる。
ArcDR3という企て
イベント主催団体は「The Architecture and Urban Design for Disaster Risk Reduction and Resilience (ArcDR3) initiative」で、第一回目のフォーラム名が「New Agendas for Regenerative Urbanism」となっている(ロゴがとてもカッコいい♫)。
米国のUCLAが東北大学の災害科学国際研究所や日本科学未来館と共同で立ち上げたxLABの営みをさらに拡大したものだ。
ちなみに、昨年、xLABの活動に参加させて頂いたのが一つのご縁。このとき、脳科学の立場から「心のレジリエンスに実は神経再生 neurogenesis が大事」という話をさせて頂いたことが、今回の「Regenrative Urbanism」という概念に繋がったとのこと。
今回のイベントの目的
今回のフォーラムでは、災害リスクやレジリエンスを考慮した建築や都市デザインについて議論された。イベントマテリアルより今回の催しのキーポイント2つについて拙訳しておく。
まず、各参加大学のデザインスタジオでは、本プロジェクトのテーマである「再生都市論 Regenerative Urbanism」と、その意義に着目する。世界的なリスクの増大に伴い、建築物や都市、環境をデザインするための新たな戦略の策定が急務となっている。「再生都市論」は、環境・社会・技術的にレジリエンス(回復力)のある都市を目指して、再生的かつ進化的な設計・開発戦略に焦点を当てた適応システムのアプローチにより、未曾有の変化に対応するために構想された。これは、突発的な衝撃や長期的な傾向などの変化にも、レジリエンスのあるデザインが対応し、適応していくという、適応性の複雑な形を実装したものであり、そのためにはレジリエンスの概念を拡張し、ERS(Evolutionary Regenerative System)を構築することが必要である。ArcDR3 イニシアチブの目的の一つは、この概念的なアプローチを協働して開発し、将来のための代替的かつ持続可能な再生デザインモデルの開発のための基礎を作り、変化する都市環境の複雑さに都市デザイナーが備えることができるようにすることである。
もう一つは、世界的な危機によって再定義された学習環境や教育プロセスの変化を認識し、ArcDR3ネットワークを通じたグローバルな共同研究を通じて、参加者が研究能力を拡大する機会を探ることを目的としている。スタジオでの検討を重ねたプロジェクトは、今後の会議で議論されたり、展覧会で展示されるとともに(筆者注:於未来館)、出版物としてまとめられ、一般に配布される予定である。
今回のセッションテーマは以下の3つ。以下、Earth, Wind, and Fire(同名のアーティストがいますね♫)のセッションを視聴し、思ったことを記す。
Panel 1: Earth, Wind, and Fire
Panel 2: Water
Panel 3: Multi-hazard
人間は自然に介入してきた
最初の講演はUCLAのJeffery Inaba先生。ロサンゼルスの大規模な山火事はまだ記憶に新しいが、地球レベルの温暖化により山火事が起きやすくなったことに加え、都市部が近接していることの問題点を指摘された。
脳が大きくなった人間は、道具を作り出し、火を利用することを覚え、その後、さまざまな形で自然に介入してきた。洞窟での暮らしから家としての機能を持った建造物を作った時点で、すでに大きな介入への一歩が踏み出されているし、特定の作物を栽培することは植物の生態を変えている。人々が集まって暮らしたり農地を開拓することは、さらに次の一歩である。つまり、人類は自然に介入し、人間に都合の良い環境を作り出しながら、命を繋いできたのだ。自然の破壊は大昔から為されてきた営みといえる。
ロサンゼルスでの大規模な開発の画像を見ながら、そういえば、どこかで見たような構図だと思い出したのは、Netflixの"Selling Sunset"という番組だ。
ロサンゼルスが舞台で、不動産会社に勤務するエージェントたちの他愛のない日常が繰り広げられる「リアリティバラエティ」というジャンル。中学生の頃に建築家になりたいと一瞬、夢を抱いたことがあり、建築を見るのが大好きで見始めてしまった番組なのだが、次から次へと富裕層向け豪華物件(8寝室、10浴室、数千万ドルなど)のドローン映像や内装を眺めることができる。
その番組の中で、邸宅の開発途中の様子を見た。大きなショベルカーで何千平米もの地下スペースのために土を掘り出していて、スケールが違うなぁ……と感じた。
……今回の講演を伺いながら、人間は自然をねじ伏せながら生きてきたものの、ときどき手痛い目に合うこと、サステナブルな都市デザインという高いレベルの話をブレイクダウンしたときに、どこまで人間の欲望や性(さが)と折り合うことができるのだろう……と考えた。
同様のことは、都市化と感染症との関係についても言えるだろう。都市化によって人間に快適な環境を作り出すことは人間の欲望であり性である。一方で、人々が密集することは病原体にとってまたとない勢力拡大のチャンスになる。
さて、災害リスクを減らす都市開発という面で、どのように自然と折り合うのか、多様なステークホルダーでの議論が大事だと思う。
追って報告記事などが上がったら追記したい。ちなみに、今回のオンラインイベントはzoomベース。UCLAのテックの方がブレイクアウトルームの出入りなど仕切ってくださっていた。