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狩野文庫デジタルアーカイブシンポジウムで学んだこと
12月20日、日曜日の昼下がり、東北大学附属図書館と文学研究科共同主催、国文学研究資料館共催によるオンラインシンポジウムが開催され、500名もの登録者に恵まれました。(当日の資料など下記よりどうぞ!)(追記:講演動画および資料もアップされました♫)
「狩野文庫」というのは、附属図書館の誇るコレクションの1つです。
■狩野文庫データベース
狩野文庫は明治の思想家・教育者として有名な狩野亨吉(かのう こうきち 1865-1942)の108,000点に及ぶ旧蔵書で、哲学をはじめ美術、兵学などあらゆる分野に及ぶ「古典の百科、江戸学の宝庫」として世界的にも知られた資料群です。
狩野文庫データベースは、狩野文庫の和書、洋書、絵葉書の書誌データが含まれています(漢籍や新書などは未収録です)。また、マイクロフィルム化した和書(線装本)のうち、古地図約450点、絵本・絵巻約280点と絵葉書約17,000点の資料は画像も参照することができます。古地図約900点は、平成14年度東北大学教育研究協力基金の助成により作成しました。(附属図書館HPより)
その狩野文庫から232点が、9月24日(木)に国文研の「新日本古典籍総合データベース」で公開されました。(以下は本学からのプレスリリース)
これを受けて、国文研館長のロバート・キャンベル先生をお招きして「日本古典と感染症」についてのご講演を頂きました。
オンラインのイベントのメリットとして、ネットに繋がりさえすれば時間と場所を選ばずにアクセスできるということもありますが、登壇者の生活を垣間見ることができる、ということもあると思います。今回、キャンベル先生はご自宅からのご講演で、背景の本棚には、さらに狩野亨吉に縁がありそうな掛け軸が……。(画像は関係者のバーチャル集合写真です♫)
不肖ながらご講演の後のパネル討論のコーディネータを務めました。なるべくLIVE感があるように、Q&Aから質問を拾ったりし、キャンベル先生も、後ろの掛け軸がカメラに映るように工夫されたりなどされて……。小さなノウハウが蓄積しつつあります。
キャンベル先生のお話の中で、「東北大学の狩野文庫は国文学研究者の憧れで、皆が〈仙台詣で〉をしたと聞いています。私もいつか伺いたい」と仰って頂いたことは光栄でした。
狩野文庫について、パネル討論のトップバッターとして三角太郎情報サービス課長が説明したのですが、改めて、狩野亨吉先生が極めて文理融合的な知の巨人であることを認識しました。キャンベル先生のお話の中でも、江戸時代までの制作物は、書籍や絵画と分けられないものが多いことや、その内容も現代的な分類には当てはまらないことを述べておられました。「版木」という印刷の仕方が、文字も絵も自由に配することができるという特徴を活かした出版物だったということですね。
そういえば、以前に読んだ隠岐さや香先生の『理系と文系はなぜ分かれたのか』の中に、日本では明治期の急激な近代化の中で進んだことが述べられていたことを思い出しました。
三角課長が「デジタルアーカイブの〈はしり〉はマイクロフィルム」という説明をしたことに対して、聴衆から「マイクロフィルムとは?」という質問があって、図書館職員に走って狩野文庫のマイクロフィルムを持って来てもらって、総合討論の際に見てもらいました。
上記がわかりやすい説明と思いましたので引用しておきます。下記は三角課長のプレゼン資料からの借用です。
マイクロフィルムリーダーを使って、拡大しながら写っている資料を読み取るシーンは、私は最近では『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』という映画で見ました。(拙ブログ)
さて、キャンベル先生の「日本古典と感染症」のお話に戻ると、古典籍の中に描かれた「疫病」について、日本ではきわめて「共存的」に捉えられているという点が、改めて印象的でした。本学の押谷 仁先生が拠点長を務められる「感染症共生システムデザイン学際研究重点拠点」の理念とも重なるものと思いました。
キャンベル先生の同タイトルの近著も角川ソフィア文庫より出版予定で楽しみです♫ 豊かな古典籍の世界に触れることができた2時間でした。