仙臺俳句会2024(10句合同作品集)
仙臺俳句会(せんだいはいくかい)は、仙台の街なかで、隔月第3土曜日の午後に開催(対面句会or夏雲システム)している超結社句会です。
2017年6月に発足し、今年6月で8年目を迎えます。
句会名は、塩竈市在住の俳人・渡辺誠一郎氏に命名いただきました。
「俳句会」とついていますが結社ではありません。
会員制ではなく、1回ごとにXで募集し、エントリーを受け付けています。ご参加者は毎回十数名で、若手が多く合評型式による句会で、自由に発言できる雰囲気を大切にしています。
6号目となる10句合同作品集「仙臺俳句会2024」は、シンプルさに立ち返りたくなって挿絵はなしとしました。
このシンプルは、単純とか簡単とかいうものではありません。
まど・みちおの詩「リンゴ」に書かれたリンゴのようにまぶしさに満ち溢れ、言葉が言葉として満ち足りているということです。
2024年4月𠮷日
編集発行人 小田島 渚
■目 次
ぽえむぱろうる 水月 りの (小熊座)
狐福 とみた 環 (銀化)
祈りの姿 酒井 春棋 (いつき組)
避暑の朝 田口 鬱金 (むじな)
夕燕 うにがわえりも (麒麟・むじな)
目をしまふ 加能 雅臣 (河)
花束 佐復 桂 (蒼海・塔)
移る 有川 周志 (むじな)
ささめごと 村山 恭子 (菜の花・楽園)
オハラ★ブレイク 佐藤 涼子 (澤・蒼海・塔)
勾玉 武田 菜美 (銀化)
風狂 渡辺 誠一郎 (小熊座)
グラス 浅川 芳直 (駒草・むじな)
うちけぶる 小田島 渚 (銀漢・小熊座)
ぽえむぱろうる 水月 りの
どちら側のドアからもうさぎ現れぬ
レントゲン写真の骨に冬日差す
アメリカングリルを包む朧月
花冷えの人魚には無き足の爪
向日葵や何も気づかぬあの男
蜩や水に名のつく淋しさよ
線路脇風葬のごと泡立草
幻のぽえむぱろうる小鳥来る
冷まじやドローン・AI・QR
一面の白より白鳥生まれけり
狐福 とみた 環
蓮骨の折れゆくことも日の情け
浦寒し風を呼ぶにも古き名を
凍星を辿りし指の点りけり
老梅の彫らば仏や焚かば灰
如月の炎にうろくづの白濁り
狐福春日に拾ふ貝釦
鏡より水面へ移る花衣
篠の子の薄暗がりや産屋跡
筒姫やたはむれに切る砂の堰
雲の嶺今泣けと血の巡り来る
祈りの姿 酒井 春棋
避難所の犬あやしたり年新た
雑煮汁食べたし避難所にひとり
初日記なゐのことから始まりぬ
おほなゐや元日婚を言祝がむ
初詣人は祈りの姿して
免れて父帰宅せし三日かな
冬萌や回復しつつある父と
復興を祈り雪達磨作らう
雪達磨能登の方角向いてをり
断水を終へてコインランドリーの春
避暑の朝 田口 鬱金
蜂蜜に砂糖こぼるる避暑の朝
柵に指並べて鷺の脚眺む
三日月や匙もてなぞる瓶の縁
手から垂れ花束歩歩に照り翳る
鰭酒の青き火や雨降りやまず
冬萌に石塀の猫降り立てり
御降を見てゐれば湯の沸きにけり
白鳥の寄る一隅や宵の湖
天井を陽光の這ふ冬の昼
銀紙に指仄赤く照れば雪
夕燕 うにがわえりも
菰巻を迫り上がりたる朝日かな
低音部うぐひす餅に教へけり
ばかでかい春菊天や句会前
猫の恋休憩させるおじいかな
仁丹をつぶして遊ぶ春の昼
シェアうれしたのしや蛍烏賊のパスタ
京焼や想像上のたんぽぽサラダ
チューリップほつほつほつと詩嚢かな
夕燕言付の本速やかに
佐保姫と食ふいなり寿司果ては逗子
目をしまふ 加能 雅臣
捨て時を過ぎし雑巾初御空
雪吊と雪吊風を争はず
寒月や首のうしろの腥き
畳まれし毛布の角のタグ光る
検閲を抜けたる手紙花野菜
春の雨ブルーシートに目をしまふ
眼球のもとの静寂や椿餅
ふらここの平らな影の行き戻る
自走する柩を先に告天子
筆跡に紋白蝶の匂ふかな
花束 佐復 桂
雪隠の鍵のゆるさよ菊日和
月待つや横笛の穴探りつつ
茶の花よ裏漉しさるるかに蕊よ
蒼天を蹴り上げ鷹の戻り来る
花束のやうに寄り添ひ初写真
ポタージュのこつくり甘き余寒かな
瀬音とは佐保姫の梳く櫛の音
寿司握る指ふくふくと涅槃西風
青芝を蹴りて演武の一さらひ
すれ違ふ跣すみずみ砂まみれ
移る 有川 周志
三日月や水たまりからタイヤ痕
秋の雨微かにうねる椅子の列
手の平と甲で毛布を撫で回す
二合目を足音めく落葉に追われ
雪もよい教授が骨を折っていた
悴みにスーツケースを運ばせる
丁寧なセロハンテープ冬夕焼
チェックイン時間を問うて余寒かな
水彩の色から色へ移る春
三月に嫌いな事をやっている
ささめごと 村山 恭子
春の月野良猫集ふ六丁目
ゆびきりの相手忘れし桜貝
佐保姫の裾踏むやうな花の雨
小町てふ丸き島あり風涼し
老鶯や巌に彫られし阿弥陀仏
吾は吾ちちろはちちろ鳴いてゐる
さよならは萩の小径で告ぐるべし
街道の霧の帳のささめごと
猪のぬた打つ月の潦
向学の遺言状や鷹渡る
オハラ★ブレイク 佐藤 涼子
葉柳の風や湖岸のロックフェス
岩魚焼く腹に竹串透けたるを
湖へ浸す手噛みし蟻もろとも
払ひたりギター弾く手の火取虫
ステップ踏む蚊取線香腰に下げ
絶叫やリストバンドに拭ふ汗
指笛へ掲ぐるギター熱帯夜
Tシャツを振りて退場ギタリスト
流木に支ふるタープ月涼し
吸ひさしの煙草に大蛾焼きにけり
勾玉 武田 菜美
初鏡華眼華髪と言ひなして
触れ合へば弾ける湯玉猫の恋
先んじて落輝に染まる朴の花
雨脚に絡む雨脚太宰の忌
蛸足配線真西日にのたうちぬ
迷走がお好き会議も台風も
菜を間引く勾玉のごと身を屈め
深吉野を心に桜落葉踏む
一つ家に違ふ木枯し聞く人と
冬萌や誤植紛れてゐるもよし
風狂 渡辺 誠一郎
蠕動のわがはらわたのお元日
亡き犬の二月の空に吸われけり
風狂と仕事始と同衾と
梅咲くや母の遺影に鳥一羽
さびさびと仙台堀の余寒かな
一本のナイフ立たせる行々子
青空や母に一つの夏帽子
釣石は耐えて堪えて夕かなかな
死ぬ前の景色の続き夢はじめ
御さがりや見知らぬ猫が指を噛む
グラス 浅川 芳直
御降の丸一日を点しおく
春の水眼が遡り遡り
草野球花の終りを見てゐたる
甘酒をグラスに風を家中に
デザートの枇杷の褐変昼深し
だんだんに祭を前の大通り
はためいて読めるクレープ法師蟬
一頭の牛が秋気へ首を出す
刈田焼く煙出自を呼びにけり
一人おくれ枯園にきく汽笛かな
うちけぶる 小田島 渚
馬の背の御降白くうちけぶる
倒れたる櫂一本にある余寒
冬萌の駅舎泣き止むまで側に
パンを切るあはひ雪崩の音を聞く
雛の間の闇や脳波に山と谷
入学の窓に子鬼の顔のぞく
ひねもすの甘茶びたしの仏立つ
夏蜜柑病むひとは窓辺を愛す
雉子鳴くや飛び石にある行き止まり
いつか撒きし種より今日の春の虹
■仙臺俳句会2024(10句合同作品集)
年1回の発行でご参加者の有志による10句合同作品集です。当句会に出句した句に限らず自由(既発表可)。一度でも参加いただいている方ならどなたでもご参加いただけます。
■消息
「俳句四季」(2024年4月号)句会拝見に掲載いただきました。
■ダウンロード版 A5判20枚
小冊子としてプリントする方法
①Adobe Acrobat Reader DCでファイルを開き、印刷をクリック。
②ページサイズ処理のなかに「小冊子」があるのでクリック。綴じ方を「右」と設定して、「印刷」をクリック。
※Adobe Acrobat Reader DCは以下URLから無料でダウンロードできます。
説明書きなどをよくお読みになって行ってください(ダウンロード後のパソコンおよび周辺機器の不具合などについて当会は責任を一切負いません)。
https://get.adobe.com/jp/reader/?promoid=TTGWL47M
■ネットプリント
セブンイレブンのネットプリント配信中(2024/4/21~4/28)
プリント予約番号:TTBMQ78Z
設定は「A4、小冊子(右とじ)」で400円です。設定しないとA5で20枚プリントされてしまいますので、ご注意ください。
■一句選および一句選評の募集!
冊子のご参加者以外からの一句選(選評は任意)を募集しております。
各作品10句から1句ずつ選び下記メールアドレスまでメールください(書き方はnote掲載の形式をご参考になさってください)。いただいた1句選は本noteに更新していきます。なお全作品からでなくてもいいです。1句から受付けますので、お気軽にご参加いただければ嬉しいです。
〈送信先:sendaihaiku★gmail.com(★を@に変えて)〉
■仙臺俳句会2024の一句選集
【2024.4.27更新】一句選集(仙臺俳句会2024)|仙臺俳句会(せんだいはいくかい) (note.com)
■仙臺俳句会2023
仙臺俳句会2023(10句合同作品集)|仙臺俳句会(せんだいはいくかい) (note.com)
■仙臺俳句会2023の一句選集
(2022.4.17更新)一句選集(仙臺俳句会2022)|仙臺俳句会(せんだいはいくかい) (note.com)