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ジェンダー論公開講座「私たちの政治と暮らし」【イベントレポ】

さまざまな社会課題をジェンダー視点で読み解く「ジェンダー論講座」。女性の政治参画を考える講座を実施しました。

講師は、東アジアにおける女性の政治参画やクオータ制などを研究している、お茶の水女子大学 教授でパリテ・アカデミー 共同代表の申 琪榮(しん きよん)さん。


女性の政治参画の「今」

まずは、日本や宮城県、仙台市の今の状況を確認しました。
・衆議院女性比率 10.3%(世界平均26.9%)
・宮城県議会の女性比率 12.1%(全国平均14.5%)
・仙台市議会の女性比率 27.3%(政令指定都市平均22.9%)
※講座実施時

仙台市議会の女性比率は、2023年の市議選で30%近くに上昇。「30%」は、マイノリティが意思決定に影響力を及ぼすようになる必要最低限の数字と言われています。

政治は自分が参加しなくても自分に影響が及ぶもの。政治の一番大きな役割は『資源の再配分』で、みんなの税金をどこにどのくらい使うか決めること。使い道を知ったり、自分たちで決めたりしたくありませんか?」と申さん。

講師の申 琪榮さん

女性が政治に参画すると、社会はどう変わる?

一見中立に見える制度に「男性基準」「富裕層基準」などのバイアスがあることも。さまざまな人が暮らす社会だからこそ、政策にもいろいろな意見が反映されなければ「誰もが暮らしやすい社会」は実現しません。
女性が政治に参画することで、どんないいことがあるのでしょうか?

  • 政策の変更災害時の危機対応が柔軟になる

  • 法律(家族法、DV法など)にジェンダー視点が取り入れられる

  • 政治家の背景が多様化することで、政治に関心を持つ人が増える

  • ロールモデルが増え、少女たちの未来の選択肢が広がる

  • 軍事的予算が減少し、戦争や紛争が減少する

これらは、理想論ではなく実際に世界で女性議員が増えた結果起こったこと。自分が立候補できなかったとしても、候補者を応援するなど、有権者としてできることはたくさんあります。

現状を変えるには?

後半は参加者からたくさんの質問が寄せられ、活発に意見が交わされました。

投票率を上げれば民意反映につながる?

投票率は大事だが、低さを招く原因は政治にある。「なぜ投票しないか」は世代によって違う。例えば若者の政治参加を促すために若者の候補者を立てるなど、それぞれに届くメッセージが必要

電子投票ができるようになれば投票率は上がる?

電子投票は、選挙結果を否定したい人の材料になる危険性もある。まずは誰にとってもアクセスしやすい選挙にすることが大事。期日前投票の期間を長くする、住民票を移せていない人が多い4月の選挙を他の時期に変える、などできることはたくさんある。海外では候補者の名前を書くのではなく、番号や記号で投票できる国も。

女性の政治参画が進まない日本。世界で広がるクオータ制のメリットは?

世界でクオータ制が広がったのは1990年台末~2000年にかけて。導入によって女性と男性それぞれに候補者の一定数が割り当てられ、票を獲得するために各党が多様な候補を立てることにもつながっている。日本は世界に先駆けてマドンナブーム(1989年の参議院選挙で、土井たか子氏が党首として率いた社会党(現社民党)が大勝。多くの女性議員が誕生した)が起こったが、一過性に終わった。

日本では教育現場で政治を語れない。世界は?

海外では政治を語ることが日常。メディアも沈黙しないし、学校でも職場でもタクシーの中でも政治の話をするし、選挙はお祭り。社会全体の空気が影響する。日本では「学生が政治に巻き込まれるのを防ごう」という空気を感じるが、大切なのは個人が判断できる能力を培うこと。政治の中身ではなく、普段の生活で「市民(有権者)になること」を教えることが大事

当日の会場の様子

市民の暮らしを知っている人の中から、政治家が生まれてほしい。既得権益を持つ人は今の制度を変えたがらない。政治を動かすのは市民です!」と申さん。

あなたは、どのように政治に声を届けていきますか?