せんだい女性リーダーフォーラム「わたしたちがこのまちを創る」【イベントレポ】
毎年3月8日は国連が定めた「国際女性デー」。「広く女性の社会参加と地位向上を呼びかける日」として、世界各地でジェンダー平等の実現に向けた様々な催しがおこなわれます。
国際女性デーに合わせ、組織、地域、社会をよりよくするために行動している女性たちとともに、仙台の未来を考えるイベントを開催しました。
はじめに
イベントの冒頭、郡和子仙台市長が「目まぐるしく変化する社会で、持続的発展を実現させるためには、多様な人たちが、その人らしく能力を発揮できる環境を整えることが重要。今日のこの時間に、まちづくりに必要なこと、それぞれができること、次の世代に手渡していくべきことを皆さんで感じていただき、それを発展させていっていただきたい」と参加者にメッセージを送りました。
キーノートスピーチ「持続可能な社会とジェンダー平等」
続いて、SDGsビジネスの第一人者として活躍されている、株式会社クレアン 代表取締役会長の薗田綾子さんにお話しいただきました。
薗田さんのプロフィール
自立して前向きな母から「人のお役に立ちなさい」と教えられてきた。就職した会社でジェンダー不平等に直面したり体を壊したりした体験から、サステナビリティやジェンダー平等に関心をもつ
SDGsが生まれる前から、サステナビリティの観点で企業をサポートしている。企業が変わったら社会は大きく変わるが、最初はなかなか仕事にならなかった
代表理事を務める公益財団法人みらいRITAでは、全国の様々な団体とともにジェンダー平等を推進するプロジェクトを展開。それぞれが点でやっていることを線でつなぎ、シナジーを生み出したい
ジェンダーをめぐる日本の現状
2023年のジェンダーギャップ指数は146か国中125位。経済と政治分野のスコアが特に低く、この2分野には新しい意思決定層が必要
SDGsの17目標の中で、日本が特に遅れているのが目標5の「ジェンダー平等」。持続可能な開発目標の前文にも書かれている「ジェンダー平等」に取り組まなければ、経済・社会・環境の問題は解決しない
日本の課題は男女の賃金格差や、無償ケア労働が女性に偏っていること。無意識の偏見は企業内にもある。このままだと日本から、地方からも、若い女性が出ていってしまう
世界は「ジェンダー平等」をめざして、構造そのものを変革しようとしている。一方、日本は女性を対象にした「女性活躍」。女性の頑張りに期待するだけで構造には手をつけないので、グローバルで通用しない
今日は「バックキャスティング」(※)の思考法で、「ジェンダー平等」をはじめ、SDGsのゴールが全て実現した未来を皆さんと描いていきたい
※バックキャスティング:複雑な問題が全て解決された未来の理想的な姿(ありたい姿)を描き、そこを起点に実現するためのアクションを考える発想法
トークセッション
仙台の企業や団体で活躍する4名の女性リーダーが、リーダーの可能性や仙台の未来について薗田さんと語り合いました。
リーダーへの道のり
門脇:かつては女性が働き続けることが難しい会社だった。でも、仕事は楽しくやりがいもあり、チャレンジさせてくれる会社でもあった。会社も私も目指す姿を実現しようと変わる体験を積み重ねて今がある
村上:就職氷河期にパート職員として入社。約15年間働き、正社員に。今の自分を全く想像していなかった。昔の自分には「声をかけてくれた人ときちんと付き合うと、意外と大丈夫だよ」と言ってあげたい
柴田:東日本大震災を体験し、「人の役に立ちたい」「成長したい」と思って幼稚園の役員を引き受けたのが始まり。もう一段高い景色を見たいと思い、中学校のPTA会長に
沼里:復興支援の縁で来た仙台が大好きになり、自分はここで何がしたい?に向き合ってきた。声に出して動いていると、価値観や思いを共有できる仲間が自然に集まってきた
女性リーダーの可能性
門脇:女性が社会で活躍し続けるために女性特有の健康課題への関心を高めるフェムテックイベントなど、女性発案の事業を展開してきた。リーダーの役割は、スピード感を持って思いを実現すること、賛同者を増やすことだと思う
村上:会議では現場の意見を代弁するようにし、みんなに気持ちよく働いてもらえるよう言い方を工夫している。「パートさん」とくくられてモチベーションが下がる気持ちが分かるから。「ロールモデルがいないから、何をやってもいい!」と思っている
柴田:働く母親の負担になるため、ベルマーク収集や文化祭のバザーをやめた。気になるのはシングルマザーや子どもの貧困。部活の道具を揃える費用や遠征費が出せず、あきらめてしまう子どもたちの姿を目の当たりにし、PTAの費用で部活支援を始めた。やるべきことを取捨選択している
沼里:背中を押してくれるのは、ダメと言わない上司の存在。チャレンジするための環境を作ってくれる上司が、私自身のリーダーのモデルにもなっている。「決める・動く」に参加し、自分の資質の理解や他の受講者との会話を通して自己対峙できたこともよかった
薗田:昭和の組織のリーダーは「三角形」のトップにいる人だったが、今は共感でつながる「丸い」関係をつくる人が求められるとも言われる。4人が示しているようにリーダーシップは多様。そして、リーダーの仕事のひとつが、ビジョンを描いてルールを見直し、変えること
わたしたちがこのまちを創る
いま気になっている課題や力を入れていきたいことを出し合いました。
門脇:若手の働き方やジェンダー観が大きく変化したことに会社が対応しきれてない。自分たちの価値観を見直す必要がある。変わったら本当はこんなに良くなるという具体的なビジョンが大事。選ばれる会社でいるために、 対話を続けていきたい
村上:測量設計業界にいると、「女の子なのにすごい」と言われる。その目線を変え、女性や若い人に選ばれる業界にしたい
柴田:中高生の居場所がない。自分が必要とされている感覚が大事だと思い、夏祭りに巻き込むなどしている
沼里:若い人と高齢者がつながる場を作りたい。関係を築くには時間がかかるが、「楽しく」をキーワードにつながれるのではないか
最後に、これからの仙台への思いをフリップに掲げました。
門脇:「女性が生き生きと輝き活躍する日本一のまち」
村上:「”ゆるっ”とつながりあえる」
柴田:「人間関係における環境が整っているまち 住みよいまちへ」
沼里:「課題解決ではなく課題に手が届く 笑顔づくり」
薗田:4人に共通しているのは、ビジョンとパッション。参加者の皆さんともこのまちの未来を楽しく考えたい。未来をつくる鍵は皆さんにある
どんなまちにしたいか?そのためにわたしは・・・ ~2030年の仙台を見据えて
女性リーダーの話を聞いた後は、参加者それぞれが未来のまちの姿を描き、そこに込めた思いを話し合いました。
若い世代の女の子たちが希望を持って暮らせるまち
市議会議員の男女比50:50をめざす
困りごとがあっても困らないまち
年齢や職種を問わず、集まれるネットワークがたくさんある
子どもたちの夢を形にできるまち
子どもたちが自分の可能性を見つけて地域に根ざしていける
いつでもやり直しがきく、すべてがチャンスにつながるまち
安心して自分の生き方を選べるまち
どこにいても働ける、どんな環境でも働ける
単身者が安心して部屋を借りたり、入院できたりするまち
地下鉄を活用し、にぎやかなまちに
未来を思い描き、実際にやってくる未来として記憶に定着させることを、薗田さんは「未来の記憶」と呼びます。「思い描いても、行動につなげなければ何も変わらない」とも。
みなさんはどんな未来を創りたいですか?
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