【気づき】Vol.0830(2010年10月31日発行のブログより)
村上春樹『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』。
本書はAmazonで購入した。
ほぼ毎日Amazonで買い物をしているが、書斎にいないことも多い。
マンションのコンシェルジュが、
20時過ぎに僕がカフェから戻ると、ニッコリ笑って、
Amazonから届いている箱をすでに手に持っていた。
ニッコリというのも上品なニッコリだ。
これは、うれしい。
僕がいるこのマンションは、
匿名制でルームナンバーのみでやり取りが交わされる。
フロント運営だけですでに⼀つの会社が入っており、
5つ星ホテルを凌駕する対応だ。
付かず離れずの接しかたと、一人ひとりの性格も含めて把握されている。
たまにこれをスタンダードと思って、
⼀歩外に出ると愕然としてしまうような、幻想の世界だ(笑)
というわけで、待ちに待った本も、
それを手渡してくれる人が好きな人か否かで、味が変わってくるものだ。
500ページ超ある本書は1997年〜2009年の、
村上春樹インタビュー集だ。
僕はインタビュー集や質疑応答集が好きだ。
もちろん、小説もいいんだけれど、
その小説を書く人のニュートラルの状態を知りたい。
好きな人であればあるほどに。
表紙もすばらしい。
パリで版画技法を極めた画家・長谷川潔の『⽇蝕』だ。
最初はマンボウの顔のようにも見える幻想的な絵画だ。
村上春樹さんが言っていた中で、僕が印象的だったことがある。
村上春樹さんは、早稲田大学在学中に、
学生結婚して生活のためにジャズ喫茶を経営する。
その中で膨大な数のお客の話し相手になってきた。
中にはたちの悪いお客も酔っぱらいもいた。
いろんな人生を歩んできた人たちが集って、そして話し相手になった。
それがある日突然、吹っ切れて小説を書く。
いきなり群像新人文学賞を取る。
『風の歌を聴け』だった。
喫茶店経営時代に、余りにも多くの人たちの話を聴いたから、
今は本当に大好きな人とだけ時間を割いて会っている、という。
なんて素敵なんだ。
僕は自分の人生を被らせた。
コンサルタントして、
気の遠くなるような人たちと密室でエンドレス状態で、
ひたすら人の話を聴きまくった(ヒアリングと呼ぶ)。
何気ない会話を繋ぎ合せて、
事実を浮き彫りにしていきながら仮説⇔検証を、
与えられた期限の中で極限まで繰り返す。
大好きな作業だった。
というより、その作業の間は疲れなかった。
でも、8年近くそれを繰り返していると、吹っ切れた。
きっかけは、ない。
突然、吹っ切れた。
限られた人生は、
たくさんの人と会うためにあるのではないのだ。
大好きな人と、繰り返しできるだけ多く会うためにあるのだ。
大好きな人の話をたくさん聴くためにあるのだ。
村上春樹さんが初めて小説を書いたのは29歳。
一生分の出逢いはすでに30歳までに済ませておくのだ。
よく考えてみれば、30歳までに出逢った人で人生は構成されている。
追伸.
ノーベル⽂学賞、ぜひ、受賞していただきたいです。
...千田琢哉(2010年10月31日発行の次代創造館ブログより)
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