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【気づき】Vol.1136(2011年8月12日発行のブログより)

アキレスと亀。

北野武という人は、本当に天才かもしれないって感じたのは、
今から10年くらい前だろうか。

高校生や大学生の頃はまったく理解できていなかった。

単にギャハハ・・・とテレビの前で笑っていただけだった。

僕は漫才というのは、
真の頭の回転力が試される実力テストだと思う。

なぜなら、模範解答が⼀切通用しないからだ。

バカウケしたまったく同じネタを、
別の場所でやったらシーンと静まり返る可能性は高い。

それどころか、タイミングが1秒ずれたらもう使えない。

つまり、その瞬間その瞬間で判断していかなければならないのだ。

準備のしようがない。

換言すれば、24時間365日すべてを準備に充てていなければ、
判断力は鈍るだろう。

まったく同じことを口にしても、
尊敬される⼈もいれば顰蹙ひんしゅくを買う人もいる。

それは状況判断力の違いなのだ。

準備してきたものを披露した漫才師はウケなくなってしまった。

人生すべてで勝負している人だけが評価されるのは、
どの業界でも同じだろう。

状況判断力を養っていくためには、

1.厳しく愛情深い母親

2.絶望と強烈なコンプレックス

の⼆つが必要だと思う。

1と2を兼ねた人が状況判断能力を磨いて、
将来天から授かった何かで影響を与えていくのではないだろうか。

『アキレスと⻲』

ご存知のように2008年公開の邦画。

売れない画家の生々しい生涯を描いた作品としては、
アメデオ・モディリアーニを描いた、

『モンパルナスの灯』

を真っ先に思い出す。

芸術家の世界って本気で⾜を踏み入れたら悲惨だ。

だって、みんな自分のこと天才と信じて疑わない連中が、
それぞれマイペースで好き勝手やってるんだから。

不退転の意志で後戻りできない状態。

だから、この映画の中でも自殺者が次々に出てくる。

関わる人も結婚相⼿も人生を棒に振る覚悟が必要なんだ。

映画監督なんてのもモロにそうなんだけど、
ある意味画家・作家・作曲家といった、
人によって評価が大きく分かれる藝術の世界で成功しようと
思ってしまうのは、
プロスポーツ選手を目指すより周囲を不幸に巻き込む可能性が高い。

江⼾時代の仇討ちのように、
親戚縁者を何⼗年もかけて巻き込むような⼀大事なんだね。

お笑いの人でお金持ちになった人が、
映画を作ってみようとする人は多い。

それはそれで自分の勝手であり、他人にとやかく言われる筋合いはない。

だけど、北野映画は本当に面白いなって思うよ。

余計なセリフがないのが特に好きだ。

絵画でいうところの白紙の美ってやつだね。

僕にはよくわからない、
いろんな権威あるタイトルなんてどうでもいいんだけどね。

追伸.

藝術界のタブーに、いくつか触れられていましたね。

『モンパルナスの灯』

と同じ部分もありました。

さすがです。

世の中で見過ごされがちな、

「いじめ」と「差別」

を見事にキャッチして執拗に表現されている。

卓越していますね。

 ...千田琢哉(2011年8月12日発行の次代創造館ブログより)

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