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【1%ノンフィクション】Vol.0884(2010年6月23日発行のブログより)

知らないはずなのに。

また謎の手紙だった。

乙と名乗る女性からだった。

乙はいつも書籍についてコメントをくれる。

しかも出版していつも1週間以内に速達で届けられる。

名前は書いてあるが、住所が書いていない。

消印もいつもバラバラだった。

あるときは都内、あるときは、湯布院、またあるときは那覇だったり
旭川だったりした。

しかも、いつも筆で

ここがよかった!

という短いコメントが大きな達筆な文字で書いてあるだけなのだ。

今回はこうだった。

『20代で伸びる人、沈む人』よかったです。
⼀番よかったのは、オビです。
伸びる20代は、陰口を言われる側。
沈む20代は、陰口を言う側。
運がよくなるには、
できるだけたくさん陰でボロクソに言われることですね。
運が悪くなるには、評論家になって陰でできるだけたくさんボロクソに
言うことですね。」

そしていつも追伸が書いてあった。

いつも、追伸のほうが長かった。

追伸こそが、本当のメッセージだった。

甲はこの追伸のメッセージにいつも燃えた。

そして早朝4時過ぎの青山通りの交差点で信号待ちをしているときに、
夜明けに映える六本木ヒルズに魅了されながらある誓いをした。

「顔も知らない乙のために、続編を書こう」

3分後、部屋に戻って30時間ぶっ続けで続編を書いた。

編集長にそのままメールした。

2分後に返信が届けられた。

「お待ちしておりました。これでいきましょう!」

同時に、乙の顔が浮かんだ。

知らないはずなのに。

...千田琢哉(2010年6月23日発行の次代創造館ブログより)

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