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【1%ノンフィクション】Vol.0625(2009年10月7日発行のブログより)

あなたが⼆⼈いたらいいのに・・・

⼄は囁いた。

なんばパークスのステップガーデンでは
様々なアトラクションが繰り拡げられていた。

その喧噪の中、甲は⼄の声がよく聞き取れなかった。

「え?今、何て⾔った?」 間抜けな顔を⼄に向ける。

「何でもない」

⼄は明るい笑顔で答える。

甲は⼄の瞳がいつになくきらきらと輝いているのが印象的だった。

甲は⼄がいつになく機嫌がいいな、と感じた。

⼥性はすべて天の邪⻤なのよ。

8つ年下のキャビンアテンダントからピロートークで教わったことが
甲の頭をふと過った。

嬉しいときには不機嫌に⾒せる余裕があり、
逆に不機嫌なときには気味の悪いほどやさしくなれる。

⼥性が無⼝になったらそれは何かが起こっている証拠だ。

それが⼥性だ。

男には⼆通りしかいない。

「あなたが⼆⼈いたらいいのに」

と⾔われたことのある男と⾔われたことのない男。

浮気は男の甲斐性だと誰かが⾔った。

しかし、浮気したことのない男というのは意外にも多いから
世の奥さん⽅は安⼼していい。

正確な統計があるわけではないが、
たぶん⾵俗などを除けば過半数の男が浮気などしたことがないだろう。

⼄は崇拝していたある四柱推命の巨匠が断⾔していたひと⾔を思い出した。

愛⼈のいない⼈で成功した⼈はいない。

浮気をしたことのない男は誠実なのでも妻⼀筋なわけでもない。

単にモテないだけだ、と。

相⼿の⼥性にしても
妻⼦ある上に魅⼒のない男に関わっている時間などない。

⼈間ではなく他の動物であれば、
ひょっとしたらその男は⼦孫が残せなかったかもしれない。

当たり前だが、モテない男は浮気の⼼配もない。

モテない男の勘違いの⼀つに
「俺は浮気したことがない」 という⾃慢がある。

浮気しないこと⾃体はプラスでもマイナスでもない。

⼥性にとって世の中には死ぬほどキスしたい男と
死んでもキスしたくない男しかいないのだ。

⼄も他の男からは誰もが⼀度は抱いてみたいと夢⾒られていた⼥性だった。

「⼄が⼆⼈いたらいいのに」

⼄を知る男たちはそう叶わぬ夢を⾒ながら
街中で似た髪形の似た服装の⼥性を⾒かけると⽬で追うのだった。

⽇付が変わり施錠しなければならない、
パークスの警備員が遠慮がちに甲と⼄に懐中電灯を向けた。

警備員は振り返った⼄の美貌に⼀瞬怯んだ。

同時に
「何でこんな美⼈が・・・隣の男はいったい何者だ︖」 と顔に書いてあった。

...千田琢哉(2009年10月7日発行の次代創造館ブログより)

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