失恋を乗り越えて、今が人生で一番楽しいと言えるようになった話
久々に、男性と二人で食事に行ってきた。
気心知れた先輩や同期とばかり飲む日々が続いていたので、気を遣って食事をするってこういうことだったな、と懐かしくなった。
その場が楽しくなるように心がけていたけど、会話が続かず、シーーンとしてしまい、あまりにも気詰まりだったので、今が一番人生で楽しいと思っている、という話をしてみた。
これは嘘偽りなく、本当にそう思っている。
でもそう思えるようになったのは手痛い失恋を乗り越えたからだ。
1年前、大好きな人に気持ちを伝えて玉砕した。
バラバラに砕け散り、地の底を這うような日々を送っていたとき、同期に話を聞いてもらった。
「どうしてこんな思いをしなきゃいけないのか分からない。」
私の好きな人は別の人のことが好きだった。
諦めるよりほかないこの状況に悲しくてたまらず、同期相手に気持ちを吐き出させてもらった。
そのとき
『嫌なことを忘れるくらい、熱中できることはなんなの?それをやっていれば、いっときでも気持ちが和らぐようなことはなに?』
と聞かれた。
そんなもの、その当時の私にはなかった。
仕事と家の往復の毎日で、それ以外の時間は仕事を待つだけの余白の時間だった。
余白の時間を買い物に行ったり、映画に行ったりして埋めていた。
何かに夢中になることも、好きなこともなかった。
「そんなものないよ。今は寝ても覚めても好きな人のことを考えてしまう。早く忘れたい。」
『趣味はなんなの?気分転換できるようなことは?』
趣味も気分転換できるような何かも持ち合わせていなかった。
強いて言うならジムに行くことだけど、それはどちらかと言えば余白を埋める行為だった。
『それなら、テニスの体験レッスンに行ってきなよ。同じことをぐるぐる考えてても仕方ないんだから。家に帰ってもどうせ予約しないだろうから、今ここで一緒にやるよ。』
と、同期が近所のレッスンを調べてくれた。
「なんでテニス…?中学の時にやったけど、なんのセンスもなかったよ。」
『そんなのなんでもいいんだよ、とにかく行って来い。』
正直、テニスになんて行きたくなかった。
というよりも失恋の痛手でそれどころの話ではなかった。食欲もなく、体重も減り、人生に躓いていた。
でも、同期は有無を言わせず、予約してしまった。だから行かなくてはならない。
面倒くさい気持ちでいっぱいになりながら、体験レッスンに向かうと、たくさんの人たちがテニスコートの中でラケットを振っていた。
私は初心者クラスで体験レッスンを受けることになり、ラケットの握り方、振り方などを教えてもらった。ペアになった人と向いあい、飛んでくるボールに意識を集中していた。
あらぬ方向にボールが飛んでも、空振りしても、ペアの人は温かい眼差しで見守ってくれた。
自分のテニスのセンスの無さを改めて思い知った1時間のだったが、目の前のことに必死だったせいか、失恋のことも好きだった人のこともいっとき忘れられた。
私にとって、それは信じられないことだった。
そして、行って来いと言ってくれた同期に心から感謝した。
仕事と家を往復する人生して、あとの時間は余白を埋めるだけだと思っていたのに、こうやって夢中になれる時間があることを初めて知った。
その後、失恋は、時間がどんどん解決してくれた。
日が経つにつれて、好きな人のことはいいと思い出へと変わっていった。
そして、同期の言葉が私を変えた。
嫌なことを忘れるくらい、熱中できることはなんなの?
それをやっていれば、いっときでも気持ちが和らぐようなことはなに?
これを全力で見つけようと思えた。
でも、やりたいことはなかなか見つからなかった。
ロボットのように仕事と家の往復しかしてこなかった私にとって、自分のやりたいことは何か、熱中できるものは何かはなかなか浮かんでこなかったのだ。
でも、少し時間はかかったものの、やってみたかったこと、興味があるものは、徐々に浮かんでくるようになった。
土日にそれらの予定を入れてみると、仕事待ちの土日が変わった。楽しい!と思いながら、過ごせるようになったのだ。
むしろ今では、土日を待ち望んでいて、平日が余白の時間に感じられるくらいに。
…
会話が続かなかったので、こんな話をしてみたところ、男性からは、アグレッシブなんですね、と一言返ってきた。
土日はどんなことをしてるんですか?と聞いてみると、ゴロゴロしたり、YouTube見たりしてる、とのこと。
私もかつてはそうだったな。
自分が何をしていると楽しいのか、何が好きなのか分からなかったから。
それを探して、好きなことがたくさん見つかった今だからこそ、人生で今が一番楽しいと心の底から言える。
手痛い失恋ではあったけれど、30代になって心から好きな人ができたこと、その人とはうまくいかなかったけど、そのおかげでとびきり楽しい人生が手に入ったことをひとえに幸せに思う。
そして、やっぱり同期がいてくれてよかった。
同期のおかげで人生が変わったと間違いなく言える。
これからもいろんな出会いがあるだろう。
でも、自分が見たことのない世界、知らない世界を知っている人とたくさん出会いたい。
そして、同期がしてくれたように、その人たちの人生を良い方に導くことができたら、こんなに嬉しいことはない。
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