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クリエイティヴ系の仕事は想定外が想定内〜これからやってみたい人に向けて〜
通算すると10年くらい、いわゆるクリエイティブ系の仕事に携わっているのだが、
ほとんどの場合、仕事は依頼を受注する形で行なっている。
業界的にはある程度のワークフローの基礎はあるが、
依頼される内容は毎回、無茶振りだったり、一般的なワークフローからは想定外のものだったりする事が多い。
ものづくりにおいては、実地での経験や個人的な練習なども含めて
成功はもとより、失敗した事も全てが引き出しとして蓄積される。
それが多ければ多いほど、様々な状況に対応できるようになる。
クリエイティブ系といっても様々な業種があるが、
現在では完全にフリーランスとして働く人も増えているし、また
何か別の仕事をしながら、趣味の延長としてそれで収入を得るような人も
多いと思う。
ただ趣味の延長でやってる人も、そちらの収入が増えてくれば本業にしたいと考えている人も少なくはないと思う。
ただその時に一つだけ、仕事としてやってる人と趣味の延長との人での大きな違いとして、覚悟があるかないかという部分が大事になってくると思う。
タイトルにもある通り、クリエイティブ系の仕事で、特に実際に形がないもの等を扱う場合には、どこまでいっても感覚的であったり、抽象的なものを扱うので、
想定外であったり、無茶振りであったりという発注がよくあるのだが、
その事自体を想定内として進める覚悟を持ってやっている人がほとんどだと思う。
特に趣味の延長でやっている場合には、自分が本当にやりたい事だけをやり、
それに共感を得る人だけを相手に仕事をすれば良いというメリットがあり、
またこのメリットは最大の利点であると思う。
ただ、もしそれを本業とした場合には、そうではない事が当たり前に起こりうる、という事に対しては覚悟を持たなければならない。
以前、他の仕事をしながら趣味の延長でやっている人から、仕事としてもやっていきたいという話を受けたので、ちょうど需供が一致するクライアントを紹介して、試しにどうなるか、場を設けた事がある。
結果から言うと、失敗に終わった。
何故ならば、本業としている自分からしたら当たり前に思えるような
発注内容や修正内容に対して、紹介したその人(以後A氏)は、
「クライアントの発注の内容に対して自分の作業内容は見合わない、
修正するのはいいが、修正を出す時の言い方が気にくわない、
相手がもっと自分が尊敬できるような立場の人間ならわかるが、
誰だか知らないような相手にそこまで誠意を尽くせない」
といったような理由を述べて、途中で仕事を放棄してしまった。
時間をかけてセッティングまでした自分に対しても
「変なやつを紹介するな、あんな事になるなら最初からそういうやつだと
言っておいてくれ」
とまで言われたし、
反対に紹介した方のクライアントに対しても自分は信頼を失いかけたし(こちらは別職だがフリーランスで本業を運営している人で、後から事情を話しなんとか納得してもらえた)
とんでもない結果となってしまった。
A氏には、こんなやつ(クライアント)なら最初からそう言っておいてくれ、とは言われたが、
自分が他の件でそのクライアントと仕事をする際に一度も不快に思うような相手ではなかったし、
今回の経過もグループラインで進捗は見させてもらっていたが、
仕事上、特に気になるような感じでもなかった。
ただ、その事をA氏に伝えると、
「君はそれが当たり前に思っているかもしれないが、俺には耐えられない。
こういう事は事前に言っておいてもらわないと。」
と言われた。
自分は業界の隅にいながら10年程経つが、進捗状況を見ながら
むしろ今回の案件はどちらかといえばイージーゲームな方だとすら感じていたので、
そのような意見をもらったのにはかなり驚いた。
事前に取り決めが必要といっても、クライアントが自分の性格に合わない事を
誰が事前に予測でき、もしできたとしてもそれを事前の取り決めとして、
”性格が合わなければ仕事を放棄していい”、と免責できる仕事がどこにあるのだろうか?
ただ、どう客観的に見ても仕事を放棄した事に変わりはないのだから、
そこには反省の気持ちは少しは持ち合わせているのだろうかと思ったが、
それを問う際に、先に、そぐわない場をセッティングしたという意味を込めてこちらから謝ってみたが、
A氏からは謝罪の言葉一つなく、小一時間、何故か逆に批判を受け続けた。
話しが終わらない中でだんだん飽きれてきて、
あまりに責任感のない人だなと思い、皮肉も込めて
「じゃあ今回は僕が全て悪かったって事で、それで納得してもらえるんですか?」
と聞いてみた。
自分に対しプライドや責任感がある人であれば、これは皮肉であり
憐れみを含めた攻撃的な内容である事はほとんどの人なら察し、反論するだろうと思ったが、
返ってきた答えは、
「あ、それで大丈夫ですか?そう思ってもらえるならそれでいいです」
と言った感じだった。
正直怒りを通り越して完全に呆れ果ててしまったのだが、
今回のケースでいえば、単純にあまりにもA氏がその仕事に向いてないだけだったと結論づける事もできるかもしれない。
ただ、ここまで聞くとA氏がただのトンデモないやつにしか見えないかもしれないが、
A氏は普段全くこのような感じではなく、普通にコミュニケーションもとれるし、一般的な仕事も普通にしているし、もちろん信用できると思っていたので、A氏の為に自分の時間を削ってまで、今回の仕事をセッティングしたという経緯がある。
それを考えた時に、
もしかしたら、おおよそこれは誰にでもあり得るケースなのかもしれないと思って、今回はこの文章を書いてみた。
また、自分の反省点としては、すみっことはいえ業界に10年もいる事から、
普通の人の感覚と何かがズレてしまっている可能性がある、という事も
思い直してみた。
その感覚の一つが、おそらく
ある程度の無茶振りや想定外に、当たり前に対応する、という発想なのかもしれない。
修正に対して灰皿が飛んでくるようなら、さすがに昭和かよ、のようなツッコミを入れつつ違和感を覚えるかもしれないが、どんなに無茶な内容だとしても
修正依頼がくればそれは一度検討するし、本当に無茶な事であればそれは、論理づけてその事を説明する。
言い方にイラつくような事もあるかもしれないが、
いちいちそこでイラついていると先に進まないので
ある程度はスルーできる能力も、少しずつ身につけてきたのかもしれない。
どんな仕事であれ、この辺は共通するような事かもしれないが、
特にクリテイティブ職となれば、何が正解なのかは案件の度に変わり、
扱う物自体形がなく、実際には永遠に人の気持ちなんてわからない中で
クライアントの発注に対して応えていかなければいけないので、
そういった事を、事前にある程度想定しておかなければならない。
最終的に何が言いたいのかといえば、
こういった職業に従事している人ならば
全員が当たり前にわかりきっている事だとは思うが、
もしこれから、そういった業界にいって仕事をしてみたい、
今は趣味の延長で自分の楽しい範囲だけでやっている人が、
それを本業にしてみたい、というような事を考えた場合には、
一度、想定外の事が当たり前に起きる事を想定しておけるかどうか、
そういったこと対して、仕事だと割り切って覚悟ができるかどうか、
という事を考えてみてほしい。
本当にやりたい人なら覚悟を持って楽しくやれるはずだし、
もしそうではないかも、と思った人は、趣味の延長でやる事で人生が豊かになるのであれば、それはむしろ最適解中の最適解だと言えると思う。