アンドロイド転生1042
2120年8月9日〜13日
イギリスにて
リョウとミアが新婚旅行に旅立ち、親戚のルイ達はイギリスに残された。あと4日間滞在する。案内役を買って出てたのはミアの弟のレオ。リョウの友人のハオユーとヴィクターだ。
直ぐに案内役と親しくなった。少数民族で世間に毒されないで育った彼らは純粋な部分があった。何でも素直に受け入れた。2年前に国民になったとは言え根底に流れるものが違うのだ。
イギリスの名所に案内されたり、若者が喜びそうな施設にも訪れた。少年達は目を輝かせて喜んだ。世界は違う。広い、凄い、素晴らしいと実感する。毎日が驚きの連続だった。
カナタはあるカフェで休んだ時のヴィクターの言葉が心に刺さった。道化師の彼は世界各国に住んだと言う。人種の坩堝のアメリカは大国だと実感したらしい。また暮らしたいと彼は笑った。
帰国前日にレオは自宅に案内した。沢山のバイオリンが並ぶ工房に3人は目を見張った。ミアの父親のアキオは職人なのだ。カナタは喜んだ。
「義母はストラリディバリウスを待ってます」
アキオは瞳を輝かせた。
「それはそれは素晴らしい。約500年前の弦楽器なんだ。最高の木材と高度な技術で作られている。ダイナミックで深みのある音色なんだよ」
カナタは目を丸くした。
「500年前?それが今でも使えるんですか?」
「そうなんだ。人は素晴らしいな。そんな物を作り上げられるんだから」
3人は感心して頷くとその時代に思いを馳せた。まだ電気は一般的ではない。インフラが整っていない状況でよく手作りをしたものだ。その制作意欲と飽くなき探究心に驚くばかりだ。
アキオは微笑んで少年達を見つめた。
「僕は学生時代にバイオリンに魅せられてね。製造しようと決めたんだ。君達の将来の夢はなんだい?良かったら聞かせてくれるかな」
シオンが口火を切った。
「僕は今年大学生になりました。外語大を選びました。夢はスーパーモデルです。見て分かるように銀髪に紫色の瞳で異質です」
アキオはふんふんと頷く。シオンは続けた。
「それを僕は個性だと思っています。個性を活かして僕にしか出来ない表現者になりたいんです。いつかフランスに行きたいです」
次にルイだ。
「僕は研究者になりたいです。キノコに興味があるんです。現存では4000種類あるんですがキノコには多くの効能があるんです」
「ほほう…」
「アガリクスやβグルカンなどは癌予防に有名です。ですが効能はきっともっとあります。それを突き詰めて人を健康にしたいんです」
カナタは目をキョロキョロとさせて笑った。
「え…えーと。俺は…まだ何もなくて…」
アキオも笑った。
「いいさ。時間はたっぷりあるんだから」
妻のグレースがやって来た。
「さあ!ボーイズいらっしゃい!イギリスを知るならこれよ。楽しんで!」
伝統のアフタヌーンティーに招かれた。
三段に重ねられた皿にはお菓子だけではなく少年が喜びそうなハンバーガーも置いてあった。3人と息子のレオもあっという間に完食する。その国の文化を知るには食が1番早いかもしれない。
3人は6日間の日程を充分に満喫して帰国した。短い期間だったが異国の文化を知り教養を身に付けた。知って学んで理解すること。あとは実践だ。成功と失敗を重ねて人は成長するのだ。