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アンドロイド転生1081

2120年10月12日 深夜
富士山8合目 ロッジの庭先にて

2年7ヶ月振りにリョウと通話をしているタケル。なんとイギリスまでエマに会いに行ったと言う。タケルは勢い込んだ。もしかしてリョウはエマを貶めた犯人を探し出したのか?

リョウは首を横に振った。
『違う。俺が…その悪意のクソ野郎だ(犯人)』
「…は?」
『俺がエリカに協力したからだ』

リョウは息を吸い込むと頭を下げた。
『すまん!エリカに言われて…俺がエマさんのホムペの改竄や動画をアップした!彼女の友達の贋作をエマさんがリークしたようにした!』

タケルは絶句する。リョウは叫んだ。
『ごめん!本当に悪かった!エリカに脅されたんだ。だが脅迫されても従うべきではなかった!俺は弱かった。ダメな男だった!』

リョウは顔を歪めて言葉を絞り出す。
『俺は…エマさんに電話で謝罪したんだ。そしたら本気ならイギリスに来いと言われた…』
タケルは微動だに出来ない。

『それで行った。エマさんは…泣いた。怒った。当然だ。そして時間が経って…許してくれたんだ』
タケルは驚いていた。犯人がリョウだったことを。そしてエマが許したことを。

『そのまま…俺はイギリスで暮らして…女性と出会って結婚した。ごめん…結婚したなんて』
そんな事はどうでもいい。タケルの疑問はリョウが何故エマを苦しめる事になったかだ。

「なんで…脅されたんだ…」
リョウの顔が益々引き締まった。
『俺は…サキが好きだった。初恋だったんだ。でもオタクの俺なんて…絶対ダメだと諦めた』

サキ。リョウの4つ歳下で明るくて溌剌とした女性だ。ずっと兄妹のように育ったのにいつしか恋心を覚えた。だがサキはアンドロイドのケイを愛した。リョウなど眼中になかった。

リョウは思い余って罪な事をした。得意の技術を使って盗撮機を作りサキの入浴シーンを盗み撮りしたのだ。一度だけ観て罪の重さに恐れて封印した。だがそれがエリカに知られたのだ。

そして脅迫された。従うしかなかった。ホームはたった60人の小さなコミュニティだ。人の道から外れれば村から追われてしまうかもしれない。リョウは恐れた。エリカも。孤独も。

リョウは深々と溜息をついた。
『最初にエリカに脅されたのはサツキの件だ。アオイが友達だから助けたいって言ったろ?』
「ああ…」

アオイのナニー時代の仲間だ。転生したばかりの孤独なアオイの力になってくれたそうだ。サツキも派遣期間が終了しラボに戻される事になった。その後は廃棄処分という可能性もあった。

アオイはサツキを救う計画を立てた。スムーズに行く筈だったのに何故か職員はサツキの逃亡計画を知っていた。密告されたのだ。
『エリカが…ラボにチクったんだよ』

「え?」
『で…俺が犯人探しをしてエリカだって気付いた。問い詰めたら認めたけど…脅迫されたんだ』
「…盗撮をバラすってか」

リョウは苦虫を噛み潰したような顔をする。
『うん…。そして…その後のエリカは益々暴挙を繰り返したんだ…。ルイとモネの仲を応援する振りをして最後は潰すつもりだった。それで…』

タケルは漸く理解した。
「それで…最後はエマだったんだな。エリカはドローンで俺を追った。そして俺達が付き合っている事を知って…そしてエマを追い詰めた…」

『うん…。その協力者が…俺だ』
「そうか」
『タケル。本当に申し訳ない…元は盗撮…』
タケルはリョウをジッと見つめて苦笑した。


※リョウがエリカに脅迫された初めてのシーンです

※エマが窮地に陥るシーンの抜粋です


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