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アンドロイド転生1097

[14部 始]

6年後 

2126年3月1日
都内某所 モネの所属事務所にて

「モネ。おめでとう。映画出演が決まったの。しかもダブル主演。時代設定は西暦2025年。山岳救助隊の恋人役。撮影場所は富士山よ」
女社長はモネを見つめて微笑んだ。

「クランクインは6月15日。富士山8合目に行くの。今時はCGで何とでもなるけど、あの監督は現場に拘る人だからね。頑張ってね。あ、コジマ。登山の訓練スケジュールを頼むわね」

女性型アンドロイドでモネのマネージャーのコジマは頷いた。次に社長はアオイを見た。
「しっかりモネをケアをしてね」
アオイも頷く。モネの付き人なのだ。

アオイは2年前にシオンのマネージャーを退任した。シオンは事務所のボスの根回しと本人の努力が実り、是非にとパリから請われて渡仏した。念願のスーパーモデルになったのだ。

彼は大学を卒業すると旅立った。現在はパリで暮らしモデルの第一人者として引っ張りだこだ。日本にいるカノミドウトウマとは変わらず愛を育んでいる。彼らの間に距離などない。

6年間は瞬く間に過ぎた。モネも2年前に大学を卒業して本格的に女優の道へ進んだ。彼女の地道な努力と鍛錬と習得で技量を磨いたのだ。モネも夢を叶えたのである。

勿論、順風満帆ではない。波風も山谷もあるものだ。しかしモネは乗り越えた。美と健康とそして才能があったのだ。それが花開いたと言えよう。モネは9日後に24歳になる。

・・・

都内 タカミザワモネの自宅にて

誕生日の朝。アオイは憧れの眼差しで長身のモネを見上げると微笑んだ。
「お誕生日も映画出演もおめでとう御座います。私は本当に嬉しいです」

「カー(愛称)有難う。いつもいつも有難う」
「私は人間だった時、女優になるのが夢でした。それは叶わない夢で終わったけれどモネ様が実現して下さったのです」

アオイは瞳を潤ませている。モネは思う。とうとう私は人間だったカーと同じ歳になったのだ。いざ24歳になってみて、この歳で死んでしまったら無念極まりないと思う。

モネの瞳にも涙が滲んだ。
「カーに育てられて…また戻って来てくれて…そして今は仕事をサポートしてくれる…。私は本当にラッキーだよ。これからも一緒にいてね」

アオイはガッツポーズをした。
「いますよ!さぁて!この先は訓練もありますよ!みっちりとあちこちで登山です。富士山8合目で撮影出来る体力を養うんです」

モネも同じ格好をして任せてと笑う。彼女は華奢だが実は体力があるのだ。3歳から習っていたバレエで筋力が発達していた。身体全体にバネがあるかのように強靭でかつ柔軟だった。

クランクインまで約3ヶ月。それまで登山の訓練と稽古がある。だが人気女優となったモネはそれ以外にも様々なオファーがあるのだ。だがそれらをクリア出来る体力と能力があった。

アオイは微笑んだ。
「ユリウス様はお喜びだったでしょう?」
「うん。今日はディナーの約束」
「バースデーのお祝いですね」

今日ばかりは仕事をオフにして家で過ごすことにしている。とは言えゆっくりなどしない。台詞の練習に励むつもりだ。勿論、家でバースデーパーティも開催しない。

20歳まではモネの誕生日は人を招いて華やかにパーティを開いたものだが大人になった今は恋人と2人で祝いたい。そう言うものだ。そう。モネとユリウスは「恋人」なのだ。


※少女のアオイが女優になりたいと語ったシーンです

※モネがバレエを始める3歳の頃のシーンです


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