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アンドロイド転生860
2118年8月4日
東京都目黒区:サキのマンション
「ツグミさん。これ…プレゼント。お腹の赤ちゃんに使って欲しいな…って思って…」
小さな袋を開けると中にはこれまた小さなブルーのピアス。サキが作ったのだ。
7月初めにサキはケイと共に千葉の海に訪れた。砂浜にはカラフルな多くの何かが埋もれている。サキは拾ってマジマジと見つめた。
「これは…なに?」
ケイは微笑む。
「シーグラスだね。ガラスの破片だよ。波に揉まれて角が取れた小片になるんだ」
「とっても綺麗…」
「これを使ってアクセサリーに加工する人もいるらしいよ。イヤリングとかネックレスとか」
「へぇ!何か楽しそう〜!私もやってみたい!」
2人は沢山のシーグラスを持ち帰った。
その後のサキはwebを検索してシーグラスをアクセサリーに加工する方法を学んだ。手先が器用な彼女は瞬く間に上達した。美的センスも持ち合わせておりどれも美しかった。
ある日サキは閃いた。
「そうだ!赤ちゃんのピアスを作ろう!」
小さなブルーのシーグラスに小さく平家の紋章を掘った。心を込めて作り上げた。
サキはツグミの生まれる子供に贈りたかった。そして今日渡せたのだ。ツグミはピアスを指先で持つと繁々と眺めた。瞳が寄り目になる。
「なんか掘ってある…」
「うちの紋章なの。簡易的な図柄だけど」
ツグミには平家の落人の子孫だと伝えてある。ツグミは瞳を輝かせた。
「凄い!素敵!どうも有難う〜!」
サキは恥ずかしそうな顔をした。
「ジュエリーデザイナーのツグミさんにはお子様みたいなものだけど…」
「ううん。とっても気に入った!絶対使うね!」
それから数日後。ツグミから連絡が来た。
「サキちゃん!マタニティクラスに行ったらね?皆んなが欲しいって言うの。ベビーピアス!ね?作って。お願い。ペイを払うって」
サキは目を丸くする。心底驚いた。
「ほ、ホントに…?ぺ、ペイなんていらないよ」
「ダメよ。労力には見合った報酬が必要なの。それがお互いの為でもあるのよ」
その後。ツグミのマタニティクラスからベビークラスにも話が伝わった。更に口コミでサキの元にどんどんと依頼がやってくる。
「ツグミさん。どうしたらいいの?」
ツグミの瞳が力を帯びた。
「こういう時は流れに乗った方がいい。サキちゃん、ホームページを立ち上げよう」
ツグミの助言の元、品の良いページが完成した。
「サキちゃん。あのね?人は美しい物に惹かれるものなの。それに価値を見出すの。それを使う側になるのか…提供する側に回るか…なのよ」
ジュエリーデザイナーのツグミらしい言葉だ。
サキは尤もだと頷いた。恋人でアンドロイドのケイが優しく微笑む。そう。自分は彼に会った瞬間に恋に落ちた。でも…とサキは首を振る。ケイは容姿だけじゃない。心も美しいと。
※サキがタウンで暮らし始めた頃のシーンです