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アンドロイド転生1052

2120年8月21日
茨城県山中にて

「大丈夫?」
ミアは樹々の間から振り返った。リョウはヨロヨロとなり息を切らして険しい顔をしている。
「休む…?」

彼はその言葉に甘える事にして倒木に座り込んだ。顔を仰いで大きく息を吐く。その隣にミアが座りリュックから水のボトルを取り出した。
「はい。お水」

有難うと言ってリョウはゴクゴクと飲んだ。
「いやぁ…ミアは元気だなぁ…」
「平気。楽しいよ」
「マジか」

ミアはクスクスと笑う。
「山で暮らした人だとは思えないね」
リョウは苦笑する。
「俺はリペア室に引き篭もりだったからな」

そんな彼でもプロポーズの時はダンスの猛特訓に励んだものだが終わったらやめてしまった。
「イギリスに帰ったらジョギング始めようね」
「え…それはやめてくれ…」

ミアは眉間に皺を寄せ難しい顔をする。
「ヤメテクレって日本語が分からない」
勿論理解している。今度から前向きな提案に反対したらそう言うのだとミアは決めた。

ミアは空を見上げた。
「日本の空港に降りたら暑くてビックリだったけど、こっちは涼しいね。気持ちいい」
「緑だらけだからな」

新婚旅行でフランスを楽しみイギリスに直帰する筈だったが急遽日本に立ち寄る事にしたのだ。ミアの仕事が突然手が空いたのとリョウの仕事はリングがあればどこでも可能だからだ。

ミアは頭上に浮かぶドローンを見つめた。ホログラムのイヴが投影されている。普段は帰村する家族を見守ったりはしないのだが、リョウでは不安だとキリが頼んだ。尤もである。

ミアはイヴに向かって微笑んだ。
「あとどれ位?」
『15分程です。さぁ。リョウ。立って下さい。皆さんが待ちかねていますよ』

リョウは再度水を飲んで立ち上がった。
「よし。ミア。大丈夫か?」
ミアは吹き出した。私の心配は不要だと思う。
「うん。大丈夫」

・・・

里の出入り口で村民の歓迎を受けたミア。ずっと会いたくて堪らなかったリョウの両親。そしてキリとタカオ。女性達が抱き締めてくれて嬉しくなる。日本人はシャイだと聞いていたから。

夕食兼歓迎会となった。38人の家族達は明るくて朗らかだった。自分にも半分は同じアジアの血が流れているのだと思うと親近感が湧く。
「私の父の故郷はナガノ県だそうです」

皆が知ってると言って喜んだ。
「そうなんですか。アズミノ…?らしいです」
「水が綺麗な所なんだよ」
「美術館が沢山あるらしいよ」

そんな風にルーツが知れて嬉しくなる。
「ホームは…何が有名なんですか?」
全員が大笑いした。
「ヒッソリと1000年!有名な物はないよ!」

ミアはハッとなって顔を赤くした。そうだ。そう言っていたではないか。平家の落人が先祖であり、非接触民族として街の人間とは交流を避けていて日本国民ではないのだから。

ミアは村民を見渡した。でも…団結力がありそう。そして愛も。でなかったら1000年も続くわけがない。内部紛争で破綻している筈。きっと真心と労わりがあるんだなと思う。

すると2人の前にリョウの両親がやって来て母親は優しく微笑んだ。
「少しお話ししたいの。良いかしら?」
ミアとリョウは立ち上がって両親に従った。

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