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アンドロイド転生1149

2126年7月31日 
シオンの部屋にて

ケイの立体画像が浮いている。彼の背後にはサキの両親だ。神妙な顔をしている。シオンはどっちの報告なのだと緊張した。goodなのかbadなのか。その先の言葉を息を止めて待った。

ケイが微笑んだ。
『熱が…微熱まで下がった。そして血液マーカーの数値が0から100になった。500になればひとまずは安心らしい。上がるよ。絶対だ』

シオンは大きく息を吐いた。腰が崩れそうになった。こんなに心臓に悪い事はない。
「ああ…良かった…本当に…良かった」
『シオン。有難う。感謝している』

伯父のヒロシが泣き笑いの顔をする。
『シオンよぉ…。お前のお陰だ。本当に本当に有難うな。足を向けて眠れねえよ。俺は』
「姉ちゃんが頑張ったんだよ」

伯母のアカネも涙を溢した。
『今日笑ったの…あの子…。ずっとずっと苦しかったの…。怖かったと思う。だけど救われた。感謝してます。有難う。本当に有難う』

ケイが笑う。
『サキからの伝言だ。“有難う御座います“と』
そして娘を抱き上げた。ノアも満面の笑みだ。
『お兄ちゃん!有難う!』

シオンは照れ臭くなって来た。
「もういいよ。お礼は。僕は姉ちゃんを助けたかっただけだ。それが叶って嬉しいよ」
全員が笑顔になって通話を切った。

シオンの顔が自然に顔が綻ぶ。この喜びを分かち合いたいのはトウマとアンドロイドのエルだ。だがエルは1週間前からフランスだ。彼の住まいの整理をしている最中なのだ。

サキの状態によっては再び移植する可能性がある。だからシオンは日本を離れるわけにいかない。だが事務所と雇用契約が終わった今、即刻フランスの住まいは片付けたい。エルに全てを託したのだ。

※ドナーの安全性を確保するために回数の制限を設けており、2年以内で2回です

そして一昨日、エルから連絡があった。パリのデザイナーからオファーがあったと嬉しそうだった。だが彼は断った。17歳から始めたモデル業。7年経験してもう満足したのだ。

エルはマネージャーになって約2年半。共に渡仏し、彼の更なる成功を望んでいたのだがとうとう諦めたようだ。キッチリと片付けて帰国しますと言って笑ったのだ。

早速トウマにコールする。
「サキは回復してきたって」
『おめでとう。やったな』
「有難う」

まずは一区切りついた。サキの件がクリアすれば次は自分達の番だ。
「トウマさん。僕達も進もう」
『うん。そうしよう』

「でも色んな事が落ち着いてからがいい。その方が気が楽なんだ」
『そうだな。サキさんはまだ予断を許さない。感染症を起こしやすい状態なんだ』

薬剤師のトウマは白血病について熟知してる。シオンは頷く。サキのことは本当に心配だ。1日でも早い回復を願うばかりだ。だがきっと大丈夫。サキの未来は明るい筈だ。

そして自分達も先に進まなくてはならない。シオンの人生にトウマと歩む以外の選択肢はない。その思いは揺るぎない。だから互いの両親に告白するつもりなのだ。

同性婚は法律で認められている。だが世代が違う彼らは納得するだろうか。恋愛はともかく婚姻となると眉を顰めるかもしれない。世間体云々を言い出すかもしれない。

シラトリ家にしろカノミドウ家(トウマの生家)にしろ名士なのである。だが自分達は本気なのだ。本気の子供には親の心が動くと信じてる。だから失望させないと誓うつもりだ。

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