アンドロイド転生1053
2120年8月20日
茨城県白水村 ホームにて
新婚旅行中のミアとリョウ。日本に立ち寄りホームにやって来た。村民はミアを歓迎し夜はパーティとなった。楽しむ2人の前にリョウの両親がやって来て話をしたいと誘われた。
4人は喧騒から外れて静かなリビングにやって来た。ミアは丁寧に頭を下げた。
「改めましてミアと申します。父は日本人。母はイギリス人。弟がおります」
リョウの母親が微笑んだ。
「息子がお世話になってます。聞きましたよ。2人の出会いはミアさんがリョウを助けて下さってからだとか。有難う御座いました」
そう。2年前。イギリスに到着したリョウは観光客相手の詐欺に遭い、金銭を騙し取られるところだった。それも2回もだ。たまたまミアが居合わせたから難を逃れたのだ。
ミアは苦笑した。
「日本人がターゲットになりやすいんです。父なんて30年もイギリスにいるのに騙されそうになりました。家族で能天気だと言って笑います」
両親も笑った。リョウの父親が苦笑する。
「結婚したんだから今更とやかく言いたくないが、本当に息子で良かったのかい?」
「勿論です!大好きです!」
堂々と言い張るミアに両親は目を丸くする。すると父親は照れ臭そうに笑った。
「そう言ってくれると有り難い。何せ…リョウはコンピュータ以外に特技もなくて…」
日本人の美徳らしく息子を卑下した。建前上のつもりだったが父親は頭を捻った。実際にリョウに良いところなんてあったか?と。息子の良い面をじっくりと考えた事がなかったのだ。
するとミアは立板に水の如く述べ始めた。
「リョウさんは必ず約束を守る信念があります。それに人に対してランクをつけません。平等ですし威張ったり自慢したりしないです」
両親はまた目を丸くする。
「そ…そうですか」
「賢いですし、優しいです。私を尊重してくれて人を大事にします。素晴らしい人です」
父親は感激したように何度も頷いた。
「…有難う…リョウを宜しく頼みます」
母親は感極まった顔をする。
「あ、有難うね。あ…あのね…これをね…」
彼女は絹のハンカチを膝に乗せており何かを包んでいた。ミアに向かって差し出すと開いて見せる。小箱だった。蓋を開けると中には小さな櫛が入っている。色味と風合いが年月を感じさせた。
「受け取ってくれるかしら…」
「えっ!」
「平家の人達が戦さで追われた時に持ち出したものなの。つまり…1000年前の物…」
ミアは目を見開いて胸に手を当てると何度も首を横に振った。そんな仕草は外国人らしい。
「oh!god…!…it's very worth it…」
驚くあまりにその後も英語になった。
リョウが割って入った。
「そんな大切な物を頂けませんだってさ」
「是非受け取って欲しいの。ね?お願い」
「お…お母様…そ…そんな…」
父親が頷いた。
「うん。是非受け取ってくれ。君はもう平家の一員なんだ。な?頼む」
「そうだよ。ミア。君は家族だ」
ミアは恐る恐る櫛を受け取ると繁々と見つめた。花があしらわれており美しく精巧だ。歯に欠けた部分もなく1000年も前に作られた物とはとても思えない。大事に受け継がれて来た証なのだ。
ミアは両親を真っ直ぐに見つめた。
「お父様。お母様。有難う御座います。私…平家の名に恥じないよう立派な家族になります」
瞳が自信に溢れた。一員になった瞬間だった。
※ミアがリョウを助けたシーンです