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アンドロイド転生277
2117年12月31日
東京都:カノミドウシュウの邸宅
もなく24時になる。今年もあと僅かだ。昨晩と同じくアオイはシュウの邸宅の前にいた。今から忍び込み、書斎に行ってダイヤモンド20点を返すのだ。シュウに逢いたがそれは許されない。
アオイはダイヤモンドを強奪した事をシュウ達に告げ、口外せぬよう約束させたが、どうやらそれでは済まないらしい。アオイの存在をトウマに知られた以上、ホームに危険が及ぶかもしれないのだ。
タケルから聞いたところによると、書斎にはダイヤモンド以外に数多くの銃のコレクションがあったそうだ。どうもシュウの息子か孫はきな臭い事にも手を出しているようだ。
タケルの掛け声にアオイは頷くと2人はしなやかに塀を乗り越えた。庭を横切り、邸宅の窓際まで来た。昨晩、侵入した時にカットしたガラスは修復されていた。またガラスを切って中に忍び込む。
執事を探し彼を羽交締めにするとサーバールームの日替わりの認証コードを手に入れた。
「あなた達こんな事は許されませんよ!」
「許すも何も全て無かった事になる。感謝しろよ」
タケルが笑い、また執事を強制終了した。サーバールームに行き、アオイがイヴと接続すると屋敷内の扉と書斎の全てをイヴが掌握した。昨日と同じ。全くスムーズである。
「書斎に行ってくる」
「はい」
タケルは走って行った。サーバールームに残ったアオイの背に向けて誰かが叫んだ。
振り返るとトウマだった。トウマはアオイを認めると呆れた声を出した。
「またお前か!何しに来た?」
「今晩は」
アオイは微笑んだ。何となくトウマには会える気がしていた。だがその反面ガッカリする。深夜に忍び込んだのに家人にすぐバレるだなんて泥棒稼業失格だ。私には向いていないのかもしれない。
「ダイヤを返しに来たの」
「へえ?悪い事をしたと思ってるんだ?」
「違う。悪い事をしたのはあなたのお祖父様かお父様。今後はよく動向を見ていた方がいい」
アオイは溜息をついた。
「優良な大企業なのに何で悪事を働いたのかな。ダイヤだけじゃない。銃も沢山あるんだよ」
「え?銃?ピストル?」
「そう。ビックリでしょ?」
トウマは黙り込んだ。なんと応えて良いのか分からないのだろう。アオイは上目遣いになった。
「シュウは…?」
「寝てるんじゃない?会えねえぞ」
「分かってる…」
「お前さ?ホントに生まれ変わったの?」
「うん。信じてくれる…?」
またトウマは黙り込んだ。タケルが戻って来た。